八十一・紅葉、呆れる
八十一・紅葉、呆れる
「・・・・・・昼間からって、どんだけ飲んできたんだよ。限度ってもんがあるだろうよ」
「わーかってんだけどさ・・・・・・。あー・・・・・・さすがにあたしも飲み過ぎたかも」
「これじゃ、水穂ちゃんのこと言えないな、ぼくたちも・・・・・・」
「はい、ママもパパも、お水飲んで」
「「 あ、ありがとう、優璃・・・・・・ 」」
帰宅早々、キッチンチェアにどさりと座って、テーブルに突っ伏す小紅と優太。
水穂を見送り、澪と解散したその後、二人はバス待ちの間に立ち飲みバーでカクテルを一杯ずつ飲んできたらしい。それがどうやら、かなり強めだったようだ。
「ばかじゃん! どんくらい飲んだらベロベロになるか、その歳になりゃーわかるもんじゃないんかよ? 自分のキャパを超えて飲んじまうよーじゃ、話になんねーなー」
「・・・・・・紅葉。・・・・・・今日はあんたと言い争う元気も無いわ、あたし・・・・・・」
「紅葉に言われちゃうなんてね。・・・・・そういうことを言える年齢になったんだね・・・・・・」
小紅も優太も、突っ伏したまま、ほとんど動かない。
「そういえば優璃は? なんか食うか?」
「いんなーい。ほのかちゃんちで、たっぷりと、およばれしてきたもーん」
「あっそう。アタシはー・・・・・・。スープ春雨でも食うかなー」
紅葉は戸棚から、インスタントの春雨を出し、お湯を注いでいる。
「お姉ちゃんは、そういえば今日、どうだった?」
「・・・・・・なにが?」
「バイトだよー。すごいよね! スタッフだったなんてさ! いいことあったぁ?」
インコを鳥かごから出し、リビングのソファーに座って指で撫でている優璃。紅葉は、スープ春雨をすすりながら優璃の隣に座り、リモコンでテレビの電源を入れた。
画面にはなんと、あのガブーンバイパー社の社長である五所ヶ原旭が映っていた。
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「本日は、数多の人材を輩出し、数多くの業種を支える企業、ガブーンバイパー社の五所ヶ原旭社長にお越しいただいております!」
「んぬっふっふっふ! 五所ヶ原です。どうもぉー。よろしくだよぉ!」
「社長。さっそくですが、いま人気のトチベリー25も、ガブーンバイパー社の芸能事務所に所属しているんですね? 礼儀正しくて、素晴らしい子たちですよねー」
「んぬっふっふぅ! まぁ、そうだね。多くの皆様からご支援いただき、うちのトチベリー25も、華々しくやっておりますよ。感謝いたしますね。ぬっふっふぅー」
「それに関連した重大発表が、明日、栃木のイベントであるそうですが?」
「んぬっふっふっふ! そうだね。トチベリー25は、明日・・・・・・」
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・・・・・・プンッ!
「えー? お姉ちゃん! ゆり、見てたのにぃー」
紅葉は、目を吊り上げて、テレビの画面を消してしまった。
「見なくていい、こんなの! ・・・・・・くっそぉ。なにが、ご支援いただき、だ!」
「何怒ってんのよ、お姉ちゃんはぁー。さいあくー。ママー、お姉ちゃんがー・・・・・・」
優璃は、肩にインコを乗せ、小紅たちの方へ泣きついた。二人は未だに、重症のようにぐったりとして、ちょびちょびとグラスの水をすすっている。
「(ふざけんなよ、ガブーンバイパー社! アタシがその化けの皮、剥がしてやるから!)」
紅葉は、眉間にシワを寄せながら春雨をすすり、一気にスープまで飲み干してしまった。




