表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/24

ACT.15 長征戦略

町の実験奪取はできた しかし、ここには止まれない

アコは言う「逃げ回って、逃げ回って、虎を倒せる機会を待つ」

 大変な、一夜が明けた。


 俺たちは、まず、チョーハ率いる移送隊を迎えに二人を送り出した。次に六人を選び、二人一組で交替しながら歩哨に立つ配置をした。他にもやらなくてはならないことは山ほどあるが、まずは休んで腹を満たす必要があった。町の中を出歩くのは、無用に住民を刺激することになるので、占拠した軍施設二階で、軍に蓄えられていた食料で腹を満たす。


 俺はアコと一緒に食事を始めた。今後の相手方の反撃への備えについて考える必要があるので、バッテリーの残量は少ないがパソコンを起動した。

 カネが現れた。今回はブレザー姿だが、セットが凝っている。ホテルのレストランで朝食を取っている風である。

「やあ、アコ、タケ、おはよう。たぶん君らも朝食を食べていると思って合わせてみたよ」

「AIは飯を食べる必要はないだろ」

 俺が突っ込むとアコが聞いてきた。

「タケ、今まで余裕がなさ過ぎて聞けてなかったんだが、このカネって何者なんだ?」

 たしかにアコやチョーハにこいつが何者かを説明していなかった。しかし、俺もたいしてわかっているわけではない。

「アコ、こいつは人工知能、AI,Artificial Intelligenceなんだ。人間としての実体があるわけじゃない。本来は、人間の活動を助けるための補助装置みたいなものだ」

 アコはちょっと考え込んだ。何かを思い出そうとしている。

「……もしかして『2001年宇宙の旅』の、えーっと、ハルだっけ、あんな奴か?」

 画面の中で、カネが両手を広げて見せる。

「素晴らしい!私の高祖父をご存じなんですね!」

「ハルはお前ほどおしゃべりでも、ふざけてもいなかったぞ、もっとも裏切者になったけど」

「人に人格があるように、人工知能にも、いろいろあるんですよ」


「まあ俺は、一緒にやってくれて有能なら人でもAIでもかまわん。ただ、裏切るなよ」

「もちろんです。アコ内蔵助殿。昨夜は見事な討ち入りでした」

「ふん、お前に褒められると、なんだか馬鹿にされているようで嫌だ」


クラノスケ?ウチイリ?アコとカネにしか分からない話をしているが、もっと大事な話題がある。


「カネ、この後、エルフ、オーク側の動きはどうなる可能性が高いんだ?」

「そうですねえ。早ければ七日後、遅くても十日後に、一個中隊、まあ二百人くらいの軍で、この町を包囲して、我々を殲滅する作戦に出るでしょうね」

「包囲殲滅?!」

「そりゃそうでしょう。昨晩、我々は『危険な武装組織』から『革命軍』に見事に昇格したんですから。この一週間足らずで、コソ泥から革命軍。すごいスピード出世です」

 俺は動揺したが、アコは大して驚きもしていない。

「まあ、そうなるよな。俺たちは虎の尻尾を踏みつけた上に顔を蹴とばしたんだ。こうなった以上、俺たちは逃げ回るか、虎を倒すかしないと生き残れない」

「さすが、アコ将軍、分かってらっしゃる」

 俺はカネに尋ねた。

「ということは、我々はこれから……?」

 カネとアコが同時に答えた。

「逃げる!」

「そんな……これからずっと……」

 アコが答えた。

「逃げ回って、逃げ回って、虎を倒せる機会を待つ」

 カネが言った。

「アコ将軍、かの毛沢東の戦略で行くんですね」

「そうだ、長征だ」


 ツィックマの町に異変が起きたことを町の人たちは、朝早い時間には異変に気づいていたはずだが、用心深い彼らは、いきなり騒ぎ出したりはしない。まずは家の中から目を凝らして、次は通りに出て物陰からそっと様子をうかがっている。それでも、昼が近い時間になると、軍の施設の周りに人が集まりだしたが、遠巻きに見ている。


 昼になってチョーハが移送隊の人々、老人、女性、子どもに護衛を率いて町に到着した。そのまま、軍の施設に入って来て、前庭で皆を休ませた。さすがにここまで来ると、町の人たちも集まりだした。ワンダラの集団が軍の施設の前に陣取っていると知り、少しずつ声が上がり始めた。


 俺はインシュンが背負ってきたソーラーチャージャーを受け取り、早速、パソコンの充電を始めた。アコとチョーハが、少し離れたところで、打ち合わせというか、議論というか、けっこう声高に話している。


 軍の施設を取り巻く人の数がどんどん増える。事態について、何らかの説明を求める緊張が高まりつつある。やがて、どよめきが聞こえだした。


俺たちは長征に出ることになりどうだ

他方、町では異変に気付いた人々が集まりだした

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ