九十一・懐かしい顔ぶれだね
九十一・懐かしい顔ぶれだね
「うわー。すごく混んでるよ! これじゃあ駐車場も満車なわけだ!」
「紅葉が言ってたけど、中に入るのはチケット制みたいよ? 優璃も昨日来たんだって」
「そうなのかぁ。紅葉がどんな感じでバイトしてるのか、見られると思ったんだけどなぁ」
「でも、外のお土産コーナーとか、物産コーナーは、普通に入れるんだってさ。あー、いろんなお店が出てるねーっ! 外を歩くだけでも楽しそうで、いいかもね」
「うちの会社の企画部が担当してるブースだ。・・・・・・なんか懐かしいね。この感じがさ?」
「やっぱり、そう思う? 昔、こうして二人で県庁前のイベント行ったよね!」
「そうそう。パンのイベント! 懐かしいなぁ。あの時、ぼくたちは初めて華蓮さんと知り合ったんだよね?」
「チンピラみたいなろくでなしを退治した時だよね? あはは。懐かしいね!」
小紅と優太は、紅葉が警備しているイベント会場の外に来ていた。優璃は穂花と図書館へ勉強をしに行ったらしい。夫婦は並んで腕を組んで歩き、いろんなお店を眺めている。
「・・・・・・ん? んん?」
・・・・・・すたり すたり すたり すたり
「やっぱりー。似てる二人だと思ったぁ!」
「え? ああ。苺ーっ!」
「こんにちは、苺さん! あれ? 今日はひとり?」
ギンザケのお店を見ていた二人のところへ歩み寄ったのは、冬月苺だった。
「そっか。今日は、診療はお休みか。旦那さんや娘さんは?」
「ウチ一人だよ。たまには一人で羽伸ばしてきなよー、ってね。小紅たちも、休み?」
「うん、休みだよ。ここのイベントで昨日から紅葉がバイトしててね。見に来たけど、チケットが無いからだめでさ。適当に、外のブースを見回ってたのよ」
「そーなんだねー。ウチも、たまたま宇河宮まで来たら、なんかここが賑わっててねー。試しに寄ってみたんだ。中のアイドルコンサートは、すごく盛り上がってるみたい!」
「へー。しかし、すごく賑わってるね。ぼくの会社がここのブースは担当してるんだけど、これなら、二日間の売れ行きも好調だろうし、お客さんの動線も・・・・・・」
優太は、周囲を見回し、何度も頷いている。
「ほらほら。今日は仕事のこと忘れて、ゆっくりしようよ? 苺は、来たばかりなの?」
「さっき来たばかりだよ。あそこで売ってる三陸産蒸し牡蠣、すっごく美味しかったよ」
「ほんと! ねぇ、行ってみようよ。あたし、朝ごはん軽かったから、お腹空いてさー」
「あとね、アイドルのイベント、握手会はチケット無くても入れるんだってさ?」
「そうなんだ。じゃあ、その時にでも紅葉のとこ行ってみようかな。苺さん、ありがとう」
「はいはーい。ごゆっくり! 相変わらず仲の良いご夫婦だねっ、小紅も優太クンもー」
小紅は苺に手を振って別れ、優太の手を引いて、三陸コーナーにぐんぐんと進んでいった。




