九十七・母は母、娘は娘
九十七・母は母、娘は娘
「ありがとうねー、苺。ほんと、かなり痛みが和らいだわ! ほとんどもう、だいじよー」
「まだ無理しないで? 小紅。とりあえず今日は、応急処置的な感じにしたからね?」
小紅は、トチノキプラザの外にある芝生広場で、苺にマッサージを受けていた。
「びっくりしたね。まさか、あんな不審者が入ってくるなんて。やっぱり怪しかったんだ」
優太は、小紅の横に座り、缶コーヒーを飲んでいる。
「紅葉ちゃん、イベントスタッフのバイトだったんだね。でも、ほんっとウチ、さっきは紅葉ちゃんが昔の小紅に見えたよ! 変な話だけど、あの頃が懐かしいよねーっ・・・・・・」
苺は、お土産ブースのほうを見つめながら、小紅たちと話を続ける。
「あの頃・・・・・・ねぇー。あたしが紅葉の年齢の時だね。デスアダーと戦ってた高校三年生の頃・・・・・・。あーぁ。あたしも、あの頃みたいな若い元気が、今もあればなぁー・・・・・・」
「でも、さっきの不審者の顔に蹴りを入れた時は、やっぱり小紅は小紅だなぁって感じた」
「紅葉がさ・・・・・・。さっき、思わず抱きしめちゃったんだけど・・・・・・。あたしの耳元でさ、『ありがとう、ママ』って言ったんだよ。あたし、もう稽古なんかしてないけど、咄嗟に娘を守るために、かかっていっちゃったなぁー・・・・・・」
小紅は、自分の足を見つめながら、苦笑いしている。その横で、優太も頷いている。
「ウチ、さっきの感じを見て、小紅と紅葉ちゃんは、良い親子なんだなって思ったんだよ。うん! 小紅も優太クンも、紅葉ちゃんはこの先心配ないよ。きっと、だいじだよ!」
苺は、小紅と優太に対し、明るい声で励ました。
「ぼくも、最近、紅葉が何を思ってるのかわからなくてさ。でも、もしかしたら、二人で紅葉に構い過ぎてたのかもしれないって思ったよ。さっき、スタッフとして働いてる紅葉の姿を見たらさ、もう、あれこれ口出さずにした方がいいのかもなぁ、ってね」
「あたしさぁー、つい口出しちゃうんだよな、紅葉には。・・・・・・自重しなきゃなー」
「ふふっ! ウチも、今日二人と会えて元気出たよっ! あー、華蓮にも会いたいなー」
「昨日、華蓮はこのイベントに来てたみたいね。紅葉が、いろいろ話したみたいよ?」
「そうなの? 華蓮も、今や有名女優だもんね。・・・・・・じゃっ。ウチ、そろそろ帰るね!」
「今度ぜひ、夫婦でマッサージ受けに行くからね! またねっ、苺っ!」
苺は小紅と優太に手を振り、すたすたと軽快な足取りで駅の方へ歩いていった。
小紅は、芝生に座りながら、空を見上げて「ふぅ」と息を吐き、寝転がった。
「(・・・・・・紅葉は、あたしじゃない。・・・・・・あたしも、紅葉じゃない。・・・・・・そうだよねー)」
「ん? どうしたの?」
「ううん。何でもない。・・・・・・紅葉、そろそろ終わるのかな?」
「どうだろうね。・・・・・・ねぇ。足が痛くなければ、また、あっちのブース行ってみない?」
「・・・・・・そうね! また、美味しいの食べよっか! 紅葉が終わるまで、さ」
優太は小紅の手を引き、ぐいっと起こす。二人は、物産ブースの方へ並んで歩いていった。




