序章:宇宙の均衡、その破綻の兆し
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遥か高次元の存在、その名も「万物の理」。
それは、宇宙に存在するあらゆる事象の根源であり、生命の誕生から銀河の巡り、素粒子の振動に至るまで、森羅万象の摂理を司る絶対的な概念だった。ロゴスは感情を持たない。ただ、宇宙全体の「調和」と「均衡」が保たれているかを、永劫の時の中で監視し続けていた。
そして今、そのロゴスが、ひとつの存在の「歪み」を検知していた。
それは、青く輝く第三惑星、地球。
この星に生を受けた存在、人類。神々によって生み出された人類は、本来、宇宙の摂理の一部として、与えられた「自由意志」を享受し、発展するはずだった。
しかし、彼らはあまりにも速く、あまりにも傲慢に進化しすぎた。物質文明は地球の資源を貪り、精神文明は自己中心的欲望を肥大させた。神々の存在を忘れ去り、自らを世界の中心と錯覚するに至った。
人類が排出した概念的な「澱」は、地球という惑星のオーラを濁らせ、やがて宇宙全体の「調和」にまで微細な亀裂を生じさせていた。ロゴスは、その亀裂の拡大を看過できなかった。
「人類は、その存在をもって、宇宙の均衡を乱している。」
ロゴスから発せられたこの絶対的な断定は、瞬く間に高次元の領域に存在する「神々の最高評議会」へと伝達された。議場に集うのは、各々の宇宙の法則や概念を司る、根源的な神々。彼らは感情を露わにすることは稀だが、この時ばかりは、重苦しい沈黙が議場を支配した。
議論は尽くされた。人類の滅亡か、それとも救済か。
しかし、ロゴスの意志は絶対であり、均衡を崩した存在は「無」へと回帰させるのが宇宙の摂理だった。
だが、評議会の一角から、静かな声が響いた。 「最後の機会を、与えるべきだ。」 その声は、宇宙の因果律の象徴、業の神カルマだった。
「人類は、その自由意志によって、我々の想像を超える創造と破壊を為してきた。彼らの存在が宇宙の均衡を乱したのならば、その『存在価値』を、彼ら自身に証明させるべきではないか。」
カルマの提案は、神々にとって異例のものであった。
しかし、ロゴスの裁定は既に下されている。その裁定を覆すには、人類が自らの「価値」を、神々を納得させる形で示さなければならない。
こうして決定されたのが、「最終審判」であった。 神々の代表と、人類の代表が、一対一の決闘を行う。それは肉体のぶつかり合いではない。魂の領域で繰り広げられる、「存在意義」を賭けた真の戦い。勝者は自らの信じる「理」を宇宙に刻み、敗者はその存在を、記憶も記録も魂の痕跡も残さず、永遠の「無」へと帰す。
この審判の様子は、全宇宙に中継されることとなった。それは人類への最後の警告であり、宇宙の調和を保つための、壮大な儀式だった────────
はじめまして ❁
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