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【第九話】ターバンエルフ

『#ɣɹʍʔζЄλъẼ†※』

『†※ʍʔζЄ#ɣɹʍʔ』

『ɹʍʔζЄζЄλъẼ†』

「おい、おい、コイツさっきからなにを喚き散らしてるんだ?」

「う〜ん、普通の異世界語とも違うようだし、さっぱりだねぇ」

 

美奈ちゃんから一本背負で投げ飛ばされて、一時、気を失っていたターバンエルフは意識を取り戻してからというもの、ずっと喚き散らしていた。

 

「じゃぁ、念話で話しかけたらどうだろう?」

「ああ、そうだな、通じるかどうかはわかんないけど、やってみるかぁ」

《あ〜ちょっといいか、そこのターバンエルフくん…》

 

僕たちを代表してヒロシくんがターバンエルフに話しかけてみる。

するとターバンエルフはビックリしたのか、目を見開いてヒロシくんを見つめている。

元が美形なだけに、目を剥いている顔はなんだか怖い…

 

《えっとぉ、すまないが、その顔やめてくんねぇかな、ちょっと怖い…》

ヒロシくんも僕と同じことを思ったようで、ターバンエルフにその顔をやめるようにお願いをする。

 

《これいつは驚いたなぁ、下等生物がこの高貴な私に念話で語りかけて来たぞ…》

ターバンエルフはヒロシくんを無視して、自分の感想を語りだす。

 

《え〜っと、みんな…、ちょっとコイツ殴っていい?》

《ちょっとダメよ! なに言ってるのヒロシ先輩! 暴力はいけないわっ》

《ほうっ? 同じ下等生物でもそのメス、不細工な割には、教養があるようだな…》

 

ポカッ!

《イダッ! 痛っっぅぅぅっ!》

 

《おい、おい、美奈、暴力はいけないって、おまえ今言ったばかりだよなぁ?》

《違うわよ!これは暴力ではないわっ、教育よっ! 私は教育者だから問題ないわ!》

美奈ちゃんの理不尽なゲンコツに、ターバンエルフは痛みで悶え苦しみ、ヒロシくんはオマエはいいのかよっ! とばかりに抗議の声をあげる。

「ちょっと、ちょっと、壱剛、仁業、藤谷先生って、いつもあんなで怖い人なの?」

「いやぁ〜そりゃぁ怒らせると怖いけど、怒らせなければ平気だぞ」

「なるほど、覚えておくわ!」

《…そのお声はっ、女神様? ああっやっぱり! 女神様お迎えに参りましたぞ、ささっ、私と一緒に参りましょう! オイっそこのメスの下等生物! 私の拘束をさっさと解くのだ!》

 

ポカッ!

《イダッ!痛っっぅぅぅっ!》

 

あれほど痛い目にあったというのに、全く態度を変えないターバンエルフに、美奈ちゃんの二発目の教育が飛んでくる。

やっぱりこのターバンエルフ、どうやら姫姫ちゃんの素性を知っているようだ。もっとこのターバンエルフから話を聞き出したいところだが、素直に話してくれる様子が微塵も見当たらない…。どうしたものか…。

 

ピリリリリッ、ピリリリリッ……

「おっ塩谷からだ…ちょっと電話に出るから、大谷、美奈、ターバンエルフのこと頼んだたぞ」

ピリリリ…ピッ

「どうした? 塩谷、なんかあったのか?………………ちょっ、ちょっと落ち着けっ、なに言ってんのか、わかんねぇよ!……………………………えっ?……ピロッシが?……………わかった。とにかくオマエは俺たちがそっちに行くまで、そこにいてくれるか?……………ああ、こっちもちょっと厄介ごとがあってな、今すぐは難しいけど、出来るだけ早く向かうから……………ああ、頼んだぞ!」

 

「ヒロシちゃん、塩谷先生になにかあったの? それに今、ピロちゃんのこと話してなかった?」

「ああ…、オマエらも頼むから落ち着いて聞いてくれよ、塩谷が言うにはピロッシが誘拐されたらしいんだ」

「えっ! ピロッシが? 誘拐………?」

「一大事じゃない! 今すぐになんとかしなきゃ!」

「そうだぜっ! ヒロシ! なにをのんびりしてんだよ!」

「だから、オマエたちちょっと落ち着けって…俺だってすぐにでも塩谷のところに飛んで行きたいけど、このターバンエルフどうすんだ? どうやらコイツ女神ちゃんの素性も知っているようだし、そこのゲートもこのままほっとくわけにはいかないだろう?……って、あれっ?ゲートが無くなってるぞ!」

「フハハハハッ!今頃気づいたか、この愚かな下等生物めっ!」

「ターバン! オマエか? オマエ日本語喋れるのか? それに、どうやってゲートを消滅させた? 直接触れなければゲートは消せないだろぅ?」

「バカめっ! 私ぐらいに高貴な存在になると、この程度の距離ぐらいなら離れてても、消滅させることなど造作もないのだよ!」

「クソっ! あとでゲートの出現先を確かめようと思っていたのに…てか、大谷オマエ、なんでさっきから黙りこんでんだよ?」

「ヒロシ、オマエこそちょっと落ち着け、らしくねぇぞ…」

「っ………すっすまん…」

「いいか? ひとつずつ問題を片付けていこう、まずこのターバンエルフは塩谷のところまで、一緒に連れていこう」

「大丈夫か? コイツ魔術を使えるんだぞ、どんな攻撃魔術を隠してるかも、わかんねぇし…」

「大丈夫だ、コイツは攻撃魔術は使えないはずだ…」

「なぜわかる…?」

「コイツの魔素の流れを読んだ、コイツは魔素の蓄積量自体はかなりのものだが、攻撃魔術を今まで使った形跡がまるで見当たらない…。ってことはコイツは攻撃魔術を覚えていないか、もしくは使えないかだ…おっと! ターバン、オマエ今急激に心拍数が上がったな? てぇことは、俺が言ったことは図星のようだな」

「クッ…………」

「なるほど、大谷、オマエの言うことは本当らしいな、で、その先はどうする?」

「まぁ慌てるな、次に消えちまったゲートの出現先の件だが、おおよその場所は掴めた…」

「えっ? そうなのか?」

「ああ、掴めた…。だけど、その出現先だが、どうやら地球でも異世界でもないようなんだ、てぇことは、状況から考えて、恐らく姫姫ちゃんがいた宇宙だと思う…」

「えっ! わっ私が生まれた宇宙からターバンはやって来たの?」

「ああ、またターバンの心拍数が跳ね上がったからな、間違い無いだろう……で、ここからは俺の勘だが、このターバンはピロッシの誘拐もしくは今異世界で頻発している幼児誘拐事件になんらかの関係があるんじゃ無いかと思っているんだ…」

「フ〜っ…大谷、オマエおかげで、だいぶ頭が冷えて来たぜ…なるほど、オマエの考えがわかって来た、まずは塩谷のところまでターバンを連れて行って、ピロッシの誘拐現場もコイツに見せるんだな」

「そうだ、それで俺はその時のコイツの反応を見てみようと思う…」

「わかった、オマエの言う通りにしよう、で、そのあとは?」

「そうだな、その実況見分が終われば、ターバンは帝城まで連行して、そこに応援で来ている日本警察と皇帝陛下に突き出そうと思っている」

「なるほど、日本警察の科学力と陛下のおっちゃんの魔術でコイツの知っていること、全て吐かせるんだな?」

「そうだ」

「よしっ! じゃあ、オマエたちも大谷の話を聞いてたよな?」

「「「「うん」」」」

「それじゃ、美奈、オマエはそこの小学生トリオを施設と道場まで送り届けてくれないか? そんで、その後、申し訳ないが帝城まで来て、俺たちを待ってて欲しいんだが…」

「ええっ、いいわ、でも状況を半分も理解できてないから、後で聞かせてよ?」

「ちょっと待ったー! ヒロシ、俺たちもオマエたちについていくぞ!」

「ああ、そうだね! ピロッシの危機だと言うのに、じっとなんかしてられないよ!」

「あ〜……オマエたちならそう言うだろうと思ってたけど…、だがダメだ! 危険すぎる!」

「え〜と、ヒロシちゃん、ちょっといいかしら?」

「なんだ女神ちゃん?」

「私も壱剛、仁業は連れて行くべきだと思うわ、もちろん私も連れて行きなさい」

「どうしてそなるんだよっ?」

「私はね、今の今までヒロシちゃんが話してくれた、異世界の日本侵攻を食い止めた時点で『生き物たちの破滅』は回避できたと思ってたけど、どうやら『生き物たちの破滅』はまだ終わって無いと思い直したの…」

「……『生き物たちの破滅』が終わってない?」

「そうよ、私が生まれた宇宙の話が出たところで確信したわ…まだ『生き物たちの破滅』は終わって無いってね…。だからなの、だからこそ〈始原の理〉のカケラを持つあんたたち15人は離れ離れになるべきじゃ無いの! それに私はこれでも神よ、〈始原の理〉のこともこの中で一番よく知っているわ、必ず役に立つ時がくるわ!」

「………………う〜ん!どうしたらいいんだぁ?」

「いいんじゃねぇヒロシ、連れていこう!」

「うん! なんだかよく分かんないけど、私も連れて行ったほうがいいいと思うの! 私の心がそう言っている! 姫姫ちゃんを連れ出したこと、施設の先生方には、後で私が目一杯叱られるからっ!」

「それなら大丈夫よ、先生」

「えっどうして?」

「だって私、今も施設にいることになっているから…」

「ああっ! クーデターの件で施設のみんなに暗示をかけて来たんだね?」

「ピンポ〜ン! そうよ仁業!」

「ヒロシ、そういうことだっ! 俺たちも後で爺ちゃんに、ちゃんと連絡入れておくから、なぁ! いいだろ?」

「だったら今、連絡入れろ! 爺さんがダメって言ったらダメだぞっ!」

「わかった! ちょっと待ってて、今電話をかけるから…えっとお爺ちゃんっと」

 

ピッ、プルルルルル…プルルルルル…

 

「ちょっと待て、初めは俺から話す、変わってくれ…………あっ久保坂の爺さんか? 俺だ、ヒロシだ…………ああ、壱剛と仁業ならすぐそばにいて元気だよ…………で、だ、その〜言いにくいんだが、実を言うと今、この宇宙の全ての生き物たちが危険な状態にあってな……………んっ? そうだ! その通りなんだよ!……………えっ? いいのか!…………わかった今変わる……ほれっ爺さんがオマエたちと話したいんだってさ」

「もしもし、爺ちゃん? 俺だ壱剛だよ……………うん!わかった頑張るよ! 誓いも必ず守るよ!…………うん、ちょっと待ってて。ほら仁業」

「もしもしっ仁業だよ!………………うん!…………うん!大丈夫!この宇宙を必ず守るよ!………………うんっ! 必ず元気に帰ってくるから安心してて!…………うん! じゃあっ行って来ます!」

「……お爺ちゃんなんて言ってたの?」

「ああ、爺さんが言うには、そこの双子が生まれる前の夜、女神が枕元に現れてな、『生き物たちの破滅』のことを爺さんに話したらしいんだ…」

「そんでな、女神様はいつか訪れる『生き物たちの破滅』が来た時は、破滅回避のために、俺たち双子の兄弟をその戦いに向かわせて欲しいって頼まれたらしんだ…」

「ああ、僕たちが行かないと、その戦いがかなり不利になるって言われたらしくてね…お爺ちゃんは、いつか、この日が来るだろうと、ずっと覚悟していたらしいんだ…」

「そう…、お爺さん誰にも言わずに、今までずっと耐えて来てたのね…」

「うん、でもお爺ちゃん、こんなことも言っていたよ! 久保坂流の神髄〈不死〉の教えに誓いをたてた者は、今までに誰ひとり戦死したことがないって!」

「そうか…それじゃオマエたちは、道場を出る前にその誓いをたてて来たんだな?」

「「うんっ!」」

「そうか! それじゃ大丈夫だな! でも、絶対に気を抜くなよ! 今からは、俺たち大人の側から絶対離れないこと! 女神ちゃんもだぞっ! いいなっ?」

「「「了解!」」」

「よしっ! こうなったら俺も腹を括ろう! じゃっ最後にこのターバンをどうやって連れ回すかだな…」

「それならさっき、俺がカッチに頼んでおいたぞ」

「んんっ大谷? いったいなにをカッチに頼んだんだ?」

「ターバンの両腕にガッチリロープを結んで、それをカッチに繋ぐんだ」

「ほうっ! なるほど、カッチの重量級なら、ターバンぐらいのガリガリ君くらい、楽に制御可能だもんな!」

「あっ、それならいいもんがあるぞっ! ちょっと待っててな…え〜と『出よ! 拘束のロープ』」

「おっ! おおっ? 壱剛! そのロープ、どこから出した?」

「へっへ〜ん! 皇帝陛下から頂いた、無限巾着袋からだぜっ!」

「無限巾着袋ぉ?」

「おっと説明は後だ、今は急ぐだろ?」

「ああ、そうだな! よしっそのロープを俺によこせ……。よしっ出来たぞ!」

壱剛がヒロシ君に拘束のロープを渡すと、一瞬でカッチに繋がれたターバンが出来上がる。

「はっやっ! どうやったか、まるで見えなかった」

「ハハッ! 俺の得意技のひとつだからな、じゃっ準備は整ったが、なにか見落としはないか?」

「ああっ大丈夫だ!」

「私たちも、問題ないよね?」

「「「うんっ!」」」

 

ヒロシくんはみんなに確認すると、その場でゲートを出現させる。

あれだけ、息巻いていたターバンも美奈ちゃんがそばにいるので、すっかりおとなしくなっている。

待っててねピロッシっ、僕たちがすぐに助け出してあげるからねっ!

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