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ACT.24 ルーサー2

ルーサーは子どもは連れ帰れない、帰ると殺されるという……

 ルーサーの要請に、アコは回答に詰まった。

 アコは、顔をチョーハに向けた。チョーハは、唇を噛み、小さく首を横に振った。


 アコはルーサーに向き直った。

「お前を逃がしてやる。ここから、その子たちを連れて戻れ」


 子どもたちは、よりきつく、ルーサーにしがみついた。


 ルーサーが言った。

「それでは、この子たちを助けたことにならない」


 アコが尋ね返す。

「どういう意味だ?」


「逃げ出した子どもを捜索して連れ戻すのは、集団キャンプの子どもらに、決して逃げられないこと、逃げたら恐ろしい目に遭うことを教え込むためだからだ」


「どんな仕打ちがあるんだ?」


「連れ戻された子どもは、檻に入れられ、水だけを与えられる。皆が見ている中で、飢え死にさせられるんだ」


 俺たちは、完全に言葉を失った。

 チョーハは両手を握りしめ、下を向いている。アコは歯ぎしりをし、目を剥いている。


「少し待ってくれ」

 アコはルーサーに言って立ち上がった。


「タケ、チョーハ。ちょっと来てくれ。タケ、カネも呼べ」


 俺たちは別室に移った。カネを呼び出すと、濃紺のスーツに濃いグリーンのタイ、黒縁眼鏡をかけて現れた。安手のコンサルタントのようである。


 アコが状況をカネに説明した。カネが顎を右手でこすりながら答える。

「状況は理解しました。最終的な選択肢は、子どもを受け入れるか否か、ルーサーをこのまま返すか、処刑するかの組み合わせですから四パターンですね」

「そうだ、戦略的にはどう見る?」

「事態を複雑化させず我々の当初計画を障害なく進めるのを優先するなら、子どもは受け入れない、ルーサーを始末するというのが選択すべき策ですね」

「だろうな」

「もっとも予測が難しい事態となるのは、いうまでもないですが、子どもを受け入れたうえで、ルーサーを返すという策です」

「だよな」


 沈黙が落ちた。


 俺はカネの言葉に引っ掛かりを感じた。

「カネ、『予測が難しい』というのは、『最悪の選択』という意味なのか?」

「おや、タケ、いいところに気が付きましたね。『予測が難しい』場合は『最悪の結果』になる可能性もありますが、『悪くない結果』に至ることもあります。あまりにも不確定な要素が多い。だから『予測が難しい』と言ったのです」


 また少し沈黙が続いた後、アコがチョーハを見た。

「チョーハ……」

 チョーハは、まだ手を握りしめて下を向いていたが、顔を起こしアコを見た。そして小さくうなずいた。

「インシュンとゲーンタを呼んでくる。頼めるとしたら、あの二人だ」

 チョーハは部屋を出て行った。


 アコはカネの方に向き直った。

「すまんな、事態を面倒にして。俺たちは、人間だからな」

 画面の中でカネが片側の口角だけを少し上げて笑った。


「アコなら、この選択でしょうね。了解です。ルーサーに交渉を持ちかけてください。子どもを受け入れる、代わりに、教えてほしいことがあると。メモの用意を……」


 カネはルーサーから聞き出したい情報のリストをアコに伝えた。


 アコと俺はカネが要求したリストを手にルーサーのもとに戻った。

 アコがルーサーに告げた。


「待たせたな。その子たちを預かろう。お前も返す。ただし、交換条件として、軍事的内容も含めたこちらの質問に答えてもらいたい。知らない内容については『知らない』と答えてくれればいい」


「わかった。俺の方の条件としては、子どもを預けることのほかに、お前たちと接触を持ったことを秘密にしてほしい」


「了解した。では、はじめるか」


 アコはルーサーに時間をかけて質問し、ルーサーははぐらかすことも誤魔化すこともなく答えているように見えた。


 質疑応答が終わったところで、チョーハがインシュンとゲーンタを連れて戻って来た。

 アコがルーサーと二人の子どもに紹介した。

「このデカいのがインシュン、こちらのすばしっこいのがゲーンタだ。お前たち二人の面倒は、この二人に任せる」

 ゲーンタがポケットから、ビスケットのようなものを取り出し、二人の子どもに差し出した。

「お腹減ってない?」

 二人の子どもは、一旦ルーサーの方を見た。ルーサーがうなずくと、おずおずと手を伸ばしてビスケットを受け取り、早速口に運んだ。

「こいつらを見つけてから逃げるのに精いっぱいで、ほとんど何も食っていなかったんだ。ありがとう」

 インシュンが大きな体をかがめ、子どもらと視線を合わせた。


 ルーサーが子どもらに言った。

「おじさんとは、ここまでだ。もっと一緒にいたかったが……」

 

子どもらは下を向いていた。足元に涙がいく粒も落ちた。


 アコが小さな紙の包みを出した。

「ブルーピルが三粒入っている。ツィックマの町でエルフから奪ったものだ」


 ルーサーは首を横に振った。

「ありがたいが受け取れない。俺は兵営に戻ったら、素裸にされて身体検査を受ける」


 アコは包みをひっこめた。

「そうか……」


 ルーサーは捕らえられた場所まで革命軍に連れて行かれ解放された。俺とアコも同行した。

 ルーサーが見えなくなって、アコはタフな革命軍兵士二人に命令を出した。

「気付かれないように追跡しろ。四時間追跡して何もなければ戻ってこい。あいつが誰かと落ち合うようなら、そいつもろとも射殺せ」


 二人は無言でうなずきルーサーを追って霧雨が降る森へ入って行った。


結局、俺たちは子どもを受け入れ、ルーサーを釈放した

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