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ACT.6 龍角散のど飴

俺たちはオーク兵の追撃をなんとか振り切った


しかし、入り込んだのは真っ暗な地下通路

だんだん松明の残りもなくなってくる……

 扉の内側は妙に平坦な床と壁と天井とがほぼまっすぐに奥に伸びていた。空気がよどんでいる感じだ。少しかび臭い。松明の明かりでは、奥の方はまったく見えない。


 パソコンは扉をくぐるときに閉じてリュックに入れた。バッテリー残量はもう10数%かもしれない。バッテリーセーブモードに入ったら、重いアプリは動かない恐れがある。オークからは逃れたが、ここから出ることができなければ、集団墓地の場所が少し変わるだけだ。いまいましいが、このままならカネの力が必要だ。そのためには、どうにかして充電しなければならない。


 感覚的には二時間くらい歩いただろうか。「松明を五本使い終わった。もう手元には二本しか残っていない」という呟きが聞こえた。

 

 突然、先頭から二番目を歩いていたゲーンタが立ち止まった。ゲーンタは壁際に寄って上の方を見ている。そして、言った。

「ここ、空気の匂いが違う」

 言われてみたら、わずかに新鮮な空気の匂いがする。松明を持った男が背伸びしながら松明を高くかざした。上の方に穴があり、そこから緩やかに風が入ってきているようだ。松明の炎がわずかに風に揺れている。


 でかい槍持ちが両肩にゲーンタを乗せて立ち上がった。ゲーンタが穴に顔を突っ込み言った。

「丸い穴があって、梯子があるみたいだよ。昇ってみる」

 ゲーンタが梯子を昇る音がだんだん遠くなっていった。30分近くたってから、穴のずっと上から声が聞こえてきた。エコーがかかって聞き取りづらい。

「外に出られそうだよ」


 暗い四角い廊下の次は、暗い丸い筒である。状況が改善しているのか悪化しているのか分からない。真っ暗な筒の中を手探りだけを頼りに昇っていくのは、恐ろしいうえに辛い。ほとんど泣きそうになりながら昇りきると、筒はほぼ水平になって、先の方が少し明るくなっている。


 今度は這いながら進む。やがて立てるほどの高さがある洞窟のようなところに出た。外から光が入ってきている。足場が悪い。俺より先に進んだ連中の手を借りて進むと、林の中の洞穴の入口に出た。空は曇ってはいたが、十分に明るい。俺たちはへたり込んだ。


 しばらくすると盗賊団のメンバーが次々に出てきた。篤子も出てきた。しっかり槍を持っている。ただ、でかい槍持ちとチョーハが出てこない。待ちくたびれた頃、ようやく槍持ちとチョーハが出てきた。槍持ちはそこら中擦り傷だらけである。


 チョーハが座り込もうとすると、篤子がチョーハに言った。

「おい、座り込む前にやることがあるだろ!」

「はあ、何を……」

「これからどうするかを決めるんだ。少なくとも、こんな昼間に、こんなに大勢で動き回ればヤバいだろうが!」

「じゃあ、夜になったら……」

「じゃあ、ここがどこで、どっちに行くのか分かってんのか?今のうちに斥候を出すんだ。お前らの本拠地への道を見つけておくんだ!」

「わかった。わかったから、ちょっとだけ休ませてくれ」

 革学同の書記局四位は、この世界の盗賊の親分よりよほどエライらしいとわかった。。


「まずは腹ごしらえをしよう」

 チョーハが言った。さすがに、篤子もこの提案を拒否はしなかった。

「持ってる食料を全部出せ。飲み水もだ」

 チョーハの命令に従って盗賊団メンバーがごそごそと食料を取り出した。布に包まれた干飯のようなものや干し肉のようなものが出てきたが、全員で食えば一人あたり一口程度しかない。


 篤子が俺のリュックに目を付けた。

「おい、タケ。お前、何か持ってるだろう。出せ」

 たしかに俺も食べるものを持っていた。リュックから取り出して並べた。篤子が怪訝そうな顔つきでチェックしている。


「なんだ、これ?ポカリスエット?ソイジョイ?龍角散のど飴??龍角散って『ゴホンと言えば』のアレか?」

「そうです。『ゴホンと言えば』のアレです」

「ポカリスエットって飲めるのか?sweatって汗だろ?」

 篤子は頭は切れるようだ。英語表記の商品名から、何かを読み取ろうとしている。

「soyjoyって……醤油が嬉しいのか?」

 商品名の意味など考えたこともなかったが、言われてみればヘンだ。

「えーっと、商品名なので気にしないでください。ポカリスエットは汗をたくさんかいた時の飲み物、ソイジョイは柔らかいクッキーのようなものです」

「龍角散のど飴は薬か?」

「うーん、のどにいい感じの飴というか……」

「『いい感じ』って曖昧な言い方しやがって、理系のクセに。要は飴なんだな?」

「そうです。龍角散がまぶしてある飴です」

「……不味そうだな」

「そこは、人それぞれだと思います」


 俺と篤子が話していると、盗賊団の連中が集まって来て不思議そうに俺の食べ物を見ている。

 ゲーンタがソイジョイを手に取った。パッケージが気になったようである。

 篤子が尋ねてきた。

「これは、子どもも食べられるのか?」

「はい、大丈夫です。味も少し甘めですし」

 ということで、俺のソイジョイはゲーンタが食べることになった。ゲーンタにパッケージから出して渡すと、端っこを少し食べて、目を丸くして残りを平らげた。


「ポカリスエットは汗をかいた時の飲み物と言ったな?」

「はい、そうです……」

 どうやら、食料分配の権限も篤子が掌握したようだ。

「おーい、でかい槍持ち、お前だ。こっちにこい」

 槍持ちがのそのそやってきた。

「お前が一番汗をかいた。これを飲んでいいぞ」

 やむを得ない。俺はキャップを開けて、槍持ちにポカリスエットを渡した。彼はちょっと匂いを嗅いだかと思うと、一気に飲み干してしまった。


 篤子は飴のパッケージを手に取って開けた。

「さて、こいつは……」

 篤子は、飴の数を数え、一個を自分で食べてみた。うんうんとうなずいて盗賊たちに言った。

「お前ら、一列に並べ。一個ずつやるから」

 盗賊たちが素直に並んだ。篤子は一つずつ配った。俺の分け前も一個だった。

「いいぞ、食べろ。ちょっと変なにおいがするけど気にするな」

 俺の龍角散のど飴は、異世界の盗賊たちの腹に消えてしまった。


やっとのことで地上に出た


少ないながらも食料を口にできた

さあ、これで盗賊団の本拠地に無事にたどり着けるのか

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