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【第十四話】双子の兄弟、大誘拐に巻き込まれる

「たっ! 大変でございますっ!」

「どうしたっ!、宰相?」

「小さき女神と双子の兄弟が、帝城のどこにもいないのですっ!」

「なっなんだとっ!」

 

その日の朝、帝城内は上へ下への大騒ぎになっていた。

なかなか、起きてこない僕たちを心配して、宰相さんが部屋まで様子を見にきてくれたのだけど、まったく返事が返ってこないことを不審に思った宰相さんは、近くにいた衛兵に命じて部屋のドアを蹴破らせて、部屋に突入するのだけど、部屋の中は空っぽ状態。

それからは、帝城にいた人たちを総動員して、城内の隅々まで、みんな必死に探し回ってくれたらしい。

結局、大谷くんが僕らの居場所を突き止めてくれたらしいのだが…

みんな心配しているだろうなとは思っていたが、これ程までに大騒動になっていたとは…本当に申し訳なく思う…。みんなごめんなさい…。

 

さて、僕たち双子の兄弟と姫姫ちゃんは帝城とは全く違う場所、姫姫ちゃんが生まれた小宇宙にある惑星にやってきていた。

「なぁ仁業…?」

「なに…? 壱剛」

「エルフってみんな、こんなに弱いのか?」

「いやぁ〜どうだろうね? でも僕が思うには、この人たちは下っ端の人だと思うよ」

「なんでだ?」

「だって、あまりにも弱すぎるもん…」

「そんなことより、ふたりとも助けにきてくれてありがとうっ! 私ひとりだったら、心細くて、心細くて、今頃大泣きしてたと思うわ」

「ハハッ、いいってことよ! それより姫姫が無事でなによりだぜ、なにせギリギリだったからなぁ」

「そうだね、間一髪だったもんね! 僕もヒヤヒヤしたよ!」

 

なぜ、僕たちがこの惑星にいるかというと、今から10分ほど前のこと……

 

コツンっ!

「イダっ!」

コツンっ!

「イってぇ〜」

「はっ? なんで俺は不殺の槍を持っているんだ?」

「へっ?…あっ僕も持っているよ、不殺の槍!」

「しっ! ちょっと静かにっ…なんだか姫姫の部屋の様子が変だぞっ!」

「………うんっなんだか、変な物音が聞こえるね! 行ってみよう!」

 

僕たち兄弟は、そっと姫姫ちゃんの部屋の前までやってくると……

 

「キャ〜!なんなのアンタたち!」

「イダッ!おっお静まりください女神様! イダッイダダッ!」

ドンッ!バーンッ

「どうした! 姫姫」

 

僕たち兄弟は、姫姫ちゃんの寝室のドアを蹴破して中へ雪崩れ込むと、ふたりの男に担がれた姫姫ちゃんが、今まさにゲートを潜り抜ける最中だった!

 

「飛び込むぞっ!」

「うんっ!」

 

こうして、間一髪ゲートの消滅前に飛び込むことに成功して、この小惑星にやってきたというワケなんだけど…。

 

「う〜ん、やっぱりヒロシみたいに上手くはできないなぁ〜」

「うん…、でもこの拘束の縄なら、僕たちみたいなヘタクソでも、ちゃんと拘束出来るはずだよ…ほらっ!」

「うん! 上出来だ! よし仁業、そこの隅っこにコイツら転がしておこうぜ」

「うん、そうだね、あそこなら安全そうだね!」

「でもアンタたち、流石はドニー師匠ちゃんのお弟子さんね〜、あっという間にこのふたりノシちゃうんだもん、驚いたわ!」

「ウ〜ン…このふたりが相手で褒められてもなぁ」

「そうだね…そんなことよりこれからどうする?」

「そうだなぁ、試しに帝城までゲートを発現させてみるか?」

「よしっ、それじゃ僕がやってみるね…………っ! ダメみたいだねぇ」

「それじゃ俺が!…………………っ! ダッダメかぁ〜!」

「……どうやらここ一帯、結界が張られているようねぇ…」

「ウ〜ン…とりあえず場所を移した方がいいんじゃないかなぁ、って言ってもこの一本道を山頂に向かって進むしかないんだけど…」

「うん、そうだな…この道を挟んで右側は断崖絶壁の壁、左側は同じく断崖絶壁の谷底…上から岩でも落とされてきたら、ひとたまりもねぇもんなぁ…よしっ! それじゃ、もっと安全を確保出来るところまで登ってみよう! ちょっとでも安全な場所を見つけたら、そこでみんなの救援を待つことにしようぜ!」

「「賛成!」」

「でも、ちょっと待って! 私たちパジャマ姿よ、確か無限巾着袋にサバイバル用の服があったはずだわ、それに着替えましょ、でも私の着替え見ないでね!」

「誰が見るかよ!」

「大丈夫だよ、僕たちは見ないから安心して着替えて」

「うん! うわぁ〜凄い! 自衛隊の人たちが着るようなデザインの服なのねぇ……」

「着替えたか?」

「うん、いいわよ、見て見て、この服凄いの! 私にはちょっと大きいかなって思ってたけど、着た途端に私の身体に合わせて縮んだの! それに、さっきまでちょっと寒いなって思ってたけど、今は寒くも暑くもなくて、とっても快適なの!」

「ヘェ〜、そうなんだ、じゃ僕たちも着替えよう!」

「ああっ! なんだか楽しみだな………」

「どっどうかなぁ?」

「うんっ! かっこいいじゃないの、アンタたち!」

 

お揃いの服に着替えた僕たち三人は一本道を登り始める、この一本道の道幅は5メートル程はありそうだから、余程大きな崖崩れさえなければ、安全に登っていくことが出来そうだ。

道すがら空を見上げてみると、そこには青空はなく、いきなり宇宙空間のような景色が広がっていた。

 

「多分、魔素や空気を逃さないために結界で空を覆っているのね、地球や異世界と比べて空気の層がかなり薄いわ、だからあんな感じで、いきなり空に宇宙空間が広がってるみたいに見えてるのよ」

「なるほどなぁ、不思議な景色だよな」

そんな会話を交わしながら、呑気に歩いていく僕だちだったが、その頃、この一本道の先にある山頂のエルフたちの城ではちょっとした騒ぎになっていたようだ………。

 

「まだなのっ! まだ戻ってこないのっ!」

「まったく! なにをやっているの! あのバカ弟がダメだったから、今度は精鋭中の精鋭を迎えに行かせたのに!」

「はっ! 申し訳ございませんっ! ただいま様子を見に斥候を向かわせおりますので、恐れ入りますが、しばしお待ちをっ!」

「申し上げます! 精鋭2名は無事に女神を連れて、この惑星まで戻ってきたようなのですが…」

「なんなのっ! 早く先をおっしゃいっ!」

「はっ! それがっ…その精鋭2名、帝城から女神の跡を追って来たと思われる二人組の子どもたちに、倒されてしまったようなのです!」

「はあぁぁ〜! 子どもたちにぃぃぃ? 精鋭中の精鋭なのよ!」

「こっこれはいったい、どういうことなのっ?」

「そっそれで、その子どもたちは今どうしてるのっ!」

「はっ! 女神と共にこの山頂を目指して進行中でありますっ!」

「まっまずいわね…、わかったわ、それじゃゴブリンの弓隊を、その子どもたちの迎撃に向かわせなさい! いいっ? その時、女神は一切傷つけないようにするのよ! わかったっ!?」

「はっ! 仰せのままに!」

 

 

「ふ〜ぅ、だいぶ上まで登ってきたけど、この一本道、なかなか終わらないわねぇ」

「うん…そうだね、このまま身を守る遮蔽物がない状態が続いて、上から敵に攻められたら、ちょっと厳しいことになりそうだね…」

「ん? なんだあれは?…ゴブリン? はっ! ゴブリンの子供たちだ! 助けに行かないとっ!」

「ちょっと待って壱剛! なんだか様子がおかしい! あの子達、僕たちに弓を向け出したぞ」

「うんっ! 気をつけて! あのゴブリンの子どもたちは、誰かの強い洗脳下にあるわ! それになんだか興奮状態に陥っているようよ!」

「くっ! 戦いの丸薬を飲まされているのかっ?」

「よしっ! 姫姫は少し下がって! 無限巾着袋の中に警察の機動隊が持つような盾があったはずだから、オマエはそれで身を守るんだ!」

「うんっ!」

「それから、壱剛っ、俺が『護の槍』で、飛んでくる矢を防ぐから、オマエは俺が取りこぼした矢があったら、姫姫に当たらないように、叩き落としてくれ!」

「わかった!」

「来るぞっ!」

ヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッ

カキッカキッカキッカキッカキッカキッカキッカキィーン!

 

「すっ凄いわ! 壱剛、全部の矢を防ぎ切ったわ!」

「フフフッ、師匠も壱剛の『護の槍』だけは認めているからね…ほらっ第二波がくるよっ! 姫姫ちゃん構えて!」

ヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッ

カキッカキッカキッカキッカキッカキッカキッカキィーン!

 

「クッソ〜、これじゃキリがねぇな!」

「ねぇ、壱剛、このまま少しずつ前進しよう!」

ヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッ

カキッカキッカキッカキッカキッカキッカキッカキィーン!

 

「ああっそうだな、どうやら、あのゴブリンたちは俺たち兄弟だけを狙ってきてるようだ、それもかなり正確にな! 油断はできねぇが、姫姫は大丈夫だろう」

ヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッ

カキッカキッカキッカキッカキッカキッカキッカキィーン!

 

「でしょ? じゃぁ、少しずつ前進しよう! 僕の『突の槍』の間合いに入れたら、あとは僕がなんとかするから!」

「わかった! よし行くぞっ! って、あれっ? 次の攻撃が来ないなぁ」

「見てっ! 壱剛、仁業! 熊よっ! 大きな熊がゴブリンたちを襲っているわ!」

「えっ? 熊っ? ほっ本当だ! ゴブリンたちを助けないと!」

「んんっ? まっ待て待てっ! あの熊、ゴブリンたちを縄で縛り出したぞ?」

「えっなんで? まさかっ、あのまま巣に持ち帰って、そこで食べるつもり?」

「あっ熊がこっちに来るぞ! みんな気をつけろっ!」

 

「よおっ!オマエたち大丈夫かぁ?」

「「「くっ熊がしゃべったっ!」」」

「んっ? オマエたち、壱剛と仁業か?」

「えっ、その声まさか! 大吾かっ?」

「ああ、そうだっ、ところでオマエたち、なんでこんなところにいるんだ?」

「それは、こっちのセリフだよっ!」

「ええぇ〜! この人が大吾ちゃん? 大きな人ねぇ〜」

「おっと、それより、そこのゴブリンたちをなんとかしなきゃな! 風邪をひいたら可哀想だ、話はあとにしよう」

「そうだな大吾の言う通りだ、でもどうやって、このゴブリンたちを保護するかだよなぁ」

「あらっ? この無限巾着袋に入れちゃったらいいんじゃない?」

「えっ! 大丈夫なのか? 生きているんだぞ!」

「ええ、大丈夫よ、ほら見ててね、『出よ、ひよこたち!』…」

ピヨッピヨッピヨッピヨッピヨッ……

「おお!すっげ!生きてるひよこじゃねぇか!」

「ええ、凄いでしょ、まだまだいるわよ『出よ、子豚たち!』…」

ブヒッ、ブヒッ、ブヒブヒッ……

「おお、大丈夫そうだな! ちゃんと生きてるよ!」

「でしょ! ちょっとかわいそうだけど、ゴブリンたちもこの無限巾着袋に入れても大丈夫なのよ」

 

「すっ凄い袋だなぁ…んっ? でもどこかで見たことがあるようなぁ…あっこれか!」

「なんだ、大吾くんも持ってたんだ、陛下から貰ったんだでしょ?」

「ああ、そうだ、貰った時はただのお守りだと思っていたよ…」

「ハハハッ大吾らしいな!」

「それじゃ、手分けしてゴブリンたちを無限巾着袋に入れるわよ、あっ大吾ちゃんは仁業に使い方を教わってね!」

「おおっわかった!」

 

「さて、さて、ゴブリンたちは無事回収できたが、このエルフはどうしたものかなぁ…」

「あっこのエルフってゴブリンたちを指揮していたヤツね?」

「ああ、そうだな、ふむ、とりあえずコイツもこの袋にしまっておいて、まずは落ち着ける場所に移動しよう」

「大吾くん、どこかいい場所、知っているの?」

「ああ、敵から発見されにくくて、キャンプにもってこいの場所があったぞ」

「ヤッター! これからキャンプなのね! 私キャンプって初めてなの!」

「やれやれ、遊びに来たワケじゃないんだけどなぁ、まっいいか!」

「それじゃ、あそこと、あそこと、それから…あそこに潜んでいるヤツらをどうにかしないとな」

「えっ! 誰かいるの? 敵?」

「ああ、そうだな」

「全然っ気が付かなかった…」

「それじゃ、オマエたちは…そうだなぁ、さっきの子豚やひよこたちを、たくさん出して遊んでいてくれるか? それでヤツらの気を逸らそう…どうやら潜んでいるヤツらは戦闘には不向きのようだから、こちらに襲ってくることはなさそうだしな、それじゃ俺はちょっと行ってくるから」

「「「うんっわかった」」」

「って、もういないよっ大吾くん…」

「よし、大吾に言われた通りにするぞ、『出よ、子豚たち!』『出よ、ひよこたち!』…」

ブヒッ、ブヒッブヒッ……ピヨッピヨッピヨッ…

「ハハッ! よく見るとこの子豚たち、結構かわいいね!」

「ああっ! めっちゃ可愛いな! ウチに帰ったら、ペットにしようかなぁ」

「フフフッ、でも大人になったらかなり大きくなるらしいわよ」

「そうなの! う〜ん、悩むね、壱剛」

「でも、不思議よねぇ、大吾ちゃんが現れてから、なんだか私、すっかり安心しきちゃって、連れ去れてきたことを忘れそうになっちゃったわ…」

「ハハハハッ、だろぉ? でも、それは姫姫だけじゃないんだぞ、もちろん俺もだし、仁業もそうだろ?」

「うんっ! それに、他の仲間たちもそうだと思うよ! 大吾くんがその場にいるだけで、みんな安心するんだ」

「フフッそうなのね? でもわかる気がする…それにプッ!」

「え、なんだよ、それにって?」

「ほら、美奈ちゃんが言っていたじゃない? ぼ〜っとしてるって、本当にそうだったから、おかしくてっ!」

「ハハハハッ! そうだなっ!」

「おっ、楽しそうだな! その様子じゃ何事もなかったようだな」

「うわっ! ビックリしたっ! もう帰ってきたのか?」

「ああ、この巾着袋があるおかげで、仕事がスムーズにこなせて助かったぞ」

「でも、大吾くんが目配せで教えてくれた潜伏場所、ここから結構遠かったよね?」

「まぁ、これでも自衛隊員だからな、これぐらいは出来ないとな」

「いやいや、いくら鍛え抜かれた自衛隊員でも、ここまでは無理だろぉ…」

「ハハハッ、そうか? じゃあ、これからキャンプ地へと向かうとするぞ、子豚たちはしまってくれ」

「うんっ! 行こうっ!」

「ウフフッ、楽しみね!」

 

大吾くんが言っていたその場所は、割と近くにあったので、姫姫ちゃんもへたばることなく、楽しそうにキャンプの設営を手伝っている。

キャンプはあっという間に出来上がり、大吾くんの手によって、ちょっとやそっとでは、敵から見つからないようカムフラージュが施される。

 

「敵から見つからないのはいいけど、これじゃ、味方からも俺たちを見つけられないんじゃないのか?」

「ああ、それなら大丈夫だ! 味方にはヒロシがいるんだろ?」

「うん、いるけど…、なんでヒロシちゃんがいると大丈夫なの?」

「それはだな、ヒロシならきっと部隊をふたつ以上に分けて、その中のひとつの部隊に派手に動き回るよう指示するはずだからな、それで俺たちも気づくことができるはずだ」

「なんで、派手に動き回るようにするの? 敵に気づかれるんじゃない?」

「ああ、その部隊は陽動だからな、敵の目をそちらに向かわせるための部隊だから、その方が好都合なんだ」

「なるほどぉ、その隙をついて別の部隊が敵の本拠地に突入したりするんだね?」

「まあ、そういうことだな。…あっそうだ、そっちの女の子には自己紹介がまだだったな、俺は立花大吾、自衛官だよ、そこの双子の兄弟とは古くからの付き合いなんだ。よろしくな!」

「うんっ、私の名前は上終姫姫、え〜といろいろあって、壱剛、仁業と友達になったの、あっヒロシちゃんたちともお友達よ! こちらこそよろしくっ!」

「へぇ〜、姫姫ちゃんの苗字は『かみはて』っていうんだぁ」

「うん、漢字は上下の『上』に『終』って書いて『かみはて』って読むの、今まで自分の苗字はどうしても好きになれなかったけど、ヒロシちゃんたちと話して、少しだけ好きになったわ、だから大吾ちゃんには思い切って名乗ってみたの」

「ふ〜ん、オマエの心情を考えると無理もねぇよなぁ…でも、よかったじゃねぇか! 少しだけでも好きになれて!」

「う〜ん、なんだかわからないが、オマエたち本当にいろいろあったんだな、よかったら聞かせてくれるか?」

「うんっ! もちろん、大吾くんにも、絶対に聞いてもらわないといけないからね!」

 

落ち着ける場所も手に入れたことだし、僕たちは今まで起きたことを、大吾くんに聞かせていく、これまで何人もの仲間に、なん度も話してきたことだから、だいぶ説明が上手くなっていたようで、大吾くんはひとつも質問を挟まずに聞き入ってくれた。

 

「う〜んっ、俺がいない間に、そんなことが…『異世界大誘拐』と『生き物たちの破滅』かぁ〜、ピロッシもそれに巻き込まれている…」

「うんっ、多分この惑星にどこかにいると思うよ」

「ところで、なんで大吾はここにいるんだ? だってオマエは青鬼のおっちゃんを迎えに行っていたんだろ?」

「ああ、その件な、それはだなぁ、さっきオマエたちの話の中で、サチコの話しで風車リンドウだっけ? その群生地が土地ごと消え去っていたって出てきただろ? おそらく俺はそれに巻き込まれたようだな」

「えっ? それって…」

「ああ、もっと詳しく話すとな、俺は壱剛が言ったように青鬼のおじちゃんが発見された、大陸の北の端にある高山地帯まで、自衛隊の四駆を借りておじちゃんを迎えに行っていたんだが、途中で四駆でも走行不可能な道に出てしまってなぁ、山の麓にある猟師のおっちゃんの家に四駆を置かせてもらって…、そうそう、その時、俺が今被っている獣の毛皮をその猟師のおっちゃんにもらったんだが」

「ああっそれでね! 大吾くん、そんな毛皮をかぶっていたから、僕たち熊かと思って驚いたんだから!」

「ハハハッすまん、すまん、それで当初の計画では、最初に出てきた高山をぐるりと迂回して、青鬼のおじちゃんを迎えに行く予定だったんだが、猟師のおっちゃんに聞いたら、それよりも山頂まで登って山を越えた方が早いって言われたもんだから、幸い四駆に登山用具一式積んであったんで、俺は迂回をやめて登山することにしたんだが、山頂付近まで登ると、いちめんに広がるの花畑が現れて、あまりにも珍しかったんでしばらく眺めていた時に、突然バカデカいゲートが現れて、俺はその花畑ごと飲み込まれてしまって、今にいたるってワケだな…」

「そうかぁ、そうだったんだね…、でもそれって15の〈始原の理〉たちがこの惑星に引き寄せられているってことだよね…」

「ええ、そうね、他の〈始原の理〉たちも、そろそろこの惑星に来る頃よ」

「てぇことは、最終決戦は近いってことだな…」

「「うんっ!……」」

「そういえば、俺の〈始原の理〉は[不動]だって言っていたよな、なるほど、中学時代に周りの悪ガキたちから[不動]ってあだ名されていたのは、その理のせいだったんだな!」

「いやっそれは違うだろ? 俺は中学時代のオマエは、その悪ガキたちから、どんな攻撃を受けても微動だにしないから[不動]ってあだ名がついたって聞いてるぞ」

「えっ? そうだったのか?」

「プッ!ハハハッ、これだよぉ、まったく大吾くんは…」

「ハハハッ! そうね、折角、私たちが最後の戦いに向けて、気を引き締めてたところなのに、これじゃ台無しよねっ!フフフッ」

「いやぁ〜すまん!」

「「「ブッ…アハハハッハハハッ!」」」

 

突然敵地に連れてこられて味方の到着もまだ無く、かなり緊迫した場面だと言うのに、まるで緊張感の無い雰囲気のまま僕たちは援軍を待っていた。

その頃、エルフの城ではエルフたちが悪巧みをしているとも気づかずに…

 

 

「お伝えします!ゴブリンの弓隊消滅!指揮にあたっていた者と監視にあたっていた斥候部隊も消滅いたしました!」

「なっ!なんですてぇ!」

「しょっ消滅ですってぇ?」

「はっ! 現場を検証したところ、特に激しい戦闘の形跡もなく、全軍その場から姿を消しておりました!」

「………ちょっと待ちなさい…それは、死体はおろか、血の跡すらも残っていなかったってことなのね?」

「はっ仰る通りです!」

「おっお姉様? どうしたの? なにをそんなに考え込んでいるの?」

「……フフフッ、わかったわ、そっちがその気なら、こっちも打つ手があるわ…」

「えっ? どういうことなのお姉様?」

「いいわ、聞かせてあげる、他の者も、これから私がいうことをよく聞いておくのよ、いいかしら?……これから私たちが出す次の一手はね………………」

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