表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
振り子  作者: 糸東 甚九郎
第十一幕  静かに始まる、三十五億の争奪戦
99/211

九十九・3,500,000,000

九十九・3,500,000,000



「おぉーい。待ってくれよぉ。ほんとに、これっきりで辞めるわけ?」

「辞めるー」

「なんで? 今日はしょうがないにしてもさ、まーだ、もっといい仕事あるぜぇ?」

「ついてくんじゃねーよ。やってられっか、こんなの! 世話んなったね。さよーなら!」


 紅葉は、スタッフ用通用口を出て行く。

 十六夜は、紅葉の後ろからぴたりとついていき、新たなバイトの交渉をしている。


「おい・・・・・・十六夜岳!」

「ふんふふーん。考え直してくれたかな?」

「ふざけんな! ・・・・・・お前。あのトチベリー25のメンバー、普通じゃねーと思わないんかよ?」

「ふんふふふーん? 普通、とはどういった意味かな?」

「大麻は吸うわ、リンチはするわ、裏表は激しいわ・・・・・・マジであいつら、アイドル?」

「ふふーん。そりゃ、常盤紅葉のものさしで見たら、アイドルじゃないかもなぁー」

「アタシは、何となく感じたんだけど・・・・・・お前、あいつらに『海外公演』なんて言ったけど、何か、変なことでも企んでんじゃねーだろうな?」


 十六夜は、紅葉のその言葉に、ぴくりと片眉を上げた。


「別に? 変なことでも何もないねー。人を疑いすぎは、よくないなぁー」

「しかも、昨日お前の代理で受け取った小包も、四日市だかっていう副社長からだと言えとかさ、いったい、何が起きてんだよ! ヤバいことだろ?」

「バイトのお子様は知らなくていいことさ。業界には業界独自のやり方ってのがあるんだ」

「なんっだそれ? ・・・・・・とにかく、ガブーンバイパー社のヤバさをこの二日間で、よぉーく見せてもらったよ! とんでもねーな、裏は!」

「ふんふふーん。まぁ、勘ぐりすぎだと思うけど。辞めちゃうやつに言っても無駄だと思うけど、最後の交渉をしてみようかなぁー?」

「うん、無駄だな。帰れよ。もうアタシについてくんなっての!」

「そうかー。いや、ある『荷物』を副社長が運びたがってるんだ。それを運び出す手伝いをしてくれれば、今日の分を上乗せして、新たに四百万ほど与えてもいいんだがね?」


 紅葉は足を止め、目を丸くして驚く。


「よ、四百万っ! しかも、今日の分を上乗せって、五百五十万じゃんか! ・・・・・・いったい、お前らの金銭感覚は、どーなってんだよ・・・・・・」

「どう? ちょっと興味出た?」

「別な意味で興味津々だわ! 怪しすぎるだろ! 何だよ、荷物って。また麻薬とかか? それとも、まさか、死体とかじゃねーだろうな? 絶対ヤバいだろ! 嫌だよ!」


 紅葉は目を吊り上げ、語気を強めて十六夜を睨みつけた。


「ふふーん? いいバイトだと思ったけどね? 副社長は、お困りなんだよ。量がちっと多いもんでね? 誰か、それを手伝って欲しいそうなんだ。大変な荷物でさぁ・・・・・・」

「だから、何なんだよ、それは!」

「やる気があるなら、教えてやっても良いけどね? やらないんだろう・・・・・・?」

「だって、わけもわかんねーのに、やるなんて言うわけねーだろ。まぁ、このバイトをやる以前のアタシなら、適当に『やる』って言ったかも知んねーけどな?」

「ふふん。もしやってくれるなら、その百分の一の額を、さらに上乗せしてもいいけど?」


 十六夜は、首をくいっと傾けながら、不敵な笑みを浮かべて紅葉を見る。


「額? なんだ? 荷物って、金なのかよ?」

「まぁ、そういうことにしておこうかなぁ?」

「金を運ぶのに、なんでアタシみたいなバイトが必要なんだよ、副社長ってやつは?」

「ふふふーん。だから、量が多いんだよ。一人じゃ持ち運べないだろうなぁー」

「はぁ? とんでもねー大金ってこと? 一千万円とか?」

「はっ! 笑えるな。お子様の金銭感覚は。まぁ、想像できないか・・・・・・。ふんふふーん」

「なんだと? じゃあ、三千万? いや、五千万! ・・・・・・七千万とか?」

「オークションやってるんじゃないんだよ、常盤紅葉? ・・・・・・ざっと三十五億かなー」

「は、はあぁ!? さっ、さんじゅう・・・・・・ごおくっ? マジかよ・・・・・・っ!」


 さらっと額を言い放った、十六夜。紅葉は、言葉を失って固まった。


「ふんふーん。そうだ。その百分の一、つまりは一パーセントをあげてもいいんだよ?」

「(あ、ありえねーっ! 三十五億の一パーセントって、三千五百万だぞ! 嘘だろ!)」

「信じてないね? まぁ、やらないんだから、どーでもいい話だよね。ふんふふーん」


 紅葉は、十六夜の顔を見たまま、固まっていた。顎先へ、つうっと冷や汗を垂らして。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ