【第十一話】異世界帝城会議
「この宇宙に住むあらゆる生き物たちの破滅………。地球に来た小さき女神よ…その話、信じてよいなのだな?」
「ええ、皇帝陛下…残念ながらその話はすべて真実よ…」
俺たち双子の兄弟と姫姫、そして大吾を除いた〈始原の理〉を持つ仲間たち12人は、帝城会議室に集合していた。
異世界側からは、皇帝陛下、宰相さん、そして我らが恩師、ドニー・リー師匠が同席している。異世界側からの出席が少ないのは、俺たちから、ただならぬ雰囲気を感じ取った、皇帝陛下の配慮だと思う。
姫姫が起こしたクーデターの一件から、今での出来事を、事情がわからない仲間たちにもわかるように事細かく説明し、そして最後に女神である姫姫が『生き物たちの破滅』について話し終え、会議室にいる全員は重い沈黙に包まれる……。
「……まっ、まぁまぁ、陛下のおっちゃん、そこまで悲観しなくてもいいんじゃないのか?…ほらっあれだろ? 女神ちゃん、今までも『生き物たちの破滅』はなん度もあったんだろ? そんで毎回、俺たちの先輩の〈始原の理〉のカケラを持った人たちが、その『生き物たちの破滅』を退けてきたんだろ?」
「えっ? ええ…、そうね…、確かにそうだったわ…」
「なんだよ女神ちゃんっ、なんでそんなに歯切れが悪い言い方すんだよ…」
「あっごめんなさい! ヒロシちゃんの言うとおりねっ! 諦めるには早すぎるわっ!」
「そうだろぉ〜、まだまだ、諦めるには早すぎんだよ! 俺たちでなんとかしよう! なっみんな!」
「ああ、そうだな! ヒロシの言う通りだなっ『生き物たちの破滅』は俺たちが絶対に食い止めてみせようぜ!」
「うん! 絶対に諦めないよ!」
「じゃぁ、まずは目の前の異世界大誘拐の解決からだな、俺はどうもこの誘拐事件と『生き物たちの破滅』はなにか関係があるんじゃないかと思うんだよなぁ」
「確かに、全く関係がないとは、思えないよね…」
「ああ、そうだね、ねぇ、美羽ちゃん、異世界と日本の警察でなにかつかんでる情報ってないの?」
「それがそのぉ…ごめんなさい…有力な情報は、まだなくってね…」
「い〜え美羽ちゃん、それがあるのよ、今日、美奈が持って来た有力な情報がね」
「本当! サチコ先輩? わたし、役に立ったの?」
「ええ、美奈が見つけた、小さな葉っぱがあったでしょ? その正体がわかったの」
「なにっなに? あの葉っぱはなんだったの?」
「あの葉っぱはね、『風車リンドウ』ていう植物の葉っぱっだったの」
「風車リンドウ…? なんだぁ聞いたことのない名前だなぁ」
「そうね、私たちの知恵袋、裕太先輩が知らなくても無理はないわ、だってこの植物最近発見された新種だもの、でも新種っていっても、太古の昔から生息していた植物なんだけどね、それでこの植物は地球には生息していなくって、異世界のそれもかなり標高の高い山頂付近にしか生息していない植物なの」
「てぇことはぁ…誘拐現場で発見されたその植物は、ゲートを使って現れた誘拐犯に付着してた可能性があるんだろ? そうなると、誘拐犯の本拠地は高山の頂上付近にあるってことじゃないのか?」
「でも、大谷の見立てでは、そのゲートの発現場所は地球でも異世界でもない場所、つまり姫姫ちゃんのいた宇宙の可能性が大きいんでしょ? 姫姫ちゃんのいた宇宙にそんな植物が生息している場所なんてあるの?」
「う〜ん、私が生まれた頃には、そんな場所はなかったんだけど、私が生まれて1年ほど経った頃、私の宇宙と、このみんなが住んでいる宇宙が衝突して、その時お互いの宇宙の壁みたいなものが砕けて、そのかけらが、ひとつの惑星みたいになっていたことは確認してたけど、残念ながらその惑星に立ち寄ったことがないから、その植物が生息していたかどうかまではわからないわ…でも、生息しているとしたらその惑星しかないと思うわ」
「そうか、誘拐犯の本拠地の候補がひとつあがったってわけだが……う〜ん…」
「……その候補……本拠地である可能性がかなり高いんじゃないかしら」
「えっなんでだ? サチコ」
「普通に考えると、そんな出来たばかりの惑星に、生物が生息できる環境が整っているって誰も考えないでしょ?」
「まあ、そりゃそうだが…それを言うなら、可能性はかなり低いんじゃないのか?」
「それがね、実はこの『風車リンドウ』、『魔素』の生成能力が、地球や異世界のほかの植物と比べると、比較にならないほどの高いの」
「どれぐらい高いんだ?」
「およそ百八十万から二百万倍」
「それは大発見じゃねぇか! それじゃその『風車リンドウ』を大量に繁殖させれば、異世界は『魔素』不足に怯えなくってすむってことだろ?」
「フフフッそうね…、で、話を元に戻すけど、その候補の惑星でこの『風車リンドウ』の繁殖に成功したとしたら?」
「……そりゃ候補どころか、もう、そこしかないってことになるよなっ!」
「そうねっ…でも、どうやってその惑星まで乗り込むのかよねぇ〜」
「フフフッ! やっと私の出番のようね!」
「おおっ! サキ! もしかしてオマエの発明でなんとかなりそうなのか?」
「よくぞ聞いてくれたわヨコ先輩! そうよ、その通りよっ!」
「で、どうやってその惑星までいくんだ?」
「まあ、簡単に言ってしまえば、ゲートを使うのよ」
「ゲート? でも、ゲートは目的地の明確なイメージを掴んでないと、そこには出現させられないだろ?」
「フフフッ…普通はそうよね、でも私は違うわ! この私が今まで誘拐犯たちの使う結界破りのゲートを黙って見過ごしていたと思う?」
「思わねぇなっ!」
「そうなの! それでね、今まで誘拐犯たちに使われてきた、結界破りゲートの術式の解析がようやく終わりそうなの! 今、大谷先輩にその解析済みの魔素の流れに間違いがないか確認してもらっているわ」
「そうか! 要はゲートの逆探知をしているんだな?」
「その通りっ! あっ大谷先輩! どうだった?」
「ああ、かなり近いところまで来ているよ! でもZ座標だけなんだが、若干高いと思うぞ、あれだと空中のかなり高い場所にゲートが発現されると思うな」
「わかった! この会議が終わり次第、修正に取り掛かるわ!」
「よっし! それじゃ誘拐事件のほうは、ある程度解決の目星がつきそうだなっ」
「あの〜チョット待ってくれる?」
「なんだサチコ? なにか気になることでもあるのか?」
「はっ! もしかして、その惑星には『魔素』はあるけど、『酸素』が無いとか?」
「違うわ、『風車リンドウ』は魔素ほどではないけど、酸素の生成もずば抜けて高いから、そこは心配ないと思うのだけど…」
「じゃあなんだ?」
「それはね、今回の異世界大誘拐に関わっているかどうかは分からないんだけど、一応みんなに言っておくわ、さっき『風車リンドウ』はかなり標高の高い山頂にしか生息しないって言ったの覚えてる?」
「うん! 覚えてる」
「それで私たち研究チームは他の高山にも『風車リンドウ』が生息していないか調査に行ったの、そしたらね、おそらく『風車リンドウ』が生息していたと思われる場所に、土地ごと削り取られているって形跡が多数見つかったの…私たちが知る限りでも数百ヶ所の場所でね」
「それってつまり…何者かが『風車リンドウ』を土地ごと削り取っていったってこと?」
「ええ、その可能性がかなり高いわ、自然現象で起こってしまったような形跡ではなかったからね…なにか人為的な作用が加わったような形跡だったわ。それでそこに残っていた土を調べてみたらね、どうやらその現象はどの土地も10年ほど前に起こったようだったの」
「おいおい! それって、異世界の魔素の減少が急加速した頃じゃねぇか!」
「ねぇ二世ちゃん、その頃、標高の高い山は調べなかったの?」
「いや、美羽よ、我々は異世界の隅々まで調査をした。だがな、恥ずかしながら、その頃の我々には日本のような科学力を持っていなかったから、それで見落としたのかもしれんな…」
「なるほど…なにやらまたまた雲行きが怪しくなって来たぞ…もしかしたら今回の異世界大誘拐は10年前の魔素減少問題とも繋がっている?」
「……まあ、ここで憶測を飛ばしていても仕方がない、今はやれることをやろう。俺からの提案だが、次は俺たちがそれぞれ持ってる武器の確認したいんだが構わないか?」
「なあに? ヒロシ先輩、私、武器なんて持ってないわよ…あっでも、サキ先輩は持ってそう!」
「いや、すまん、オマエの思っているような武器のことじゃないんだ、俺が言っているのは、俺たち15人がそれぞれ持っている〈始原の理〉の種類、つまり自分たちが持っているカケラの能力についてだよ。」
「ああ…そういえば、大谷先輩が持っている〈始原の理〉の種類は[究明]だったわね…、なるほど…大谷先輩の魔素の流れや人の感情を読み取る能力と、確かになにか関係がありそうね」
「そうだろ? だから俺たちは自分の〈始原の理〉の種類を知っておくべきだと思ったんだ、もしかしたら、今まで気づいていなかった能力に目覚めるかもしれないしな…そんなわけで、女神ちゃん説明、頼めるか?」
「ええっもちろんいいわよ、でもその前に〈始原の理〉自体についての説明からした方がより自分の能力の理解が深まると思うの、それでもいいかしら?」
「ああ、頼む、女神ちゃんがいいと思うように説明してくれて構わない」
「わかった、前にあなたたちには〈始原の理〉は15あるって言ってたけどね、実は元々は12だったの、そうなった理由もちゃんと話すから、ちゃんと聞いててね」
「ああ…」
「わかりやすくするために、その12の〈始原の理〉をカレンダーになぞって説明するわね」
「…ってことは、〈始原の理〉には、誕生した順番みたいなのがあるんだね?」
「そうその通り。まず一番初めに誕生したのは、1月の〈始原の理〉[混沌]よ、この理の登場は、この宇宙に生命が誕生するきっかけになったの。最初に誕生した生命たちはまさに混沌な状態だったわ、でもそれには理由があってね、この生まれたばかりの生命が、この先どんな道を辿るのか試行錯誤させていたの」
「ふ〜ん、でもなんだか、そんなこと学校でも習った気がするなぁ」
「フフフッ…そうね、でっ、次の2月の理は[秩序]。この理は美羽ちゃんが持っているわ」
「えっ?私の理?」
「ほうっ、警察官のオマエにピッタリじゃねぇか!」
「そう? でも、なんだか、お堅いイメージじゃない? 私は結構フランクなのよ?」
「まあ、あの大吾の妹だからな…、でも割と頑固なところもあるぞ…あっ! すまん姫姫ちゃん進めて」
「うん、それでね、1月に生まれた生命たちは、様々な試行錯誤を繰り返していたのだけど、この[秩序]の登場によって、自ら分裂して増殖をするものだけが生き残り、ほかの生命は自然に淘汰されていってね、生き残った生き物たちも、多種多様な種を増やしていって、ある程度のグループ化が形成されて、ようやく落ち着きを見せ始めたの」
「ヘェ〜面白いなぁ」
「そして、3月の理[連鎖]が登場するんだけど、これはサチコちゃんの理ね」
「私の理は[連鎖]……。うん、わかったわ!」
「2月の[秩序]の理のおかげである程度の法則性を身につけた生物達は、捕食するものと捕食されるものとでハッキリ区別がついてくるのね、そこで[連鎖]が登場して、バランスを保つように調整し始めたの」
「そうか、食物連鎖だな、捕食者が増えすぎると被食者がいなくなって、結局どちらも絶滅しちゃうみたいなことになるから、その調整をするんだな」
「そうよ壱剛、ちゃんと勉強しているみたいね、でも[連鎖]の役割はそれだけじゃないの、例えば、植物は暑い地域でしか生息できないものがあったり、涼しい場所でしか生息できないものがあったりするでしょ? それも、どのような環境でも、生き物が絶えないよう[連鎖]によって調整されているのよ」
「なるほど、連鎖って一言でいっても、いろいろな意味合いがあるもんなぁ」
「そうね、[連鎖]の登場で多種多様な生き物たちは、それぞれに役割ができて、お互いの種を存続させるための様々なサイクルが確率されたって言ってもいいわね」
「うん、わかった、多分理解できたと思うよ」
「じゃあ、次ね、つぎの4月は[恐れ]の理が登場するの、これは雄二ちゃんの理よ」
「僕は[恐れ]かぁ、なんだかしっくりくるよ」
「[恐れ]の登場で、初めて生き物たちに感情って言えるものが芽生えるの」
「ヘェ〜、生き物が一番初めに覚えた感情は[恐れ]だったんだ」
「そうよ〜、[恐れ]って実を言うと生き物達が生きて行く上で一番大切な感情だったりするのよ」
「そうだね、[恐れ]を知らないと、危険なことに無頓着になって、平気で危険に身をさらして、そのうち絶滅しちゃったてこともあり得るもんね」
「うん、その通りね。でも[恐れ]の役割はそれだけじゃなくて、[恐れ]の対象に対して逃げ回るだけじゃなく、[恐れ]を克服しようとする心を持たせる役目もあるの」
「それを聞くと、ますます雄二にぴったりの理だな!」
「そして、その[恐れ]を克服しようとしているうちに、ある程度の知恵をつけだした生き物たちは、5月の理[研鑽]が登場すると、好奇心という感情が生まれて、いろいろなことに興味を持って、深く理解したいという欲求を持つようになるの」
「おおっここに来て、だんだん俺たち人間に近づいてきたなぁ」
「その説明聞いて思ったんだけど、その理は裕太先輩の理じゃない?」
「そうよっ、[研鑽]は裕太ちゃんの理よ」
「やっぱり!」
「6月になると[版図]の理が登場して、あるグループは自分たちのテリトリーを広げるため侵略行為をおこない、あるグループはその侵略行為から身を守るために、互いに争うようになるの」
「それを聞くと、なんだか[版図]の理が登場しなかったら、戦争なんかも起こらなかったんじゃないって思ってしまうのだけど…でもちゃんと登場した理由があるのよね?」
「そう、ちゃんとした理由があるわ。[版図]が登場したその当時は、テリトリーを広げる侵略行為って言っても、それはグループを守るためだったの」
「どういうこと?」
「そうね、例えば、今の時代になると、作物は人間の管理下にあって、毎年ある程度の収穫は見込めるでしょ?…でもその当時は、その年、その年の天候次第で食べ物にありつけたり、ありつけなかったりだったのね。それで、ありつけない場合は自らのグループを守るために、他のグループを侵略するしかなかった…」
「なるほどぉ…」
「でも、[版図]が登場した真の意味はテリトリーをめぐって争いを起こさせることじゃなくてね、逆に争いを起こさせないことにあったの」
「えっ? なんでそうなんの?」
「それはね、ある程度の戦いはやむを得ずとして、テリトリーを最大限まで拡大するグループを生み出してね、強いリーダーを育て上げることにあったの」
「なるほどなっ! 理解したよ! その強いリーダーの元で、出来るだけ多くのものを生かそうとしたんだなっ」
「う〜ん、それを聞くと確かに[版図]の理には意味があるよなぁ…」
「でっ、その6月の[版図]の理は誰が持っているの?」
「そういえば、1月の[混沌]の理も誰かは聞いていないよね?」
「ええ、この時点では誰も該当しないわ、該当者が出てくるのは次の年になるわね」
「次の年?…」
「まあ、最後まで姫姫ちゃんの説明、聞こうぜ、そしたらわかるさ」
「ああ、そうだね、ごめん話の腰を折って」
「フフフッ、いいのよ、気になるのもわかるわ…、それでね7月に登場するのがねぇ、お待ちかねの[謀略]よ!」
「謀略っ? ヒロシ先輩ね!」
「ああ、間違いなくヒロシだな!」
「正解よ! この[謀略]の理を持つのはヒロシちゃんね。…[謀略]って聞くと、なんだか良いイメージが湧いてこないと思うのだけど、でもこの理にも深い意味があってね、それもやっぱり生き物たちの…いえっ、もうこの時点では人間や魔物たちの種を守ることに繋がるの」
「う〜ん、[謀略]って、人を騙したりすることだろぉ…それが種を守るねぇ…」
「そう思うのも無理は無いわ、でもね[謀略]はね、確かに多くの人々を守ることにも繋がるの。そう、例えば、[謀略]で敵を罠に嵌めて、戦いに勝利したと考えてみて、その時の自軍の被害は、正面からぶつかって戦った時と、どちらが少なくてすむかしら?」
「ああっ! 確かに! 当然[謀略]を使った方が、味方の被害は少なくなるよな!」
「そうでしょ? じゃあ、もうひとつの例えね、[謀略]を使って敵方の大多数を寝返りに成功させて、勝利したとしたら?」
「ほうっ! なるほど、もともと敵方だった人たちの被害も少なくなるってわけだ!」
「う〜ん、確かに[謀略]と聞くと良いイメージが湧かなかったけど、それを聞くと、なるほどぉ〜流石はヒロシ! なかなかやるなぁ〜!」
「いやっ俺はなにもやってねーしっ!」
「ハハハハッ…! それじゃ次の8月の理は[空想]よ、これは塩谷先生が持っているわ」
「これまた、オマエにピッタリの理だな!」
「へぇ〜!僕の理は[空想]かぁ…なんだか嬉しいよ!」
「喜んでもらえてよかった!…それでこの理の役割はね、さっき話した[版図]の理の思惑通り、日本の歴史で言うと鎌倉幕府や江戸幕府という大きな勢力が民たちを治めるようになると、民たちは平和を享受するようになったわ。そこで[空想]が登場するわけなんだけど、この[空想]は人々に娯楽という生きる楽しみを見出させて、ますます人々に、潤いのある生活を与えていったの。そしてその後の未来の人類の発展にも大きく役立つこととなったわ」
「人類の発展? 空想が?」
「いや、いや、俺たちの爺ちゃんが言っていたぞ、こどもの頃に読んでた漫画の夢のような世界が、今じゃ当たり前の世の中になってきたって…。それと関係があるんだろ? 姫姫?」
「そうよっ壱剛、今日はなんだか冴えているわね! そう、壱剛のお爺ちゃんがこどもの頃に読んでいた夢のような世界が登場する漫画は、その頃の人々の憧れになるんだけど、それをただの憧れだけで終わらせなかった理が9月に登場するの」
「ふん、ふん、それで、その理というのは?」
「[創造]の理、サキちゃんの理ね」
「私の理は[空想]…。なんだかワクワクするわねっ!」
「ああ、オマエにピッタリだ!」
「今のサキちゃんを見れば、説明はいらないかもしれないけど…、そうこの理は主に発明を司るの。[空想]によってインスピレーションを刺激された人間たちに、それが現実のものになるように、この[創造]の理は力を貸しているの」
「ああ、それで[空想]が人類の発展につながるのな、わかったよ!」
「うん、それじゃ次に10月の理ね、これはね藤谷先生の理で[発見]よ」
「ちょっと、姫姫ちゃん、説明の前に姫姫ちゃんにお願いがある」
「えっなぁに?」
「その藤谷先生ってのはやめてくれない? みんなと同じように美奈ちゃんって下の名前で呼んで欲しいの…」
「それなら、僕も! 先生はいらないから、塩谷ちゃんって呼んで欲しいな!」
「えぇっとぉ、美奈ちゃんはいいけど、塩谷先生はダメかなぁ」
「ええっ! なんで?」
「だって、私がこの日本で生きていこうって思ったのは先生の『キャンあん』のお陰なのよ、それに先生の作品は全て読んでると思うのだけど、あんなに素敵な作品を作り出す塩谷先生のこと、ちゃんづけで呼ぶなんてできないわ…」
「ええぇぇぇ〜?」
「まあ、まあ、塩谷先輩、姫姫ちゃんもああ言っていることだし、ねっ?…じゃあ、私の[発見]の説明お願いね!」
「うん、それじゃ説明するね、さっきの[空想]と[創造]のおかげで、人類たちは目まぐるしい発展を遂げるのだけど、その発展のおかげで、人類たちの世界に向ける視野は大きく広がることになり、やがて宇宙にも目をむけるようになったわ」
「ふん、ふん、確かに7月までと比べると、随分、進歩したわねぇ」
「そうね、そこで[発見]の理は人類に新たな進歩を促しているの」
「へぇ〜それじゃ、人類はまだまだ、進歩していく可能性があるってことなのね?」
「それが…その部分はいくら理でも、あまりよくわかって無いっていうかぁ…そうね、言うならば理たちは、人類にこの先の進歩を見せて欲しいと思っているのかもしれないわね、だって次の11月は大谷ちゃんの理でもある[究明]だから…」
「ふ〜ん、なるほど人類の進歩を手伝うために[究明]の理が登場したというのね」
「……ここまで聞いて、思ったんだけど、理たちって、僕たちを観察して楽しんでいるような…」
「確かに、塩谷先生の言う通りかもしれない…。でもねこれだけは言えるわ〈始原の理〉たちは人類を含めて、この宇宙に住むすべての生き物たちの味方だってね! だって他の理の中には、人類や生き物たちのことをあまりよく思っていない理たちもいるから…」
「そうか、〈始原の理〉以外にも、理たちがいるって言っていたもんね、姫姫ちゃん」
「それじゃあ、今回の『生き物たちの破滅』をひき起こしたのは、人類たちのことをあまりよく思っていない理たちが引き起こしたものなのか?」
「ええ…間違いなくそうだと思うわ…」
「……………………………」
「まぁまぁ! そんなよくわからない存在に怯えてても仕方ないだろ、それよりも、今回の『生き物たちの破滅』も俺たちが絶対に退ける! それっきゃ無いだろ!」
「うんっ! そうよっ! ヒロシ先輩の言う通りだよっ!」
「おうっ! おうっ! なんだか振り出しに戻りそうになったけど、それっきゃ無いな!」
「それじゃ、〈始原の理〉の最後の12月の理を教えてくれる?」
「うんっわかった! 最後の12月の理は[不動]よ」
「不動っ? 出たよっ! 間違いなく大吾の理だな!」
「[謀略]と[不動]って、こんな偶然あるんだなぁ」
「うん、姫姫ちゃんが言うには、人間の中にはずば抜けて勘のいい人がいるから、そんな人がヒロシくんと大吾くんの理になんとなく気づいたんじゃないか?ってね、そうだろ、姫姫ちゃん?」
「うん、おそらくそうだと思うわ」
「じゃ、大吾先輩は、まだここにはいないけど、[不動]の理の役目ってなんなの?」
「それがね、簡単に言うと、今まで説明してきた理たちのまとめ役みたいなものなんだけど…」
「なんだけど?」
「[不動]の登場で〈始原の理〉たちの中でひとつの理が反乱を起こしてしまうの…」
「「「「反乱………?」」」」
下がっては上げっ、下がっては上げてきたテンションだが
ここにきて、またまた姫姫から不穏な単語が……
だが、この話の先は「とぅびーこんてぃにゅー」だっ……