表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/21

クロスオーバー【ウサギ+バンビ】2

【いじわる社長の愛玩バンビ 59話より抜粋】


「鈴鹿、これ、結婚おめでとう?」


 謎のお祝いに、万里は吸い込んだカフェラテを噴きそうになり、何とか飲み込むと激しく咽せる。

「ゲホッ……なっ……、なんっ……?」

「だ、大丈夫?」

 全く大丈夫ではない。

「け……、結婚!?」


「え……違った?些細なことですれ違い、実家へと帰った万里だったが、ヘリで迎えに来た久世社長と想いを確かめあってめでたしめでたしって風の噂で聞いたんだけど……」


 桜峰は不思議そうに首を傾げている。

 不思議なのは桜峰の言動だと言いたい。

 そしてその噂をもたらした『風』が何者なのか非常に気になる。

「いや、その……ヘリでは、なかったですけど…」

「うん。鈴鹿の実家ヘリポートがあるんですか?すごいなって言ったら、社長がヘリで迎えに来るのは今や常識…って風の噂が」


 だからそのツッコミどころしかない『風』は誰なんだよ。


***


 その日、湊はふらりと『SILENT BLUE』を訪れた八重崎に指名されて、同席していた。

 相手が信頼できる友人だから気が緩んでいたのだろうか。接客中に他のことを考えることなどあまりないのだが、不意に昨日辞めた鈴鹿万里の涙を思い出して、あれからどうしたかと心配になって言葉少なになってしまい、それを八重崎に気付かれてしまった。

「湊……何だか元気ない……。溺愛ガチムチ極道に日夜身も心も愛されすぎて応えたい気持ちとは裏腹に腰と尻が限界……?大丈夫……?」

「え……えぇ?」

「尻の方は……早めに受診した方がいい……病院探す……?」

「いっ、今のところ大丈夫です。すみません、ちょっと、昨日辞めた鈴鹿がどうしたかなって思ってしまって」


 正直に話すと、八重崎は全てを知っていたようだ。問題ない、とあっさり言い放ち、やけに具体的な顛末を教えてくれた。


「あれは大丈夫……。傷心で泣きながら実家に帰った鈴鹿万里は……翌朝、つまり今朝、ヘリで迎えにきた久世昴に……『あいつとのことは誤解だ。俺の愛しているのはお前だけだ、万里……!』って結婚指輪を渡されてめでたしめでたし……」

「えっ、鈴鹿の家、ヘリポートあるんですか。すごいな……」

「有史以前より、セレブはヘリで迎えに来ることが決まってる……。ちなみに石油王は自家用ジェット……。今やこれは常識……。石油王は……もはや絶滅危惧種だけど……」

「はあ……」


 産油国の王族の人数が絶滅を危惧されるほどに減っているという話はあまり聞いたことがないが……。


「えーと……じゃあ、二人は結婚したんですか?」

「土曜日遊園地一年たったらハネムーン……」

 お祝いしたいと思ったが、鈴鹿の連絡先は聞いていない。八重崎は知っているだろうが、それ経由で突然連絡したら個人情報の漏洩だ。

「そのうち、二人と会えたらいいな」

「ダブルデート……こっそりついてくから……するときは教えて……」

「ついてくるならこっそりじゃなくても……八重崎さんも一緒にどうですか?」

「美味しいネタは大気になって見守るべし……というのが……師匠からの教え……」

 八重崎の言うことは、いつも難しい。

 セレブがヘリ、石油王が自家用ジェットならば、極道は黒セダンだろうかと考えてしまった湊であった。


おしまい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ