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振り子  作者: 糸東 甚九郎
第十幕  常盤紅葉と野上アンの明暗
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九十七・母は母、娘は娘

九十七・母は母、娘は娘



「ありがとうねー、苺。ほんと、かなり痛みが和らいだわ! ほとんどもう、だいじよー」

「まだ無理しないで? 小紅。とりあえず今日は、応急処置的な感じにしたからね?」


 小紅は、トチノキプラザの外にある芝生広場で、苺にマッサージを受けていた。


「びっくりしたね。まさか、あんな不審者が入ってくるなんて。やっぱり怪しかったんだ」


 優太は、小紅の横に座り、缶コーヒーを飲んでいる。


「紅葉ちゃん、イベントスタッフのバイトだったんだね。でも、ほんっとウチ、さっきは紅葉ちゃんが昔の小紅に見えたよ! 変な話だけど、あの頃が懐かしいよねーっ・・・・・・」


 苺は、お土産ブースのほうを見つめながら、小紅たちと話を続ける。


「あの頃・・・・・・ねぇー。あたしが紅葉の年齢の時だね。デスアダーと戦ってた高校三年生の頃・・・・・・。あーぁ。あたしも、あの頃みたいな若い元気が、今もあればなぁー・・・・・・」

「でも、さっきの不審者の顔に蹴りを入れた時は、やっぱり小紅は小紅だなぁって感じた」

「紅葉がさ・・・・・・。さっき、思わず抱きしめちゃったんだけど・・・・・・。あたしの耳元でさ、『ありがとう、ママ』って言ったんだよ。あたし、もう稽古なんかしてないけど、咄嗟に娘を守るために、かかっていっちゃったなぁー・・・・・・」


 小紅は、自分の足を見つめながら、苦笑いしている。その横で、優太も頷いている。


「ウチ、さっきの感じを見て、小紅と紅葉ちゃんは、良い親子なんだなって思ったんだよ。うん! 小紅も優太クンも、紅葉ちゃんはこの先心配ないよ。きっと、だいじだよ!」


 苺は、小紅と優太に対し、明るい声で励ました。


「ぼくも、最近、紅葉が何を思ってるのかわからなくてさ。でも、もしかしたら、二人で紅葉に構い過ぎてたのかもしれないって思ったよ。さっき、スタッフとして働いてる紅葉の姿を見たらさ、もう、あれこれ口出さずにした方がいいのかもなぁ、ってね」

「あたしさぁー、つい口出しちゃうんだよな、紅葉には。・・・・・・自重しなきゃなー」

「ふふっ! ウチも、今日二人と会えて元気出たよっ! あー、華蓮にも会いたいなー」

「昨日、華蓮はこのイベントに来てたみたいね。紅葉が、いろいろ話したみたいよ?」

「そうなの? 華蓮も、今や有名女優だもんね。・・・・・・じゃっ。ウチ、そろそろ帰るね!」

「今度ぜひ、夫婦でマッサージ受けに行くからね! またねっ、苺っ!」


 苺は小紅と優太に手を振り、すたすたと軽快な足取りで駅の方へ歩いていった。

 小紅は、芝生に座りながら、空を見上げて「ふぅ」と息を吐き、寝転がった。


「(・・・・・・紅葉は、あたしじゃない。・・・・・・あたしも、紅葉じゃない。・・・・・・そうだよねー)」

「ん? どうしたの?」

「ううん。何でもない。・・・・・・紅葉、そろそろ終わるのかな?」

「どうだろうね。・・・・・・ねぇ。足が痛くなければ、また、あっちのブース行ってみない?」

「・・・・・・そうね! また、美味しいの食べよっか! 紅葉が終わるまで、さ」


 優太は小紅の手を引き、ぐいっと起こす。二人は、物産ブースの方へ並んで歩いていった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 小紅と紅葉のタッグは最強ですね! 親子の壁も破壊してしまいそうです(笑)
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