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振り子  作者: 糸東 甚九郎
第九幕  救世主、あらわる?
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八十三・監視している者たち

八十三・監視している者たち



   ぎしり  ぎしり  ぎしり・・・・・・


「失礼します」

「すまないねぇ、一之瀬君」

「いえ。・・・・・・お呼びでしょうか?」


 ガブーンバイパー社の本社ビルでは、社長室に一之瀬が呼ばれていた。


「これを見て下さい。先程、地下の監視カメラがとらえた映像です」


 五所ヶ原と二瓶は、部屋に入ってきた一之瀬にタブレット端末を渡し、動画を見せる。


「ぬっ! ・・・・・・これは!」


 その動画を見て、驚く一之瀬。そこには、地下のある一室の前で何かを話している副社長と十六夜の姿が映っていた。


「なぜ、副社長と十六夜が、ここに。・・・・・・しかも、この部屋は・・・・・・」

「おかしいですよね。十六夜部長と副社長が、わざわざこんなところで話すなんて」

「んぬっふっふっふ。そうだよねぇ? おかしいねぇ? ・・・・・・ワシも、驚いたよ」

「いったい、これは・・・・・・。社長、この部屋には、あの金が厳重に保管してあります。副社長や十六夜は、まさか、もう知っているのでしょうか?」

「どうなんだろうねぇ。だがねぇ、この映像、どうも十六夜君が副社長に何かを伝えているんだがね? 音声までは入っていないので、わからんのだよ」

「十六夜が・・・・・・。ですが、社長。十六夜は今日、トチベリー25のメンバーに大麻などを副社長からの差し入れと言って渡しているはずです。まさかとは思いますが、我々を裏切ってまで、今更、副社長と結託するメリットはないと思いますが・・・・・・」

「んぬっふっふっふ! だが、その大麻も、十六夜君自身が受け取って渡したのではない。常盤紅葉を代役として受け取らせ、トチベリー25に与えたようだねぇ?」

「何ですって? 常盤紅葉さんに? ・・・・・・その時、十六夜は・・・・・・」

「それがこの映像の時間のようです。常盤紅葉と取引をした男は、大麻取引の証拠とならないよう、既に消しました。三田という男が十六夜部長に頼まれ、取引をしたようですが」

「消した? 手早いことだ、二瓶秘書。その男は、十六夜から頼まれたと言ったのか?」

「そうです。・・・・・・十六夜部長の動きは、よくわかりませんね。一之瀬専務。部長は、副社長とここで何か話すために、あの時間、常盤紅葉に代役をさせたとしか思えません・・・・・・」


 一之瀬は、再びタブレットに目を落とし、眉間にシワを寄せて画面を見つめる。


「(なぜだ。あの三十五億円は、私と社長、そして二瓶秘書の三人しか知らないはず)」

「・・・・・・一之瀬君。・・・・・・トチベリー25のメンバーは全員、十六夜君がスカウトしてきたメンバーだったよねぇ、確か・・・・・・」


 五所ヶ原は、モデルガンを丁寧に拭きながら、眼鏡をきらりと光らせる。


「そうです。七人全員が施設育ちで、そこからスカウトをして、世間を賑わせましたね」

「・・・・・・明日で、トチベリー25は終了だ。海外に行ってもらうことは、伝えてある?」

「はっ。それも、四日市副社長からの提案ということで、彼女たちには伝えましたので」

「あと・・・・・・。あの常盤紅葉にやられた三人は、廃棄処分にしたかなぁ?」


 一之瀬は、二瓶の方をふっと見る。二瓶が数秒後、言い出しにくそうに口を開いた。


「社長・・・・・・。牛原琢郎と鹿山金平は、ドラッグ漬けにして、そのままバングラデシュ行きのコンテナに乗せました。ですが申し訳ありません。鳥嶋安男は逃げられまして・・・・・・」

「逃げたの? ふぅん。・・・・・・それは、ミスだなぁー、二瓶君。一之瀬君・・・・・・」


 ゆっくりと重々しい声になる五所ヶ原に向かって、さっと頭を下げる二瓶と一之瀬。

 両耳に光る星型のイヤリングを揺らし、ゆっくりとその場で五所ヶ原が立ち上がる。


「トチベリー25は、我が社にはもう必要ない。金を上げろだの、ワガママでうるさくてかなわん。・・・・・・一之瀬君。明日のイベント後、本人たちから卒業発表でもさせようか」

「・・・・・・はっ。・・・・・・承知いたしました、社長」

「んぬっふっふっふ! あの金は、ワシが手中にしている限りは誰も触れられんよ。大矢採石場跡から発掘した時は、信じられなかったがな。ぬっふっふっふ・・・・・・」

「そうですね。大矢採石場跡の隠し部屋から見つけた三十五億が、まさかガブーンバイパー社の地下にあると、誰が思うでしょうか? 今は五所ヶ原社長の『埋蔵金』ですね」


 二瓶が、タブレットの映像を見つめながら、にやっと笑う。


「一之瀬君。・・・・・・十六夜君が変な暴走をしないように、よく注意しておきたまえよ?」

「・・・・・・はっ。・・・・・・失礼します」


 一之瀬は、五所ヶ原に頭を下げ。社長室を出た。


「(何ということだ。十六夜。いったい、副社長とあの場所で何を・・・・・・)」


 目頭を指で押さえ、ふるふると頭を振ってから、一之瀬は自分の部屋に戻っていった。


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