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【第十五話】残念な高貴なお方

〈あー、あー、ただいまマイクのテスト中、ただいまマイクのテスト中……〉

「なっなんだ? どこからか念話が聞こえてくるぞ…」

 

〈A地区、ちゃんと聞こえてる?…………あっそう、ちゃんと聞こえてるのね…………あっそう、E地区までちゃんと聞こえてるのね、わかったわ〉

「いったいなんなのかしら…? 念話の放送?」

 

〈異世界帝城から来た、子どもたち、聞こえるかしら? 聞こえたなら、念話で返事をなさい…異世界から来たぐらいだから、念話ぐらい使えるでしょ?……………あらっ返事がないわねぇ…えっ?………………それもそうね〉

「え〜と、こいつらいったい何がしたいんだ?」

〈もう一度言うわよ、異世界帝城から来た子どもたち、聞こえているのでしょ? 返事をなさい、さもなくばゴブリンの子どもが、ひとり死ぬことになるわよ?…〉

「なんだってぇ! どっどうしよう!」

「落ち着け、壱剛、とりあえず返事をするしかないだろ」

 

〈これが最後の忠告よ、返事がないと本当にゴブリンの子どもが死ぬことになるわ〉

〈ちょっちょっと待てくれっ! ちゃんと返事をしただろ? ゴブリンたちには手を出さないでくれ!〉

〈なにっ? このものの言いよう、高貴なものに対しての言葉遣いがなってないわね、気に入らないわ! 見せしめに…〉

〈申し訳ございません! 少し待っていただけますでしょうかっ!〉

〈あら、今度の子どもは、さっきよりはマシなようね…まぁいいわ、とりあえずゴブリンは殺さないおいてあげるわ…〉

〈ありがとうございますっ! それで高貴なお方、僕たちになんのご用でしょうか?〉

〈そうね、答えてあげるわ、今、あなた達のそばに[終わり]の女神がおわすでしょ? あなた達は今から、私が指定した場所まで女神をお連れするのよ、いい? 必ず三人でくるのよ? もしも言う通りにしないと…わかってるわね?〉

〈はいっ、わかりました! 必ず三人でまいりますっ〉

〈フフフッ、さっきのバカな子どもと違って、あなたは下等生物の割には賢いようね、いいわ、それじゃ指定の場所を教えるわ、あなた達がこの惑星に来た時、すぐに一本道があったでしょ? それでその一本道を登り切ったところに、広場があったのを覚えているわね?〉

〈はい! 覚えております〉

〈その広場の真ん中まで来て、女神と一緒に立ってなさい、いい真ん中よ? それ以外の場所は認めないわ〉

〈はい! 承知いたしましたっ、それでその、高貴なお方にお聞きしたいことがございます!〉

〈あら、下等な生物が私になにを聞きたいのかしら?〉

〈あのぉ、僕たちが高貴なお方のお約束を守った場合、高貴なお方もゴブリンたちには決して手を出さないよう、お願いできないかと思いまして〉

〈あら、下等生物のクセに、私の取引を持ちかけるのね、まぁいいわ、少しだけあなたを気に入ったから、あなた達が約束を守れば、私もゴブリンたちには決して危害を加えないと約束してあげるわ〉

〈ありがとうございます! 高貴なお方の寛容なご厚情、心より感謝申し上げます!〉

〈フフフッ、よろしい…それでは今から30分後までに、その場所にくるのよ? いいかしら?〉

〈お待ちください! 高貴なお方!〉

〈なにっ? なんなの? 私の言うことが聞けないとでもいうのかしら?〉

〈申し訳ございません! 実は女神様は今、お御足を少々痛められておりまして、そんなに早くは歩くことができない状況なのです! 僕たちがおぶっていくことも考えましたが、なにせ僕たちは汚れた身、女神様に直接ふれることなど、畏れ多いものですから…〉

〈ふむっ、あなたの言うことももっともね、あなた達みたいな下等な生き物に女神を汚されたとなれば、私も叱られるかもしれないわね…わかったわ、それじゃどれぐらい時間があれば、その場所に来られるのかしら?〉

〈おそらく、休み休みの道程となると思われます。ですので2時間は頂きたいと考えます!〉

〈2時間……女神は万全のお姿でお迎えするように言われているし……致し方ないわね……いいわ、きっちり2時間後までにお連れしなさい、さもなくば罪のないゴブリン達が、何十体もの死体に変わると思いなさい、いいわねっ?〉

〈はい! 肝に銘じます!〉

 

「「「「……………………」」」」

「ふ〜! どうやら念話通信、終わったようだね」

「すまない、仁業、俺のせいで危ないところだったよ、助かった!」

「いや、いいんだよ! だってずっと前に、今の状況と真逆なことがあったじゃない? その時は壱剛が助けてくれたじゃん! お互い様だよ!」

「ウフフッいいわね! あんたたち」

「それにしても、仁業! よく機転が効いたな! おかげで2時間も時間が稼げた、上出来だっ!」

「フフフッ大吾くんに褒められるとなんだか照れるね、でもその2時間の間に救援が間に合えばいいんだけど…」

「そうね…万が一のことを考えて、作戦を練るべきね…」

「さっきの念話でわかったことをおさらいしてみようか、まず、敵さんはこちらの人員は壱剛と仁業そして姫姫ちゃんの三人しかいないと思い込んでいるようだな」

「うん、大吾くんがいることにはまだ気づいていないみたいだね」

「それから、俺たちが連れ去られたゴブリンの子どもたちを、助けようとしているのに気づかれてるな。どこで気づかれたのかは分からないけどな」

「ああ、それなら戦闘のあった場所の痕跡からだろうな」

「痕跡?」

「ああ、オマエたちは戦闘の経験が少ないから分からないのも無理はないが、実際の戦闘というのは、極端に言えば、お互いに生きるか死ぬかのその二択だけだ、なのに、今回の戦闘が行われた場所には、死体はおろか血の一滴も落ちていなかった」

「なるほど、その痕跡で、こちら側にはゴブリンを傷つけるつもりがサラサラないってことに気づかれたワケなんだね?」

「ああ、それから、こちら側の圧倒的な戦力にも気づいたんだろう、血の一滴も落とさずに敵を無力化するなんて、よほどの戦力差がない限り不可能だからな」

「だから敵は、作戦を変えてゴブリンたちを人質にすることにしたと…」

「そういうことだ、敵さんにもそれなりに知恵の回るヤツがいるってことだな」

「じゃあ、次にわかったことだけど、敵は姫姫ちゃんの素性も分かってて、どうしても姫姫ちゃんを無傷のまま手に入れたいと、考えているってことだね」

「ああ、どういった経緯で姫姫のことを知ったのかは分からねぇけど、あの様子からみて、姫姫はヤツらにとって、とても大事な存在らしいな」

「それじゃぁ、こっちも私を人質に取る作戦を取ったらいいんじゃないの?」

「その作戦はあまり通用しないと思うぞ」

「なんで?」

「双子の兄弟はたったふたりで、なにが待ち構えているかも分からないこちらの世界まで、危険も顧みず、姫姫ちゃんを救出にやって来たんだろ? そのことは敵方にも知られているはずだし、なによりも、さっきの念話通信では、あちらがゴブリンを人質に取った時に、こちらは姫姫ちゃんを人質にとらなかったからな」

「ごめんよ、そこまで気が回らなかったよ…」

「いや、仁業、オマエの判断は正しかったと思うぞ」

「そうなの?」

「ああ、オマエがあの時、姫姫ちゃんを人質に取るようなことをすれば、敵はもっと非情で強硬な手段をとっていたかもしれないからな」

「どういうこと?」

「もしも、こちら側が姫姫ちゃんを人質に取るような状態なら、それは姫姫ちゃんの身が、いつどうなるかも分からない、危うい状況ってことになるだろ」

「うん、なるほど! そうなれば、敵は焦ってなりふり構わず、あらゆる手を使って来たでしょうね! それこそゴブリンたちの命なんてどうでもいいって感じでね」

「そうだな、こちらには姫姫ちゃんを害する気がサラサラないと分かっていたからこそ、2時間もの時間を許してくれたんだと思うぞ」

「そうかぁ…それを聞いて安心したよ」

「じゃあ、それを踏まえて、これからどうするかだよなぁ…」

「うーん、少々賭けの要素が濃くなるが…」

「なにか作戦があるのね! 大吾ちゃん」

「ちょっと迷っているところもあるが、あるにはある、聞いてみてくれるか?」

「「「うんっ!」」」

「さっきの念話通信で、敵は広場の中央にいるよう念を押して来ただろ?」

「うん」

「それが、なにを意味するかというと、敵は間違いなくオマエたちふたりを警戒しているんだ。だからこそ広場の中央に立たせて、その周りを味方でぐるっと囲んでしまってオマエたちふたりを押さえ込もうとしている。それはわかるよな?」

「うん、そうだな、それしか考えつかねぇな」

「ただ、敵のこの作戦にはもうひとつの意図があると思うんだ」

「もうひとつの意図? それはなに?」

「オマエたちふたりの勧誘だ」

「えっ? 僕たちふたりを味方にしようとしてくるの?」

「そうだ、オマエたちは強い、なにせ姫姫ちゃんを攫おうとした手練れを倒し、ゴブリンの弓隊も無傷で制圧している。そして、姫姫ちゃんをなによりも大切にしている、その部分は敵にとっても利害が一致していることになるよな?」

「うん、確かに! でも姫姫を攫おうとした奴は手練れではなかったぞ?」

「そうだね、あまりにも弱いんで、下っ端の人かと思ったもん」

「ハハハッ! それはエルフたちのレベルが低すぎたのか、オマエたちのレベルが高すぎたかの、どっちかだろうな。よく考えてみろよ、喉から手が出るほど手に入れたい女神を攫ってくるのに、下っ端なんか送り込んでくるワケないだろ?」

「そうね、私なら下っ端を使うなんてあり得ないわ」

「自軍の誰よりも強くて、姫姫ちゃんを誰からも奪われないように、守ってくれる存在のオマエたちを味方に引き込みたいって考えるのは、ごく自然なことだと思わないか?」

「うんっ、そうだねそう思うよ、それで?」

「ああ、それを踏まえて、敵はいきなりオマエたちを攻撃してくることなく、まずはオマエたちを味方に引き入れる話しをしてくるだろうと考えている。ちょっと賭けの要素が濃くなるがな」

「わかった! そこで、僕たちは味方になることを了承して、敵の内部に潜り込ませようと考えているんだね?」

「ああ、それは俺が考えていた二択の内のひとつだな。だが、やっぱり却下だな、経験のないオマエたちに任せるのは危険すぎる」

「じゃあ、もうひとつ案があるのね?」

「ああ、もうひとつは、俺がオマエたちの誰かの巾着袋に忍び込んでおく作戦だな」

「ほうっ、それも面白そうだな!」

「その作戦だが、ふたパターンあってだな、敵がいきなりオマエたちを攻撃して来た場合は、すぐに俺を呼び出して、俺は応戦に加わりオマエたちを守るパターン。もうひとつは、敵がオマエたちに話し合いを申し出てくれば、オマエたちは俺を敵陣の後方に出現させて、俺は敵に気づかれないように司令官を制圧するパターンだな」

「う〜ん、僕的には後々の戦況を有利にする、潜入作戦がいいと思うのだけど…、だって無限巾着袋の中に、超高性能の小型無線機だってあるんだよ、それを有効活用しない手はないんじゃない?」

「ダメよ! 仁業! あんた潜入作戦を舐めすぎだわ! スパイ映画をみたことないの? 潜入作戦ってね、それこそ過酷な訓練を潜り抜けることのできる、ほんの一握りの人にしか任せられないのよ!」

「ここは俺も姫姫に賛成だな、考えてみろよ、経験のない俺たちが、もしも敵にスパイだとバレたとしたら、それこそオマエの言う戦況が有利になるどころか、最悪の状態にまで落ちることになるんだぞ」

「えぇぇ〜ダメェ?」

「ああ、ダメだな!」

「ウフフフフッ! あんたたち面白いわね、普段の行動からして、こんな無茶なこと言い出すのは壱剛の方だと思うのだけども、意外に無茶を言い出すのは仁業のほうなのね!」

「ああ、よく言われるよ、それ…」

「ハハハハッ!それじゃ俺の案は以上だが、他に案があれば、言ってみてくれ、まだ時間には余裕がある、いろいろ検討してみよう!」

「「「うんっ!」」」

こうして、俺たちは、お互いに案を出し合ったのだが、結局、一番はじめにでた、大吾の案を採用することとして、約束の広場まで向かうことにした…。

 

そして今、俺たち三人は約束した広場のど真ん中で、敵が来るのを待っている…。

 

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……

「どうやら敵さんのお出ましのようだな…」

「うん、なんだか緊張するね…」

「でも、焦っちゃダメよ、落ち着いて行動するのよ」

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ!

 

「どうやら、大吾くんの予想通りになったみたいだね」

「ああ、これだけの弓兵に囲まれたら、流石に手も足も出ねぇなぁ…」

「みてっ!あそこにひとり、派手な服着た女の人がいるわ、多分、念話通信で話しをした人じゃない?」

 

〈オ〜ホッホッホッ! あなたたち、私の言いつけ通りに来てくれたのね、褒めて遣わすわ! オ〜ホッホッホッ!〉

 

「なぁ、実際会ってみたら、あの女、ターバンに似て、残念臭が漂ってないか?」

「ええっ、ここまで臭ってくるわね…」

 

〈さぁ〜て、私も忙しい身、早速お話しに入るのだけど、私と話した、下等生物の割に賢い子はどちらかしら?〉

〈はいっ!僕です!〉

〈ふむっ、やはりあなたなのね、下等な生物にしては、まぁ見れるお顔ね、よしっわかったわ! あなたたち、私の配下におなりなさい!〉

 

「よしっ来たわ、壱剛、大吾ちゃんを敵の後方に出現させてっ」

「わかった」

 

〈こっこんな下賤な身の僕たちを、高貴なお方は、配下に加えると、仰るのでしょうか?〉

〈オ〜ホッホッホッ! そうよ! あなたは自分の身の程をわきまえているのね? ますます気に入ったわ! あなたに免じて、そちらの教養の無い方の子の無礼は不問にしてあげるわ! その代わり、あなたがちゃんとその子を教育するのよ!〉

〈はいっ! ありがとうございます! ですが、恐れながら申し上げます、私に高貴なお方へのご質問をお許しいただきたいのですが?〉

〈質問? なにかしら? いいわ、今、私は気分がいいの! 申してごらんなさい〉

〈ありがとうございます! 先ほど、高貴なお方は、僕たちを配下に加えてくださると仰いましたが、それになんの不服はないのですが、なぜ、こんな僕たちを配下に加えてくださるのか理由をお聞かせ願えないでしょうか〉

〈なるほど、そうね! 私のような高貴なものには、あなたたちが自分は相応しくないと思うのも当然よね! いいわ、答えてあげる、もうすぐあなた達が来た異世界と地球は終わりになるの、だから私はあなた達を救ってやろうとしているのよ〉

 

「ねぇ、なんで大吾ちゃんは動かないの?」

「ああ、多分あの残念女の話しを最後まで聞こうとしてるんじゃないのか?」

「なるほどね、捕まえた後じゃ口を割りそうにないもんね、あの女」

 

〈そっ! その話は誠でございましょうかっ!〉

〈ええ、あなたが驚くのも無理わないわね、でもこれは事実よ!〉

〈でっでは恐れながらお聞きします! 異世界と地球はどのようにして、終わりになるのでしょう? 異世界を捨てるとは言え、生まれ育った故郷でございます、最後はどうなるのかお聞きしたいと存じます!〉

 

「ねぇ、仁業の演技、凄くないっ? 鬼気迫るものがあるわっ」

「ああ、そうだな、おまけに皇帝陛下のお言葉、パクってるし」

 

〈あなたの気持ちはわかるわ、でもね、これは重要機密なの、聞かせることはできないわ…、そうねこれだけなら教えてあげるわ、そこにおわす[終わり]の女神、そのお力をお借りして異世界と地球を終わらせるのよ、だから、あなた達には女神の護衛の任についてもらおうと考えているわ、この任務はとて……〉

ウオンッ! ウオンッ! ウオンッ! ウォーーーーーーーン!!!

 

〈なっなに? なんの音なの!?〉

「おっ! この音はっ!」

「ようやく、やって来たようね!」

 

〈一本道から聞こえてくるわ! 近衛兵長! あなた、兵を数名連れて、ちょっと様子を見て来なさい!〉

〈はっ! 承知しました!〉

残念女から命じられた、近衛兵長と3名の兵士は、一本道に向かって走りだす。

 

タッタッタッタッタッタッ…バタッ、バタバタッバタッ…

元気よく飛び出した4人だったが、走っている最中でいきなり倒れていく。

〈どっどうしたのっ? 早く起きなさい!〉

 

ウオッン!ウオッン!ウオッン!

〈キャッ! なにか飛び出して来たわ! バッバイク? ゴブリン達! 攻撃よ! 今、飛び出して来たバイクを攻撃するのよっ!〉

叫ぶ残念女、だか時すでに遅し…

 

バタッバタッバタッバタッバタッバタッバタッバタッバタッバタッバタッバタッ…

バイクに矢を射かける前に、次々と倒れていくゴブリン達

 

「残念、ちょっと手遅れだったな」

〈ひっひぃぃぃ! 熊っ?〉

トンッ

〈あっ…〉

「おっとぉ、危ねぇ、いくら敵でも一応、女の子だからな」

残念女の後頭部に手刀を打ち込み、大吾も捕獲に成功する。

 

ドッドッドッドッドッドッドッ…

「遅くなってすまねぇ! オマエ達大丈夫かっ!」

「ありがとう! ヨコくん! 僕たちは大丈夫だよ!」

「ああっかすり傷ひとつ負ってねぇよ!」

「でも、凄かったわねぇ! これが三ちゃん達の『もの凄い殺気』なのね!」

「ああ、そうだけど…、今倒れているゴブリン達って攫われて来た子たちなんじゃないのか?」

「うん、そうだよ、この子たち強い暗示にかけられて、操られていたみたいなんだ」

「そうか、こんな幼いゴブリン達に俺たちの殺気をぶつけさせるなんて、今度の敵はぜってぇ許せねぇな!」

「ああっその通りだ」

「「「だっ大吾ぉ?」」」

「なんで、ここにいるんだぁ?」

「青鬼のおじちゃんはどうしたっ?」

「なんで、熊の格好なんてしてんだ?」

「おい、おい、待て、待て、そう矢継ぎ早に質問されても…、その前に他のヤツらはどうした?」

「ああ、それならもうすぐここに来るはずだぜ!……ほらっ!」

「お〜い!ここだ〜! 小学生トリオはみんな無事だぞ〜ぉ!」

「みんな〜! 来てくれてありがと〜う!」

「ひい、ふう、みい…………、うん、これで15人全員揃ったようだな、でも、他の援軍はいないのか?」

「俺たちは、バイクで先陣切ってやって来たから、ちょっとわかんねぇなぁ…」

 

「あれぇ? 大吾先輩?」

「えっ? お兄ちゃん? なんでここにいるのぉ?」

「ホントだ! 大吾がいるぞ?」

「まぁ、待て待て、説明は後でするから、その前に、ここに倒れているゴブリン達と敵の捕虜達をどうにかしないとな」

「うん、そうねぇ、でもこんなにたくさんのゴブリンたちとなると…って、ちょっと! 姫姫ちゃん!なんでゴブリン達を無限巾着袋に入れてるのっ!」

「ハハハッ、サチコ、大丈夫だ!この袋の中に入っても大丈夫なんだ、俺だってさっきまで、この袋の中に入ってたんだからな」

「う〜ん、確かに、この無限巾着袋(仮)は生き物達を生きたまま入れることができるわねぇ」

「そうなのか? サキ」

「ええ、どんな状況になってもいいように、家畜たちも生きたままで、収納できるようにしてたの…、でも、今回は助かったけど、逆に考えれば、この無限巾着袋(仮)を使えば、悪いヤツらに悪用されることも考えられるわ、帰ったら、いろいろ改良する必要があるわねぇ…」

「そうだなぁ…ところで、援軍に来たのはオマエたちだけなのか?」

「そう、そうなの、それがね大吾先輩、今、私たちがいるここは、地球や異世界とは違う宇宙なのね、それで、私たちはゲートを使ってここまでやって来たんだけど、宇宙をひとつ隔ててゲートを発現するのは、とても膨大なエネルギーが必要みたいで、私たち12人が来るのでやっとだったの…」

「そうか、それじゃ、ゲートに関しては、こちらのエルフたちの方が上かもしれないな」

「えっ? どういうこと?」

「ああ、話が長くなるかもしれないから、場所を変えよう、ここから10分ほど歩いたところに、俺たちのキャンプがあるから、そこで話すよ」

「ええ、そうね、こんな広場じゃ、敵に狙い撃ちしてくれって言ってるようなものだものね、いいわ移動しましょ」

 

ようやく〈始原の理〉を持つ15人全員が揃ったぜ。

恐らく、これからが戦いの本番となるのだろう。

だけど、不思議とまったく負ける気がしないのは俺だけだろうか?

キャンプに戻った俺たちは輪になって、今まで起こったことを報告しあった。

その頃、エルフの城では大騒ぎになっていることも知らずに…………。

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