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ACT.9  やあ、元気にしてたかな?

俺は思い切ってパソコンを起動した

カネの声はするけど画面には出てこない……

 俺はガラクタのいくつかをもって、インシュンと共同生活することになった部屋に戻った。インシュンの部屋はきれいだった。そもそも私物をほとんど持っていない。俺が再度、ガラクタを取りに行こうとするとインシュンが付いてきてくれて、重たいものを持ってくれた。インシュンはいいやつだと分かった。ただ、いびきは驚くほどうるさかった。


 翌朝、俺はかなり迷ったが、パソコンを起動してみることにした。このまま電源が得られなければパソコンは使い物にならなくなる。バッテリーは自然放電でもじわじわ減っていく。あてがあるわけではないが、手をこまねいているより起動した方がましかもしれないと考えたからだ。


 電源を入れるとメーカーロゴマークが出る。くるくる回るサインが出て、画面が明るくなるはずが……真っ暗なままだ。これはまずい。もしかして、バッテリーがすでに尽きたかと思ったとき、パソコンから声がした。


「やあ、タケ。元気にしてたかな?」

 この声と話し方はカネだ。しかし画面に表示されていない。

「おっと、表示機能がイカレたんじゃないよ。この乏しいバッテリーを節約するために画面表示機能を停止させたんだ。いい考えだろ?」

 顔が見えなくても、無駄口ばかりのカネである。


「そうだ。もうすぐバッテリーが尽きる。充電できなきゃ、二度とその無駄口を聞くこともなくなるよ」

「充電はできるさ。私はカメラでタケの方を見てるけど、いい感じのチャージャーを手に入れてきたじゃないか」

「ええっ?!どこ」

「タケのすぐ後ろさ。おお、いよいよバッテリーが危ないな。急いでチャージした方がいいよ。とっても大事な話があるからね」

 また、いきなりスリープモードに入った。


 俺の後ろ……ガラクタ類が転がっている。最後にインシュンに運んでもらった黒いやや分厚い板のようなものが目立っている。近寄ってみる。昨夜は暗くてよくわからなかったが、これは……。


 だいたい幅90センチ、長さ120センチ、厚さ5センチくらいのものが、ファブリック状のものできっちり梱包されているようだ。合わせ目を探して引っ張ると、梱包が外れてきた。鈍く黒光りする板だが、長辺の中央あたりに突起がある。押すと開いた。黒紫色の光沢を帯びたパネルが現れた

 もしかして、もしかして……リムの全周を見ていくと短い辺にいくつか穴がある。Type-Cコネクタのような穴もある。


 俺はリュックから充電用のコネクタケーブルを取り出した。震える手でType-Cコネクタのような穴にそっと押し込んでみる。きちっとはまった。


 小屋の外には朝の光が降り注いでいる。俺は、まず板を持って外に出て黒紫のパネルに太陽光が目いっぱい当たるように置いた。それからパソコンを持ってきて、ケーブルをつなぐと……急速充電が始まった!


 だいたい30分くらい経ったろうか。バッテリーがフル充電状態になった。パソコンを再起動してみる。カネが現れた。またスーツの色が変わっている。今度は後ろに大型モニターがある設定だ。

「やあ、タケ。上手くいったね。お見事だよ」

 俺には、このチャージャーのことも含め、カネに確かめたいことが山ほどある。

「カネ、聞きたいことが沢山あるんだが……」


「それは、後からにした方がいいよ」

 カネが話を遮ってきた。

「とっても大事な話があると言っただろう」

「なんだよ。その話って?」

「結論から言おう。ここは後、12時間以内に攻撃される確率が80%くらいある」

「ええっ!」

「考えてみてごらん。だいたい30時間前、君らはエルフが指揮を執る18名のオーク兵を蹴散らして逃走したんだ。彼らが君らを放置したままにすることはないよ。たぶん、一個小隊、だいたい50名くらいで広範囲を探索していると考えなくちゃね。分かるだろ」

 もっともな話である。

「その人数で、徒歩で逃走できる範囲を探索していくと、君らが逃げた痕跡には、そろそろたどり着く。そうなれば、この森が本拠地だとすぐ分かる。分かったら、それなりの準備をして攻撃に移るまでは、そんなに何日もかからない」

 これも、もっともな話である。

「まさか、ここまで逃げれば安心なんて思ってなかったよね」

 思っていた。そうだ。俺たちの危険は去っていないし、ここにいるワンダラ全員に危険が迫っている。たしかに大事な話だ。


「じゃあどうすれば……」

「状況は厳しいよ。前回の突破劇は、オークもエルフも、こちらの戦闘能力を過小評価していた。十人余りで一人に向かったから上手くいった。今回、彼らは本気の戦闘モードだろう。前回虚仮(こけ)にされた雪辱を晴らそうとしているだろうな」

「だから、どうすればいいんだ!」

「古代中国の兵法『兵法三十六計』の最後の計略が最適解だね」

「分かりやすく言えよ!」

「三十六計逃げるにしかず」


「どこへ!?」

「それは、後から示すよ。その前にやることがある」

「何!?」

「急いで村人全員に荷物をまとめさせて逃走できるようにすること、それと襲撃軍を迎え撃って、逃走時に追撃できないように打撃を与えることだよ」

「迎え撃つってどうやって!!」

「これこれ、昂奮しちゃあいけないよ。冷静に、冷静に」

「百人以上の命がかかっているんだ。早く戦術を教えろ」

「了解。谷で迎え撃つんだ。彼らが谷の底までくるタイミングで森に火を放つ。焦土作戦だよ」 


カネは大変なことを言いだした

もうすぐオーク兵たちがここに攻めてくる

カネの提案は過激だった「焦土作戦で迎え撃て」

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