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ACT.4 バトル

ついにバトルが始まった


俺たちは何とか一体のオーク兵を倒したが、

馬に乗ったエルフの騎士が現れた。

 篤子とチョーハと俺は、消えた画面を一瞬凝視した。篤子が言った。

「おい、タケ、あいつは信用できるのか?味方なのか?どういうやつなんだ?」

「磯さん、その説明には半日くらいかかると思います。先に、今からどうするかを決めましょう」

「……そうだな……囲みを破っても、その先の当てがないなら、俺たちは全滅だ。チョーハ、お前らの拠点はどっちだ?どのくらいで着く?」

「東南に進んで、丸一日くらいだ」

「それじゃだめだ、あの『井上順』の作戦で行く」

 チョーハも俺もうなずいた。


「南の丘にいくぞ!チョーハ、南はどっちだ?」

「……だいたい、こっちじゃないかと思うのだが……星が出てないと、よくわからなくて」

 空には雲が増えてきて、月も隠れている。

「だいたいじゃまずいだろ!命がかかってんだぞ」


「あのう…」

「タケ、なんだっ?」

 もはや指揮官の権限は完全に篤子が掌握したようだ。

「私はほぼ正確に分かります」

 そう、俺は地質の観測が専門分野だ。ざっと地図を見ると、だいたい頭に入る。地形図を頭に入れると、その地形図内の場所に立った時の風景がだいたい想像できる。

 篤子が命令を下した。

「よーし、第一目標の南の丘までタケが先頭で進む。丘に着いたら、南に矢を放って、左90度に転進。楔隊形で、丘を駆け下り、敵兵を蹴散らして東へ走るぞ」


 俺たちは六人づつの三列縦隊になった。真ん中の列の先頭に俺、後方を警戒するために、俺の左の列の最後が篤子、右の列の最後がチョーハである。各列、五、六メートルの間隔を空けて、南の丘を目指し、腰を低くして進んだ。しばらくすると、オークたちが松明を灯しだした。こちらから位置が丸わかりだ。


 おそらく彼らは俺たちは逃げるだけで反撃はしない、反撃されても、ひとひねりにできる、闇に紛れて逃げられるのが一番まずいとでも思っているのだろう。そして、いよいよ囲みを狭め始めた。


 南の丘についた。松明までは、100から150メートルくらいの距離にあるようだ。我らの三人の射手が南の二つの松明に狙いをつけた。槍持ちは楔隊形を取った。真ん中に俺と子どものゲーンタが入り、後方をチョーハと、もう一人が剣を抜いて位置についた。篤子は少し離れて、敵情を見ている。


 篤子は右手に槍を持ち、左手をそっと上げた。そして、南を指して振り下ろした。三人が一の矢を射て、すぐに矢を番え二の矢を射た。篤子が立ち上がって、左手で思い切り東を指した。楔隊形のまま、俺たちは緩やかな傾斜を駆け下りだした。


 オークたちがなにやら騒ぎだした。ただ、そんなことには構ってられない。俺たちの行く手に松明を左手に、右手に剣を持った身長2メートルくらいのオークが一体いる。距離25メートルというところで、俺たちの突進に気付き驚いている。


 どんどんとオークとの距離が縮まる。あと10メートルというところで、俺たちの隊形の右側を、槍を持った篤子が追い越し全速力でオークに駆けだした。楔隊はそれに引っ張られるようにオークに向かって突き進んでいく。


 オークが剣を振りかぶって篤子に切りかかろうとしたその時、篤子は雄叫びを上げて、オークの左に逃れながら、左手一本で槍を低く旋回させて切先でオークの左ひざを切った。俺たちの射手の放った矢が剣を握るオークの右腕に刺さった。槍手はそのまま突入し、オークの下腹を突いた。


 篤子の声が響く。

「もう、そいつはほっとけ。弓持ち、右後方の奴を射ろ。いいぞ、そのまま逃げるぞ、タケ先導しろ」


 俺は必死に、東に駆けだした。背後の十七人の命が、俺の逃げる方向にかかっていた。

 

 200メートルくらい走ったところで、俺の耳に、ドドドッ、ドドドッという重たい断続音が聞こえてきた。この音は……悩むむ間もなかった。左側の視界の端から黒く大きな影が入ってきた。俺たちの進行方向に先回りしている。馬だ。左手に松明を掲げ馬に乗った騎士だ。


 騎士は100メートルほど先で馬を停め方向を俺たちの方に向けた。松明の光に騎士の上半身が浮かび上がる。白っぽいローブのようなものを着ている。長髪を後ろでひとくくりにしているようだ。顔つきは白人のように見える。耳は……よく見えないが、たぶんこいつがエルフだ。


 騎士は松明を捨てて剣を抜いた。馬が一瞬、後ろ足で立ち上がり、俺の方に向かってきた。生の馬は、半年前、悪い仲間に引っ張られて中山競馬場まで連れていかれ、五千円をすったとき以来の対面だ。武器としての馬は無茶苦茶に怖い!


 俺の左からチョーハとでかい槍持ちが走り出た。右側には、篤子が飛び出し、二人の男が続いた。


 エルフの騎士はチョーハめがけて剣を振り下ろした。チョーハは自分の剣で受けたが、弾き飛ばされた。続いてエルフが槍持ちに切りかかろうとしたところで、馬が暴れ出した。見ると、篤子が馬の尻のあたりを槍で突いている。騎士は振り落とされ、馬は逃げ出したが、騎士は素早く起き上がって、チョーハと槍持ちに向き合った。


 槍持ちが突きかかったが、エルフは刃をわずかに傾け、槍の軌道を滑らせた。槍持ちは勢いのまま前へつんのめった。エルフはチョーハに襲いかかった。篤子が二人の男に何か指示した。男たちはロープを持っていた。集団縄跳びのように二人で振り回し、エルフに縄をひっかけた。


 エルフが縄を振り払おうともがきだしたその時、篤子がエルフの背後から、右ひざの後ろを槍で突いた。エルフが転倒した。

「もう少しだ!タケ、早く進め!」

 恐怖に凍り付いていた俺に篤子の檄が飛んできた。


 俺たちはエルフを放り出して、再び東に走り出した。振り返ると、オークたちは、とりあえず、怪我をしたエルフの救助を俺たちの追跡より優先したようである。


 おそらく1000メートルを走ったあたりで、俺は怖くなってきた。雲間から時たま顔を出す半月の光に照らされる草原に、石造りの建物が見当たらないのである。


 1100メートルを走った。俺は間違いなく東に走ったと思うが、それらしい建物がない。俺はパニックに陥りかけていた。もう体力は使い果たした。このままでは、追跡を再開するであろうオークたちに捕まってしまう。へたりこんだ俺を、篤子が困ったような憐れむような表情で腕組みをして見下ろしている。


 そのときゲーンタの声がした。

「ここじゃない?」


囲みを破って東に逃れた俺たち。


目当てにしていた石造りの建物は崩れていたが

何とか、もぐりこめそうだ

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