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ACT.17 ブルーピル

革命宣言は少しも受けなかった

この町を逃げ出す準備にかかろうとしたが……

 アコの演説に歓声も拍手も起きなかった。群衆はゆっくりばらばらと解散していった。


 アコと俺とチョーハは食事を取った部屋に戻った。アコは椅子に座るなり頭を抱えている。チョーハは腕組みをして座り込んだ。俺は少し離れたところでそっとパソコンを開いたまま座った。


 アコが手をほどき、天井を見上げて声をあげた。

「あーやっちまった。もうちょっと喜ばせることを言うべきだったよな」


 チョーハも俺も、答えようがなくて黙っている。アコが続けた。 

「あのパンピたちの、びくついた顔を見てると、ガツンと言わなくちゃ、気が済まなくなった。秋月の乱を指揮した大大叔父の磯淳から血は争えんな、と言われるだろうぜ」


 これに突っ込んだのはカネである。スティーブ・ジョブズのような黒いハイネックセーターを着て、画面に現れた。

「いやー、さすがアコ将軍。情け容赦なくしかり飛ばしちゃいましたね」

「やはり、そう聞こえるよなあ」

「いいんじゃないですか。『みんなでがんばろー』と言えばしらけるだけだし、彼らも薄々は分かっていたことですから」

「お前こそ、情け容赦ないな」

「はい、AIですから。そうそう、用語の使い方に気になる点がありましたよ」

「なんだ?」

「その『働かざる者は食うべからず』、元はパウロの手紙ですが、革命語としてはレーニンですね。1918年憲法で『労働は義務』と並べて、資本家層に向けた言葉です。革学同を名乗るなら、本来はエルフに投げるべきフレーズかと」

「こうるさい奴だなあ」

「はい、AIですから」


 俺はオークの再襲来まで時間がないことが何より気になってる。アコに言った。

「そういう話はいいから、今後の行動の具体的計画を話しましょう。時間がないんです!」

 チョーハも同意した。

「おお、そうだ。それが大事だ」

 アコもさすがに受け入れる。

「まあ、そうだな。じゃあカネ、次の目的地だが……」


 いきなりドアをあけて盗賊団あらため革命軍の一人が入ってきた。

「会議中、すいません」

 盗賊団から革命軍になると、言葉使いも変わるようだ。

「オークたちが騒ぎ出しました」

 チョーハが言う。

「ここから出せと言っているのか?」

「いいえ……『ブルーピルをすぐにくれ、死んでしまう』と言っているんです」

 俺たちは顔を見合わせた。

 アコがチョーハに尋ねる。

「お前、ブルーピルって知ってるか?」

「知らんなあ」

「カネ、お前なら知っているんじゃないか?」

「残念ながら、今ここで解説できる情報はないですね。さすがにオークたちのスラングまでは抑えきれてないです」

「しかたない、話を聞きに行こう」

「お願いします。興奮気味なので気を付けてください」


 俺たちは同じ階の重傷で動けないオークを閉じ込めている部屋に入った。髭が伸び、髪がくしゃくしゃのオークが叫んでいる。

 アコが話しかけた。

「お前はブルーピルがいるのか?」

「そうだ。早くくれ。あと半日以内に飲まないと俺は死ぬ」

「……ブルーピルは、何か薬か?別の呼び名はないのか?」

「薬かどうかは知らないが、三日に一回飲まないと、体が腐って死ぬ。別の名前は……知らない。俺たちは、ずっと、そう呼んでいる」

「なんだと……それは、エルフが出していたのか?」

「そうだ。青い小さな粒だ」

「待ってろ、エルフの部屋を見てくる」


 俺たちは三階のエルフが使っていた部屋に入った。

 アコが言う。

「青い小さな粒って言ってたな。薬のようなものなら、ビンかケースに入っている可能性が高い。片端から開けてみよう」

 三人で手分けして部屋を漁っていくが、それらしいものは出てこない。

 士官室の捜索を終えて、エルフの使っていた寝室に入った。ここも隅々まで漁るが、それらしいものはない。


 俺は、ふと、作り付けの大きな箪笥が気になった。開けると、豪華な衣服が吊るされていたが、服の幅より箪笥の奥行きが深い。服を全部放り出すと、箪笥の奥は金庫になっていた。ダイアル式のロックがかかっている。


 俺は二階へ走り、パソコンを抱えると、そのまま金庫の前へ戻った。カネに見えるようにカメラを金庫に向ける。

「どうだ、カネ?何とか開けられるか?」

「開けられるよ。しかし時間がかかる。ずっと作業を続けて、十四時間プラスマイナス三時間かな」


 俺はアコとチョーハを振り返った。アコは悔しそうだった。

「タケ、カネと協力して開けてくれ。俺はさっきのオークに事情を説明する。地下牢のオークにも言わなくちゃならんな」

 俺はうなずいた。カネが画面の中から答える。

「じゃあはじめようか。まず、タケ、何か固い、できれば金属の棒のようなものを探してきて、その一端を金庫の扉に接触させてもう一端をパソコン本体のマイク近くに接するように置いてくれ」

「聴診器の代わりか」

「そう。そして、タケ以外の人は部屋から出て。それとできるだけ静かにしてほしいな」

「分かった」

 アコは、事情が分からずきょとんとしているチョーハを連れて部屋を出た。


 俺は部屋を探し回り、棒状のウェイトを見つけ、カネの言う通りセットした。

「じゃあタケ、ダイアルを少し回してみて」

 ダイアルを回すと、カリカリというかすかな音が聞こえる。

「では、まずは時計回りで始めよう」

 気が遠くなるような作業が始まった。


俺はAIカネを相棒に金庫破りに挑む

これ、ほんとに開くのか……

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