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11話 地獄の焔

 かつて聖なる巫女、聖女が居るとして各国から崇められ続けていたドルトヒルゼン聖王国。今となってはすっかり魔族の手に落ち、聖なる都は邪悪に彩られている。

 都のど真ん中に立っていた清廉なる宮殿は今となってはおどろおどろしい色合いに作り替えられており、その中では一人の魔族が優雅に茶を啜っていた。


「ふむ、伯爵位の私がまさかこれほどの大国を手にするとはな」

「魔帝国からは離れております故、公爵位の方々は来られないのでしょう」

「おいザッカス。真実を言うな。悲しくなるだろうが」


 紅の髪に紅の翼をはやしたその魔族、ルゴラウスは何やら一人で会話をしている。いや、一人で会話をしているように見えるようで実のところ彼が持っている本は意思を持っており、その本と会話をしているのである。

 俗に言う魔術書と呼ばれるその本は多大なる魔力を含んでいるため、こうして意識が発現することもあるのだという。


「しかし陛下のお考えはよく分からぬ。どうして人間なんぞを殺さず、支配なんていう面倒なことをするのやら」

「前も言ったであろう。魔族では人材が少なすぎるのだ。魔族全体を養うのにはそれなりの労働者が必要だ。しかし魔族の中には勤勉に働く者はほとんど居らん。だからこそ人間を使うのだと」

「下級魔族一人分で人間百人分くらいの労働力はあるんだぜ? 人間を労働者として使うメリットが分からねえ。現にランディール王国を支配してる公爵様は月に百人人間を殺しているらしいじゃないか」

「あの公爵は陛下の言う事も聞かぬ暴君だからな。勘違いするな。あの者は規範ではない」


 魔術書の言い分に何とも納得のいかない顔で茶を啜るルゴラウス。

 そしてその様子を呆れ気味に見守る魔術書ザッカス。


「まあ何はともあれ、気に食わねえな」


 そう言うとルゴラウスから凄まじい魔力が放出される。周辺にあった水路は枯れ、大地にはひび割れが生じる。


「気晴らしに一つ街を潰すか。一個くらいなら別に構わねえよな?」

「好きにしろ。陛下に怒られるのは貴様なんだからな」

「ギャハハハッ! ちげえねえ!」


 漆黒と橙が入り混じったかのような大きな焔の球がルゴラウスの指先に生成される。これが『紅王』ルゴラウスが得意とする地獄の焔だ。

 これほどの威力を持った焔の球が街を襲えば、一発で全員が息絶える事であろう。それを分かっていながらルゴラウスは指先から放つ。


「ほうら、行った♪ ギャハハハハッ! 人間の苦しみ嘆く声が待ち遠しいぜ!」


 ルゴラウスはそう言うと魔力感知を最大限まで展開し、今か今かと待ち構える。しかし何時になっても悲鳴はおろか衝撃音すら聞こえてくることはない。


「……あぁ? 着弾の音が聞こえねえのはおかしいな。もしかして()()()()()?」


 そんなことはあり得ない筈であった。防げる可能性が高いとすればSランク冒険者やどこぞの国の騎士団長レベルであろう。


「まだ潜伏していやがったか。おいザッカス。反乱の意思を見つけたぜ? こういう場合は捻りつぶしちまって良いんだよなぁ?」

「無論である」

「おっけー! そんじゃあ行くぜ! どこぞの奴を血祭りにしになぁ!」



 ♢



「今の何だったんだ?」


 俺が乗ってる天馬に勢いよく火の玉が飛んできたから思わず消したけど。

 結構でかかったぞ? まあ込められている魔力量が大したことなかったから武闘で殴ったら一発だったけど。


「さあ。稚拙と言わざるを得ない魔法でしたね」

「恐らく魔族の子供の悪戯でしょう」


 ルースとファブニルは相も変わらず辛辣にそう告げる。まあでも俺から見ても子供だましにしか見えなかったから大方合ってるんだろうな。


「え、ええええっ!?」

「……レベルが違い過ぎますね」


 俺達が首を捻っている一方でルルーシアとフランシアさんが俺の顔を見て目を真ん丸にして驚いている。


「何をそんなに驚いてるんだ?」

「えだってさっきのってあの魔伯爵ルゴラウスの地獄の焔ですよ? それを片手間に消滅させてしまうだなんて」

「うん? 今のが地獄の焔?」


 そう言う割にはあんまり熱くなかった気がするけどな。


「はい、間違いありません。だって私達は実際にこの目で見たのですから」

「へえ。じゃあ多分適当に魔法を撃ったんだろうな。ホントに弱かったし」


 ていうか問題はこっちの動向が既にバレているってことだな。まあこんだけ大群で空を駆けまわっていたら気が付かれるのも無理はないけど。

 あくまで警告として先程の魔法を撃ってきたのだろう。


「よし、見えてきたな」


 かつて穢れが一切ない程清廉であった水の都市。今となってはおどろおどろしい雰囲気を漂わせるドルトヒルゼン聖王国が眼前に広がっているのであった。

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