ACT.8 チョーハの話
夕食の後、篤子はチョーハに話を聞き始めた
だんだんわかってくるこの世界 エルフは魔法で人を殺せる?!
会合が終わった後、篤子がチョーハに声をかけた。
「いろいろ聞きたいことがある。夕食の後、話はできるか?」
「いいとも、昼飯を食った小屋に来てくれ」
篤子は俺にも声をかけた。
「タケ、お前も来い。同じ異世界人だからな」
夕食後、俺が小屋に行くと、チョーハはいたが篤子はまだ来てなかった。
俺は、部屋の窓際に置かれている正体不明のガラクタが気になった。
「チョーハさん、この窓際にあるものは何ですか?」
「わしらには何だかわからんものだ」
「何だかわからないものを、どこから手に入れるんです?」
「ツィックマの軍の施設から盗って来たものもあるが、ほとんどはダンジョンから拾って来たものかな」
「ダンジョン!?」
「わしらはそう呼んでる。この裏の山の少し高いところに入口があってな、中には入り組んだ回廊が深いところまで続いている。前に拾ってきたものの中に魔法の明かりがあってな、それからまた拾えないかと思っているんだが、なかなか見つからない」
そんな話をしていると篤子がやってきて、テーブル前の椅子に座った。顔が少し怖い。座るなり口を開いた。
「話を聞きたい」
「いいとも、何でも聞いてくれ、アコ将軍」
「牢獄で聞いた話の続きだ。この世界では、エルフは支配者で、オークは兵隊で、パンピが登録されてる一般人、ワンダラは流れ者、登録から外れた一般人と言ったな?」
「その通りだ」
篤子はチョーハの目を見据えて質問を始めた。
「まず、なぜエルフは支配者なんだ?」
「えっ?……なぜと言われても、ずっと支配者だから……」
「じゃあ、どうやってエルフは支配者になったんだ?」
「ああ、それは神様がすぐれた種族であるエルフを支配者に選んだと伝わっている」
「エルフのどこがすぐれているんだ?」
「うーん……まずエルフは長生きでたくさん知恵を持っている。神様の言葉が分かる。ああ、魔法が使える……」
「ふーん……オークはなんでエルフの言う通りに兵隊をやってるんだ?」
「なんでって言われても、昔からそうだし……ああ、エルフに逆らったらオークは死んでしまうと聞いたことがある」
「ほう……オークのワンダラはいないのか?」
「見たことも、聞いたこともないな」
篤子は腕組みをしてちょっと考えた。それから質問を再開した。
「パンピについても知りたい。どんなふうに生活してるんだ?」
「そりゃあ、農園で働いたり、工場で働いたり、荷物を運んだり、建物の修理をしたり掃除をしたり。まあ、エルフの命令通りに働いてるさ」
「食べ物は足りているのか?飢え死にとかはないのか?」
「この十年くらいはないかな。その前は、何度か穀物が病気になって採れないときに餓死者が出たよ」
「パンピは食べ者はどうやって手に入れるんだ?」
「それは、エルフの指導で配られる。だいたいは働いた時間に応じて配られる。昔、俺はそういう仕事をしていたことがある」
チョーハがちょっと嫌そうな顔をした。
「病気になったり、怪我をした者はどうなるんだ?」
「病気や怪我はそいつの責となる。働かない者には食料は配られない」
篤子の表情がだんだん険しくなってきた。
「ワンダラは、逃げ出したものと言ってたよな?」
「まあ、それが多いが、放り出された者もいる」
「どういう意味だ?」
「パンピで長いこと働けなかったものは役立たずとみなされ、食べ物を与えられなくなる。しばらくは、周りが助けるがそうそう長くはもたない。そっと棲家を出るしかなくなる。ゲーンタとスーゲ婆がそうだな。ゲーンタの親は二人とも病気を患って亡くなった」
篤子の目にギラギラするものが現れてきた。チョーハは淡々としている。
「チョーハはどうしてワンダラの盗賊になったんだ?」
「わしは、ある集落のパンピのまとめ役のようなもので食料の配分係をしていた。病が流行って、食べ物の配給が減らされた。わしは、いろいろ誤魔化しをやって配給をちょっとずつ増やして、働けない者にも配ってた。しかし、とうとう足らなくなって亡くなるものが出てきた」
今度はチョーハの顔つきが次第に深刻になってきた。
「スーゲ婆が赤ん坊だったゲーンタと一緒に棲家から姿を消したのはそのころだ。わしは、まとめていた皆を何とかしたかった。そこで食糧庫から食料を盗み始めた。少しずつ分からないように。オークたちもしょっちゅう盗み食いをやらかしていたので、半年くらいは何とかなった」
いつの間にか、俺も篤子と並んでチョーハの話を真剣に聞いている。
「わしは、スーゲ婆やゲーンタのような、ワンダラになってしまったものにも食料を届けていた。ただ、悪いことはそのうち露見する。エルフがおかしいと思いはじめて、オークを使って食糧庫を調べ出した。配給係りのまま、こっそり盗むのは続けられない。わしは盗賊になる決意をした」
「わしと一緒に働いていた何人かの若者は、わしのやってることにもやろうとしていることにも気が付いていた。わしは荷車を用意して、ある晩、食糧庫からごっそり食料を持ち出して逃げた。わしに協力してくれた者が何人かいる。インシュンもそうだ。そしてわしらは、エルフが立ち入ろうとしないこの森の奥に逃げ込んだんだよ」
俺には気になったことがあった。
「私も質問していいでしょうか?」
チョーハが視線を俺に向けた。
「いいぞ、タケ参謀」
「あのですね、エルフが使う魔法がどんなものか知りたいんです」
「そうだなあ……わしは直接見たことはないんだが、やはり俺がやっていたまとめ役のようなパンピがえらくエルフを怒らせて目の前に引き出されたそうな。そこでも反抗したら、エルフが指さしたとたんに胸を押さえて後ろに倒れて死んだということだ。弓も使わず毒も使わずに人が殺せるらしい」
「他には?」
「奴らは遠く離れていても会話ができると聞いたことがある」
急に篤子が立ち上がった。
「俺はいろいろ考えたいことができた。部屋に戻る」
さっさと出て行った。
俺は、部屋の窓際に置いてあるガラクタ類が気になっていた。チョーハに尋ねた。
「この辺のものを部屋に持って帰って調べてもいいですか?」
「いいとも。使い方が分かったら教えてくれ」
俺はダンジョンで拾ったというガラクタを持って小屋に戻った
こいつら、何か役に立つのか……




