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のつくづく奴隷な冒険者  作者: 浅城 明音
奴隷少年編

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1/1

1話 逃げる奴隷




「あな 本当 い の?

平 を願っ あ が母 な 、そし そ 影も生ま てし の ?」

「ご ん さ 、そ でも  を諦 られ い 、なに り  のた に たいの·····」

「·····わか ま た。

この の全 を知 、体験 、傍 する はと もじゃ いが、 精 が狂い、自我 消 てしま り人 が解 てしま もし ない…」

「 の上よ

な が でも を取り戻す」




「アルとシウスを頼 ぞ…モル 」

「承 しま た·····」

「嫌だ!父 ん!!行 な !!!」

「ごめ な·····」


ア ガー はそ 言っ 、気絶 るフリー の横 涙を流 。

シー はた 微笑 、そ 笑み は様々 感 を押し潰 、父 して、責任 果 そ とする。

そ 刹那、 ドの背 に何者 がとて 素早 度で迫 。

シ は反 に剣 く。

鋼と がぶつ 合い、 音が周 を包 前に、また鋼

鋼がぶつかる。

そ は音 りも速か 。

シー は目に 止 らない者 が、その の姿 捉え にもその が何者 理解 る。


「 天か!」


そ 言った瞬間、忍 笑 のよ で、残虐さ 垣間見 る笑い がシー の耳に流 込む。

飛天 目に らぬ速 で俊敏に木か 木へと渡 。

移 す 度に木 枝が折 、折れ 枝が 面に着く前に数十本 折 た枝 されて行 。

不 に笑 飛 の高 移 に ードが取っ 打開 は待ちだっ 。

ただ、剣を片 で持ち、手 腰の横に え、目を閉 。

飛 はそ 異様 姿に動 せず、 回、何百回の移 を経 、シー の後頭 に拳を向 る。

瞬間、飛 の騎士の腕 飛ん 。

シード 横 に飛天の姿 捉え 。

そこ 振るわ シー の剣は飛天 首に確かに向いていた。

だが、 の首を斬る前 、シー 構える。

その訳 次の瞬 には理解した。

瞬間、言い表 な ほど 速さでシー の背 に寒 が走 。

構え 由は の勘と本能 た。

周り 凍った世界 うに冷た る。

刹那、鼓膜 破る う 轟音が剣 ら鳴る。

飛 とは比べ物 なら い重み。音の正体 また鋼と鋼 ぶつかっ だった。

重 でシ の腕が震える。

目の前 は実 兄にして、騎士 統括 る者、不滅の騎士 イヴァルク・ハーツ 居 。

の間にかにそ 居た。

な 、鎧の奥のイヴァ と目 気がした。

だが、それを気に 余裕も無く、イ ルクの剣とシ の が千 上も交 する。

誰 そこ 割り込め ほどの速 二人 技、空 を巻き込 、周り 木々が倒 、地面 裂 。

そ 、 ー から体か 何ヶ も血 出て る。

シ は力 込め、 ァルクの剣 弾く。

シー は後 に下が 、 離 取る。

そし 少 奥に 貪欲の騎士 居る事に気付く。

シ ドは状 が最悪 悟る 、逃げはし い。

ここ 逃げ 子 達に 魔の手 伸 るかも ない。

剣 構え、溌剌 イ ルクに言う。



「 て·····() か兄 ん!」

「·····」

(最低 も飛 貪欲 起 にさ…!)


瞬間、シード 流 の構 を取るが、貪欲が れを許さ 、 能に引っ る。

イヴァ は トを見せ るよ に腕を横 振 、剣 構え、手首 反転 せ、素早く剣を振る。


「異閃」

「流剣!」


シー は ァル の 閃 弾 たが、剣 折 。

刃が た剣 必 に抵 よ と たが、感 取るこ も出来 速 の 天が死 からシ の鳩尾 手 を突き 。

シ は吐 し、飛天は顎 拳 突き上 よ が 、シードが飛 の背 を き刺す。

ドは声を上げ、飛天だ 道連 にするべく、剣を背中の奥深 と刺す。

瞬間、イヴ がシー 中を斜 字に斬る。

飛天がシ の 掴み、締 上げる。

シ は最 足掻 として の顎を蹴 げる。

飛 は手を し、後ろ 仰け る。

中か 血が勢 て、力尽き うに膝を く。


「兄…さ……」

「·····」


イヴァ は剣を振り上 。

その瞬間、シー は驚愕す 。

ルクの剣を持っ る手が震え いたのだ。



「ク !、 足  っ か」

「 シ ス 様 坊 ?」

「ア ー に い うに われ う。 き ぞ」

「こ ん坊はど す ?」

「 いて く

で る 痕 し ない」


二 が を と、遠 う ような所で 鉄 のよ な物が ずい る。

れを 知 たフ ーシ はモ に何 え 。

人 臨 勢 る。

ウスはそれ 視 に った瞬 、赤 がなんな が 解 。


「こ ガ !腐 の子か!!」

「ど 致 ?」

「 て行 の ら があ 骨、戒 鎖は収 す 。」

「承 ま た。」



「母さ を殺 くせ 」




「はじ 、驚 して まっ ね

私 シー ・ レー 。

不 騎 、こ った方 やすいかな?

こんなこと 言う は れ 君にこ か る火の粉 私 責任があ んだ

かも ない 、君 の技 授 う。

そ 私なり 任の取 」



「 さ ! 日 晩 は で か?」

「私は 肉料 いな〜」


「ア 、買い ク フ様とお願 ま ?

は、明 用 ヴァ ア 達 為に 込み 晩を ら くので」




「ごめん ?も ダ た 。でも、本 にあ う

私を にな てく て

·····大好き」




「なる 、瓶 液 化 体 入れ 、 に衝 が加 る から再 か…おも ろい!」

「アレ がこ まで舞 を整 く たんだ…

こ でお を殺 、アル !」

「うる な!兄 んっ べよ!!シウ !!!」


そうアル ー が言 放っ 間 、フリー が走り出し、 ードに拳を向ける。

アル ドは シウス 腹 手 で突き たと思 た時、その に液体 して フリ が体を り頬を ん殴る。




「まぁ、 能 放したアレ と禁 疑 第三 階 ク フで不 の騎 と戦っ 間に、俺た で混子共 を殺せ 可 は十分 あるか… 」

「でも、 れ あま に無茶 ゃ いです ?」

「い 、 か たら れ 番 率が 高 も」




「じゃあねアレス」




「そ 悪意は!人 向 る物 な だろ!!」




「·····!」


ガス は呆気 取 る。

何 考 れな なり、気付 頃に 彼 の手を掴 、片膝を いてい 。


「初め 会っ の この な う は良く いと承 の上で、私 結 を前提 し お付き いをし く せんか?」


言 終わ 後に、 くの甲にキ をした。

が、彼女 見 の みの微笑だった。




「 の 、ブ ド・ノ シュが!本 暴進だ!!」


そ 言 てブラ は高笑 を る。



「よく頑張っ な、ア 。

初 お前 会っ 時、あん 弱か お前が随分 前に越 れて まっ な。

であと しだ、道 俺が 拓 !

リズによろしくな言っておいてくれ。」




「 の立ち姿…懐か わ」




「大丈夫?泣いてるよ?」




──────




ある地下牢、売られる前の奴隷を数人、収容している部屋でただ一人、涙を流している者がいた。

その者はなぜ自分が泣いているのかもわからない。

だが毎回、変な夢?なのかは分からないが、変なものを()()

それを()()度に泣いている。泣いてしまう。

だがそれは目をつぶっていたが寝て夢を()()いたのか、起きていて奥底の記憶を掬い取っていたのかよくわからない。

自分自身でもその夢なのか記憶なのか、それともナニ?かがその者に干渉してきているのかもしれない。

その夢?に出てくる人物が誰なのか、自分の名前もなんなのかすらもわからない。

ただ自分が何かをナニかで壊したという感覚だけが手に、いや身体の奥底にある。

あの夢?は毎回、その者のことをアレスと呼ぶ。

アレスと言う名前がその者の本名なのかも良く分からない。

そしてここにも一人、その者をアレスと呼ぶ奴がいる。

一度、適当にそう名乗っただけで何度も何度も呼んでくる奴がいる。

そしてアレスは考えていると奴が希望に満ちた顔でその者に迫ってくる。


「ねぇねぇ!アレ…ス?泣いてるよ?大丈夫?」

「なんだよ、ラノーク…大丈夫だよ」

「ならいいけどさ…俺が言おうとしたのはそろそろ貿易の時期、俺たちの奴隷の出荷の時期なんだよ!で、俺は二ヶ月前に13歳になったし、アレスはどんくらいだっけ?」

「うーん、はっきりはわからんが多分10歳ぐらい?

てゆうか14歳以下の奴隷って売られないんじゃなかったけ?」

「そうなんだよぉ、ここで出荷されないと俺は…考えるだけでも嫌だな……」

「…ならさ、一緒に売られようよ。

って無理か…決めるの俺たちじゃないし…何言ってんだ俺……」

「……ありがとうね、アレス。そんなに俺を想ってくれてだーい好き!」

「ちょ、離れろよ!」

「いーやだ!

アレスは外の世界は楽しみ?」

「…楽しみなんかじゃないよ。俺はここを嫌に感じたり、苦痛を感じたりする事はあるけど、ここの生活が俺のすべての基準だから…」

「そっか…アレスは物心つく前から居るんだもんね。アレスはここから出ても元気に、幸せに生きて行ける?奴隷として生きるとしても」

「うーん、どうだろう。

想像もつかないし、結局、主人次第なんじゃない?」

「だよな〜

アレスはどんな主人にも懐きそうだよね。

犬みたいだし」

「殺すぞ」

「ごめんて……買われたらこうやってアレスと過ごす事も出来なくなるのか……」


ラノークは少し悲しい表情を浮かべる。

それにアレスは居た堪れなくなる。

少し恥ずかしくなりながら悲しい表情もアレスは言う。


「なんでそんな悲しい顔すんだよ。そんなに俺と離れるのが嫌かよ」

「そりゃあ嫌だよ?アレスは今の俺の唯一の親友なんだし!…だから離れたくないよ…」

「……俺も出来る事なら離れたくないよ…

でも、お前がいつも言っていた外の世界に出られるかもしれないんだぞ?ならいいじゃん」

「それは嬉しいけどさ…でもアレスと一緒じゃないなら嫌だよ!

でも、俺のことをそんな風に想っててくれたんだ」

「そんなにニヤけるなよ。恥ずかしいだろ」

「アレスは俺と離れたら寂しい?」

「…ちょっとだけ」

「俺はすごく寂しいよ……だって!この綺麗で艶かしい白髪を触れなくなるんだからさ!ほんと女っぽいよね」



そう言ってアレスの長髪をスリスリと手で激く触ったり、頭を擦り付けてくる。

アレスの容姿は白髪の長髪に、藍色の瞳、そして筋肉の無い華奢な身体付き、とても男とは思えない容姿であった。

アレスは恥ずかしいのにも関わらず、デレたのに思いがけない回答が帰ってきてほんの少しだけ機嫌を悪くしながらラノークの手を少し嫌がりながら、それを突き放そうとはせず、甘んじで受け入れる。

やがて、ラノークの手が止まる。


「……今日は随分と素直じゃん」

「だってラノークの言う通りこれが最後になるかもしんないだろ」

「照れちゃって、そんなアレスも可愛い可愛い」

「…頭撫でんなよ」

「俺は…アレスだけでも幸せになってくれたらいいから」


アレスは頭を撫でる手に呆れも含まれているが、少し喜びを覚える。

そんな時、牢の外から数人の小さな足音が聞こえる。

ラノークはアレスから手を離し、牢の外に目線を向ける。

軈て、足音が近ずいてきて、それは見慣れた見張りの男と、見慣れない屈強な男達だった。

見張りの男はポケットから鍵を出し、牢の鍵を開ける。


「これから出荷する奴の番号を呼ぶ!

呼ばれた者は牢を出て、前に低い番号順にに並べ!

えーと、奴隷番号!688、714(アレス)、756、761、768、809、899、1006、1028、1069、1378、1456!以上、さっさと並べ!」


アレスは番号が呼ばれた事に少し喜ぶが、ラノークの番号が呼ばれなかった。

アレスは喜び以上にラノークが呼ばれない、そして年は13歳、この世界では14歳以上は変われないし、そもそも出品すらされない。

あっても特質した才能がある者や、成人し、筋肉のある十分に肉体労働の出来る大人だけだ。

そしてラノークにはどれもが当てはまらない。それの示す意味は処分だ。

アレスはラノークの方を見て小声で名前を呼ぶ。


「………ラノーク」


そんな不安そうなアレスにラノークはぎこちないが微笑む。

その微笑みには様々な感情が入り交じっていた。

悲しさ、寂しさ、妬ましさ、そしてアレスが外の世界に出ると言う安心と不安。

そして、それ以上の喜び。

アレスは、か細い声で「嫌だ……」と呟く。

それは誰の耳にも届いていなかった。

アレスは他の奴隷と一緒に牢出て、列に並ぶ。


「今から地上に出て、馬車へと乗る!着いてこい!」


列が進み出し、アレスは後ろを向き、牢を見る。

アレスは色々な感情を言葉にせず、再び前を向き進む。

見張りが牢のドアが閉まりそうになった時、

突然、牢の閉まりかけの扉から身を乗り出し、後ろからとても大きな声が聞こえた。

ラノークの声だった。


「アレス!俺も、いつか外に出るから!絶対に外に出るから!いつか絶対に会おう!また!」


アレスは瞳に涙が溜まるのを必死に我慢し、ラノークにも誰にも聞こえない声で顔を縦に頷きながら呟く。


「…うん!」


その短い言葉には色々な意味と気持ちが詰まっていた。

そんな時、見張りが腰に手を伸ばし、剣を抜く。

ラノークは唖然としながら上を向くと、剣が首元にまで近ずいていた。

アレスはその光景を見て、体が動こうとしたが腕と足に着いた鎖と錠がそれを許さない。

──────ストン。

ラノークの首が落ちた。

ラノークが死んだのだ。

見張りは剣を鞘に抑め、牢の扉に挟まった首のない体を蹴り飛ばし、牢の中に入れ込む。

当たり前だ。

奴隷も大事な商品だが、その大枠を出ない。

商品は物であり、人としても数えられない。

そんな物を切りつけようが、どうしようが、勝手だ。

だが、それをアレスは到底受け入れられなかった。

アレスはその光景を見て目から光が消え、黒く濁る。

歯を食いしばり、息が荒くなる。

自分の呼吸音で鼓膜が塞がれ、視界がなにも見えなくなる。

反射的に大声を上げようとしてしまう。

その瞬間、アレスは自分の中のナニかが暴走するような感覚に陥りかけるが寸前で止まる。

それを制止したのは死んだラノークだった。

ラノークの転がった首がこちらを見て微笑んでいたのだ。

アレスでもどうすれば良いのかわからなくなる。

アレス自身は考える。

ラノークと言葉を思い出し、最後の「アレスだけでも幸せになってね」と。

それはどのような意図で言ったのだろう。

自分はどうなるかわからないから、可能性がまだあるアレスに幸せを託したのか、それともアレスがどのような形であれ、幸せになってろしいのか、アレス自身はよく分からなかった。

だが、ここで揉め事を起こしたらあるのは死か不幸だ。

頭がぐちゃぐちゃになる。

それは経験があるような、そしてそれを傍観したような感覚だった。

それをラノークは望んではいるのか、否なのか、よく分からなかったがアレスは何も考えず、進み続ける列に従うように進む。

やがて、外に出て、そこは森に囲まれた小屋があった。

小屋の地下に奴隷を保管しているのだろう。

奴隷商人達が奴隷に馬車に乗るように強く促す。

見張りは五名、乗り込む奴隷の数は10名弱。


(俺は…なんだ?どうすれば良かった?

ラノークが死んだ。ラノークが死んだ。ラノークが死んだ。ラノークが死んだ。ラノークが死んだ。ラノークが死んだ。

死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ。

首が無くなって、体から力が抜けて、瞳から光が消えて、血が出て。

たった一人、俺を親友と呼んでくれたラノークが目の前で死んだ。)


なにも考えられず、目を瞑る。

現実から目を背けるように。


アレスは目を開けると馬車に乗っていた。

馬車は森を進んでいる。

そして着替えてもいる。

自分で着た記憶があるが、服を脱ぎ、シャツを着て、ボタンをかけた実感がない。

馬車に乗っているのは売られる為、アレスときちんとした服に着替えた13歳未満が集められている。

狭い。身体がギチギチでノミや泥を少し付いた髪が生温かくなって嫌な臭いがした。

さらにアレスの髪は長く、足の膝位まであり、それが蒸れて余計に臭う。

馬車が森を抜けて地下から街に侵入するための洞窟に入って警備網を抜けようとする。


「さっさと降りろ!」


見張りがそう言い、俺たちを馬車から降ろす。

洞窟の中はとても暗く、洞窟のような横に抉れたとても大きい穴に入る前に見張りが松明に火を灯す。

アレスは考えた。

ここで見張り達に連れられ、他の奴隷達の洞窟に入れば、逃げる事もできず、必ず売られ、幸せか不幸か︎どちらに転ぶかは分からないが、兎に角、何が起きるか分からない。

そしてここで逃げようとすれば見張りに殺されるか逃げられたとしても不幸にもなるかもしれない。

売られようが逃げようがあまり変わらない。

だが、アレスは決意する。

言い訳はしたくないと。

そして自分の責任にして、何かあっても誰も傷つけてず、逃げ道を作りたくないと。

その瞬間、自分の奥底のナニかが俺に問いかける。

問いたものが何かは分からない、だが、それは薄らとアレスに問いかけだ、それに悪意も敵意も感じなかった。

アレスはそれに首を縦に振った。

ナニかが優しく、そして不敵に微笑む。

その瞬間、馬が雄叫びを上げた。

見張りが慌て、馬車への注意が集中し、奴隷達への警戒が疎かになる。

突然、鎖が腐り、脆くなった気がした。

アレスは思っきり手と足を引っ張り、鎖を破壊する。

筋肉のほぼない自分が何故出来たかは分からない。

兎に角、夢中で力を入れた。

鎖を破った馬車を出て、他の奴隷を気にもせず、簡単に見つからないようにするために暗く、とても大きい洞窟の奥へ走る。

後ろから見張りの怒号が聞こえる。

そして他の子達は逃げられたのか。

火の明かりがアレスよりもずっと早い速度で近ずいて来るのが背中で感じる。

アレスは足を突然止めた。

その理由は目の前には斜面だ。

いや崖の方が圧倒的に近い。

後ろからは見張りが金切り声にも近い声で「おい!待て!」と耳を叩く。

そこで靴を脱ぎ捨て、良い物を食えず、筋肉が上手く発達出来てないのにも関わらず、崖にも近い急斜面を手と足を使い斜面のの出っ張りに引っ掛け、降りようとする。

その瞬間、足をついた岩が崩れ、落ちそうになる。腕の力だけで耐え、足をブラブラと動かしながら、出っ張りを探す。

焦りながら探していたせいか、強く握りしめてしまい、崩れて、18フィート(5.4mほど)近くはありそうな斜面を悶え苦しみながら、転がり落ちる。

アレスは何ヶ所も体が岩に勢い良く当たり、擦り傷や打撲を負う。

痛みからか冷や汗が出て、体がおかしくなったような感覚に陥る。

心臓の音がとても良く聞こえるほどに大きくなる。

ドクンドクドクンドドクンドクドクンと。

まるで体の中と外に心臓が2つあるように。

数秒が経ち、汗や痛みが引く。

アレスは目を微かに開け、上を向きいて明かりが崖前で止まり、追ってが来ない事を確認する。

体を起こし洞窟の更に奥に進む。

ゆっくりだが息を整え、今の全力で歩き出す。

周りは暗く、何も見えない。

手当たり次第に腕を広げながら、周り壁や障害物がないかを確認しながら歩き出す。

段々と目が慣れてきたのかほんの少し、見えるような気がしたが、目からは見えない。

アレスは考える。

例の夢の影響なのかはわからないが、何故かここの事を知っている。

どの道に何があるのかもわかる。

ここに居るとナニかが俺に囁いてくるような、そして連動して、それに反応し、共鳴するように。

それに違和感を感じながらアレスは思考を続け、ゆっくりと歩く。

次期に歩いているだけで息も上がり、脚のももが膨張するような感覚がある。

ほとんど歩いた事もなく、体力も全くと言っていいほどもなくて、さっきの斜面から転がり落ちた時のキズの痛みも我慢しながら歩き、骨にほんとちょっとの肉と皮を貼り付けたような、周りの肉を無くし、骨と骨の間だけ肉が詰まった鶏の手羽先のような、か細い足で歩く。

アレスは必死に必死に必死に必死に必死に必死に必死に必死に必死に必死に必死に必死に必死に必死に必死に足を上げ、前に出し、下ろす。

右足、左足と交互に交互に何百回も何千回もそれを繰り返す。

斜面を下りようとした時に靴を脱ぎ捨てたのが裏目に出て、足から血が出てくる。

アレスはその痛みに耐えながら、必死に足を動かす。

痛みに悶え苦しみ、声を漏らし、時には痛みで呻き、そして泣きたくなる。そんな時、アレスは不可解な出来事に見舞われる。

ナニかがアレスに訴えかけてくる。

もしかしたら囁いてるのかもしれない。

それはなんなのかもわからない。

でも聞こえてくる。光はこっちだと。

アレスはそれに安心感を覚える。そして悶々とする。

また一歩、また一歩と足を動かしていると微かに光がアレスの目に飛び込む。

アレスは暗く、ロクに見えない洞窟から出られる喜びから大股で歩く。

光が近ずくと連動するようにアレスの足を動かす速度が速くなる。

あと数歩で暗き洞窟から出られると言う所でその光の正体が分かる。

それは明らかに整備された道、下水道だった。

上から大人数の声が聞こえるのと、光がほんの少し入り、中に入ってもほとんど明かりがないが洞窟の中と比べたら圧倒的に見える。

だが、そこは道が汚く、洞窟の中にもとんがった石は転がっていたが、地下道は割れた瓶やガラスがかなりの頻度で落ちている。

避けて歩いていたが、細かい破片達が少しづつアレスの足をさらに赤く染める。

割れた瓶のガラス片、小石が足に刺さり、血が出る。

そんな感覚からも逃げるように歩く。

走る度に足に突き刺さった物が少しずつ奥深くへと刺さって行く。

アレスは不意に後ろを見て、追っ手が来てないか時々確認する。

見た限り、追っ手は来ておらず、安心して前を向く。


──────カァン


その音と同時にアレスは頭に流れる痛みに反射的に叫ぶ。

少しばかり、しゃがみ、痛みに耐える。

何とぶつかったのかとアレスは目を開ける。

目の前に壁にコの字型鉄が埋め込まれていた。

それは梯子だった。

上には蓋はされているが、明らかに今までとは違う光の入りよう、外に出られる事にアレスの心に喜びが満ちる。

梯子を爪先立ちで足の刺さったものを刺激しないように昇り、蓋を外す。

上まで登るとそこは街だった。

洞窟を越え、下水道を越え、街の路地裏へと出たのだ。

ラノークの言う通り、外は綺麗だった。

空が青く、雲が無数にあり、街は人で賑わっている。

だが、ラノークは死んだ。ラノークが死んだ。

空が青かろうが、雲が白かろうが、アレスにはあの斬首されるラノークの姿が再生される。

そしてラノークの「幸せになってね」と言う言葉がアレスの脳内に駆け巡る。

だが、アレスは幸せと言う物が全く分からなかった。


翼を得て鳥になれても、地を這いずり回り、歩く。

尾ビレを得て魚になれても、陸を畝り進み、歩く。

自由を得て普通の人になれても、枷を付け、歩く。


それほどまでにアレスは未来の自分が、そして幸せがわからなかった。

アレス枷を外れた今でも、枷が付いているような感覚がした。

アレスは考えるのを逃げるように中断する。

体を壁につけ、腰を下ろし、尻を床に付け、座る。

まず右足に手を伸ばし、足に刺さったガラスや小石などの突起物を慎重に触る。

触る度に傷口から血が漏れ出る。

臆する前にアレスは小石を掴み、息を整えてから精一杯の力で抜く。

アレスの口から「うぅ!」と悲痛な声が漏れる。

血が出てくるがそれに手を止めず、二つ、三つ、四つと抜くが、抜く度に痛みと声は増すのに、刺さった突起物を抜く手の速度が速くなる。

右足が赤く染まる一方、抜いた3倍以上の物が足裏に刺さっている。

そして左足はまだ一切手をつけていない。

軈て、手は止まり、勇気も出ずまた深く、体を寄せて小さく、深く座り、頭を下に向ける。

アレスはそんな情けない自分と痛みで涙が出てくる。

涙を拭おうと、目を開けると目の前に人影が見えた。

路地裏にわざわざ入ってくる人だ、少し身構え

る。

その人影は姿勢を低くし、こちらを覗き込んで来る。

少しずつ顔を上げ、目を開け。



「大丈夫?泣いてるよ?」


覗き込んで話しかけてきた彼?は黒髪で男にしては髪が少し長く、奥底に綺麗で透き通った黒のような美しい赤色の瞳、華奢な体つきをしており、細いが筋肉質な肉体。

アレスはとても今まで生きてきた感性では言い表せられないほど美しく、なによりその一言の優しさがとても眩しく、自分の中のナニかが壊れたような気もするし、自分の中の鎖のような物が強く繋がれた気がした。


そしてこれがアレスの人生で一番の転機であり、幸せと不幸の前触れだっただろう。

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