九十二・ミーは、鳥嶋やっちゃん
九十二・ミーは、鳥嶋やっちゃん
・・・・・・ずちゃり ・・・・・・ずちゃり
・・・・・・ずちゃり ・・・・・・ずちゃり
「・・・・・・はふふ。はひひ。ひひひひ・・・・・・」
残暑の厳しい炎天下を、長袖のパーカーを着た鼻息荒い男が、トチノキプラザに近づきながら歩いている。その足取りは、千鳥足のようにふらりふらりと揺れている。
「・・・・・・トチベリー。トチベリー。わきゃ! ・・・・・・ゆ、ゆるさないぞぉ。ミーを、気持ち悪い目で・・・・・・見て! ミーは、鳥嶋やっちゃん。ミーは、鳥嶋やっちゃん!」
それは以前、紅葉にやられた、あの鳥嶋安男だった。
・・・・・・ずちゃり
・・・・・・ずちゃり
・・・・・・ずちゃり
ひょろっとした青白い顔に、痩せこけた手足。そのせいか、パーカーやズボンはブカブカ。
右に左にゆらりゆらりと揺れながら、鳥嶋はトチベリー25がいる会場に近づいていく。
「(ね、ねぇ。あの人、真夏なのに長袖で、変じゃない?)」
優太が、焼きホタテを食べながら、小紅の耳元で囁く。
「(変だね。・・・・・・まだ、あんなやつが今時いるのね・・・・・・。何事も無いといいけど)」
小紅も、蒸し牡蠣を頬張りながら、ホール内へ向かう鳥嶋を目で追っていた。
「(んんー? あやっしいなぁ! 真夏だよ、今・・・・・・)」
苺も、別なテントから、イチゴ味のかき氷を食べながら、鳥嶋の様子に気づいていた。
建物の中では、既に握手会が始まっていた。次々と、トチベリー25との握手を終えたお客さんが出てくる。
・・・・・・ずちゃり
・・・・・・ずちゃり
・・・・・・ずちゃり
「はひひ。ふへひはひ。・・・・・・ト、トトト、トチベリー25! かくごしろ! ふひひ!」
パーカーのフードをぐいっと被り、鳥嶋は中へ入っていった。
「(もぐもぐ)やだな(もぐもぐ)くれはは(ごくん)中にいるのかな?」
「握手会はフリーで入れるみたいだから、ぼくたちもそろそろ中に行ってみる?」
小紅と優太は、その様子を心配そうに見つめ、建物に向かう。
別なところから、苺も、小紅と優太が建物に入ろうとする姿を見つめていた。




