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6話 落ちた帝国

 豪華な衣服を身に纏った男性が十人程度椅子に座り、長い机を囲っている。そしてその部屋の最も奥にはグリフを追放した張本人であるエリツァール・フェン・ルケーノ皇帝陛下が座っていた。

 かなり張り詰めた空気の中、エリツァールは重い口を開く。


「魔族の攻勢はどうだね? 軍部大臣」

「現在、西と東の両砦が突破されました。戦況はあまり芳しくありません」


 それを聞くと皇帝はまた口を重く閉ざす。実のところ、ルケーノ帝国では魔族の侵攻への対処が間に合っていない状況にあった。

 このままでは直に魔族によって支配されてしまう未来が見えることだろう。それには深い理由があった。


「くそっ、ランディール王国とドルトヒルゼン聖王国が勝手に支援を停止しおるからこのような事になったのだ!」


 エリツァールはそう言うと、怒りを抑えきれず机に拳を叩きつける。

 ランディール王国とドルトヒルゼン聖王国というのは、世界に名だたる国がある中、特に繁栄している四大国家の内の二つである。

 ついこの間までは三大国家であったが、最近ルケーノ帝国はこの両国の支援を経て四大国家と呼称されるほどに成長したのである。


 ここでルケーノ帝国が何故この両国から支援が受けられていたのか、それには理由があった。


 まずはランディール王国との関係について。

 実はグリフの母親であるエミリー・フェン・ルケーノはランディール王国の元王女だったのである。そして病気の彼女を守り抜くという意思表示をしてエリツァールは結婚するに至ったのだ。


「くそ、あいつの子供があれほど使えん無能でなければ殺……死んでしまわなかったというのに」


 グリフの母親が死んだという報せを聞いたランディール王国は当然の様に約束を守らなかったルケーノ帝国に見切りをつけて、支援を断った。


 ではドルトヒルゼン聖王国との関係はどうだったかというと、実はグリフの婚約者が聖王国の王女であった。

 そしてご存じの通り、グリフを追放したことにより、グリフにぞっこんであった聖王国の王女が激しく非難し、こちらも支援を停止したのである。


 ルケーノ帝国はこの両国から支援を受けていたからこそ反映した国である。しかし、その両国の支援が無くなってしまった今、ルケーノ帝国にはかつての力はないのである。


「くそ、どれもこれもあ奴が無能であったのが悪いのだ」


 荒れるエリツァールの姿に同意を示すかのように大臣たちもうんうんと首を縦に振る。

 グリフの母を殺したのはエリツァールであり、さらに言えば婚約を破棄させたのもエリツァールであるため、本来であれば責任を問われるのはエリツァールなのである。

 しかし、この中にはそんなことを言う者は居ない。都合の良い共通敵を作り出すことによって歪な正当化を果たしているのである。


「……魔族側に付くのも致し方ないか」


 エリツァールがポツリとそう呟く。


「陛下!? なりませぬぞ! それは禁忌の一言で御座います!」

「そうでございます! それよりも無能の首を両国に差し出せばきっと分かって頂けます!」

「そうは言うが、あの無能は先の地震で姿を消しただろう? 最早彼奴の遺体はどことも知れぬ大地の下だ。それを掘り出し、首を刈り取れと言うのか?」


 実はグリフを追放ではなく何度も暗殺しようとはしていたのである。

 しかし、食事に毒を混ぜようと、暗殺者がその首にナイフを突き立てようとどういう訳か死ぬことはなかった。


 その異常な体の強さに皇帝も最初は期待していたものの結局は剣術も魔法も才能がない者を次代の皇帝にすることを許せず、結局追放する事にしたのだ。


 その結果、ルケーノ帝国の現状である。あれほど栄華を誇っていた大国も今では魔族による侵略が顕著となっている。


「かくなる上は仕方あるまい。滅ぼされるくらいならばいっそ」


 そう呟くエリツァールの瞳は怪しく光っているのであった。

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