ACT.10 作戦会議
オークたちが攻めてくる
俺はチョーハと篤子に声をかけた 作戦会議である
インシュンに篤子とチョーハを呼んできてもらった。
篤子は画面の中のカネを見るなり言った。
「地下路では世話になったな。アレで助かったぞ」
「アコさん、私の予想を上回る活躍ですね」
「ふんっ、褒めてるのか?舐めてるのか?」
「いえいえ、事実を語っているだけですよ」
だめだ、俺が話さないと無駄口ばかりだ。
「カネ、挨拶はいいから早くさっきの話をするんだ」
「そうだね、急いだほうがいい」
カネが状況分析から焦土作戦までの話をした。篤子もチョーハも黙り込んでしまった。
少ししてチョーハが尋ねた。
「襲撃してくる連中をやっつけるのなら、村に止まれないのか?」
カネが答えた。
「襲撃してくる連中を全滅させることができれば、しばらくは村に止まれますが、『しばらく』だけですよ。次に攻めてくるときは十倍の兵力で来るでしょうし、森を焼く作戦は、二度は使えません」
「でも、今すぐ逃げることはないだろ」
「敵が有能なら、全兵力を前面には投入しないでしょう。火が収まるのを待って、残りの兵力をつぎ込まれたら、ひとたまりもないと思いますが、いかがでしょう?」
「火が収まる前に逃げないとダメか……」
「全員の安全を大事にするなら、それが最善ですね」
篤子が腕を組み直しながら言った。
「どうやら俺たちは、虎の尾を踏んじまったってことだな」
「そういうことです。前は『うっとうしいコソ泥』扱いでしたが、今は『こざかしい暴徒』に昇格したところです。次に焦土作戦を実行すれば、『危険な武装集団』に格上げでしょうね」
チョーハは落ち込んでいた。
「わしは、この森が大好きなんだ。気持ちのいい風が吹いてきれいな水が流れて、ここに里ができたとき、これでようやく幸せになれそうだと思ったんだ」
篤子が尋ねた。
「森を燃やさずに奴らを迎え撃つ手はないのか?」
「考えたんですけどねえ……オーク兵と正面から戦えば、まず勝てません。時間があれば、森から里までを要塞化することもできるんですが、猶予がありません。それとですね、彼らは、この里を見つけると、必ず焼き討ちにしますよ」
篤子がうなずいた。
「気が重いが、森に火を放とう。戦える者は谷に向かう。それ以外の村人には逃げる準備をすぐにさせる。逃げる先はどうする?」
画面の中でカネがちょっとためらいを見せた。
篤子が迫った。
「お前、あてがないんじゃないだろうな?」
「大きく分けると選択肢は二つです。逃げるだけなら、どんどん山に入って南下を続けることになります。しかし、それじゃあすぐに消耗してしまいます」
「じゃあ、他にどんな手がある」
「いったん北上します。そして西に進む」
チョーハが声をあげた。
「それはツイックマの方向だ!」
「そうです。ここへの討伐軍が損害を受けて引き返す所を腹背から襲い、そのまま街を占領します。彼らはツイックマの戦力をほぼすべて討伐軍につぎ込んで来ると予想できますから、街の占領は可能です。食糧を調達し軍事拠点を破壊でき、武器と我らの仲間を得ることができます」
篤子が尋ねた。
「引きあげていく討伐軍だって、それなりに強いだろ。勝てるのか?」
「彼らは引きあげるときどういう道をたどると思います?」
チョーハが答えた。
「そりゃあ、森から流れ出る川に沿って……ああ、そうか!」
「そうです。よく思い出しました。高低差も武器だと言いましたよね。北西の尾根から、引きあげていく連中に石を転がし落とすのです」
篤子がさらに尋ねた。
「街を占領できるのか?」
「夜襲がいいでしょうね。こちらが圧倒的に有利です」
「なぜ?」
「タケが闇でも見える魔法の眼鏡を持ってるからです」
「ええっ?!」
篤子とチョーハがびっくりして俺を見てる。俺もびっくりしている。
「タケ、後ろにある黒い塊をよく見てください」
チョーハがダンジョンで拾ってきたというガラクタの一つだ。表面はかなり傷んでいる。合わせ目があることからすると、中に何か入っている。合わせ目の周囲を探っていくと、ちょっと飛び出した部分がある。ぐっと力を入れて押すと、かぱっと開いた。
中には緩衝材に包まれた、ちょっとごつい眼鏡のようなものが入っている。
物を見てチョーハが言った。
「ああ、この変な眼鏡みたいなのは、もうひとつある。だが、のぞいても薄暗く見えるだけだぞ」
カネが楽しそうに俺に尋ねた。
「タケには分かるかなぁ?」
「……暗視装置」
「ビンゴゥ!」
俺は手に取ってのぞいてみた。
「でも、これ、壊れているんじゃないの?何も見えないぞ」
「どうしたんだい、タケ?優秀な理系エリートらしくない発言だよ」
カネが画面の中でニヤニヤしている。まったく、こいつは……
「原理を考えればすぐわかるんじゃないかな?」
原理?暗視装置はわずかな光をセンサーで捕らえて増幅して画像にする……増幅?もしかして……
俺は眼鏡のような本体をひっくり返して見ていった。スイッチらしいものがある。その隣にはラバーキャップのようなところがある。外すと穴がある。充電用のソケット部だ。入っていたケースの緩衝材の底にケーブルもある。俺がケーブルを手にするとカネが言った。
「チャージャーもある。ケーブルもある。ついてるね」
篤子とチョーハはぽかんとしている。
「アコ、チョーハ。タケは魔法を思い出したようです。おめでとう!」
カネが続けた。
「魔法をもう一つ用意しましょう、ねえ、タケ」
今度は、何をさせるつもりなのか……
「エルフは遠く離れていてもお互いに話ができるんですよね、チョーハ」
「わしは、そう聞いているが……」
「タケ、リュックの中にスマホが入っているんじゃないかい?」
スマホは持ってる。ただ、この世界では話す相手はいないから、リュックに押し込んだままだった。正直いうと忘れてた。ヘッドセットもある。
「タケには分かるよね」
「トランシーバー機能……」
「ちょっと試してみようか?スマホは使えるかな?」
スマホを起こしてみる。バッテリーは15%程度だ。カネが続ける。
「アプリはインストール済みだろ。起動してみて」
スマホ画面にカネが現れた。パソコン画面は分割されて、カネと俺が映っている。毎度のことながら、画面に映った自分を見ると、なんだか情けない感じにがっかりする。
チョーハはびっくりしているが、篤子は口に手を当てて眉間にしわを立てて考えている。篤子が低い声を出した。
「おい、カネ、タケ」
俺はカネと一緒に呼ばれてしまった。
「お前らがやっていることは、魔法じゃないよな?」
カネが答える。
「おや、アコはいつも私の予想を上回りますね」
「そういうヤツは見たことがある。サンダーバードの中に出てきた技術じゃないのか?」
サンダーバード?聞いたことはあるような、ないような……
「おお素晴らしい!見てましたか、あれを」
カネは大喜びだ。
「あの人形劇の中では、腕時計みたいな通信装置で、顔を映して話していた。タケが俺より50年の未来の奴なら、実現してても不思議はない。科学技術の応用だな?」
「大正解です。是非、詳しくお話をしたいのですが、今はそのタイミングではないですよねえ?」
篤子は、ぐっと言葉を呑み込んでから、答えた。
「そうだな」
「では、ちょっと詳しく作戦計画を説明しましょう」
悲しいが、森に火を放ちオークを迎え撃つと決まった
そのうえで、逆襲し、街を占領する!?




