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振り子  作者: 糸東 甚九郎
第九幕  救世主、あらわる?
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七十六・懐かしメンバーの飲み会

七十六・懐かしメンバーの飲み会



   わいわいわいわいわいわいわいわい

   わいわいわいわいわいわいわいわい


「お待ちどぉさまでしたーっ! こちら、大ジョッキですねー。あと、枝豆ですー」

「いっひっひぃーっ! あーりがとぉーござーまぁーす! さぁー、飲みましょー」

「ちょっと? 水穂ちゃん、だいじなのかなぁ? 飲み過ぎてない?」

「いつもこうですよね、小紅サン?」

「そうだね。いっつもこうだね。まだまだベロベロになると思うよ?」

「ええー? ・・・・・・み、水穂ちゃんー・・・・・・」

「まーだまだぁ、わたしは飲むのですよー。おねーさぁん! おさしみ持ってきてぇーっ」


 宇河宮市の中心にある商店街「オオイヌ通り」は、地元民や観光客で賑わう繁華街だ。

 赤提灯と縄のれんが入口にかかり、渋い雰囲気を醸し出している居酒屋に小紅たちはいる。既に水穂は、お昼のバイキングでワインをグラスで十杯飲み、そのあとのカラオケ二次会でもレモンサワーを中ジョッキで五杯飲み、かなりの勢いで酔った状態。そこからの三次会だ。


「・・・・・・小紅サンちも、高校三年と中学三年の女子二人を抱えてるんじゃ、大変ですね」

「澪んちも、あっという間だよ。たしか、上が女の子で、下が男の子だよね?」

「そうです。(れい)が十歳で、寿(ひさし)も七歳になりました。・・・・・・あっという間、かぁ」

「ぼくんちは二人とも女の子だけど、澪ちゃんちはどっちもいるから、また違った感じかもね? うちは、紅葉は元気有り余ってるくらいだけど、逆に優璃はおとなしすぎてさー」

「紅葉もなぁー、最近ちょこっと落ち着き出たかなと思ったら、まーた危ないことに首突っ込んでさぁ? 毎日、ヒヤヒヤもんよ。・・・・・・でも、あたしはね、あの子は元々真面目ってわかってる。だからきっと、今、自分自身で迷って揺れ動いてて、ああしてるのよ」


 小紅は、枝豆をぷちんとつまんで中身を取り出し、ぱくりと口へ放り込む。

 澪と優太は、そんな小紅を見ながら、ハイボールをごくりごくりと二口飲む。


「紅葉ちゃんは、どう見ても、小紅サンに似てますよね? 見たのは半年前ですけど」

「ぼくもそれは思ってるんだ。昨日、紅葉は、さらに言動がすごく似てきたなぁって」

「そーなのかなぁ、やっぱり。・・・・・・あたし、高三のとき、そんなだったかなぁ?」

「行動原理は違いますが、なんか話を聞いてて、だいぶ似てるかと。さすが親子ですね」

「まぁ、『蛙の子は蛙』って言うしさ、あたしと紅葉が似るのは必然かもねー・・・・・・」


   むー  むー  むー  むー


「あれ? ・・・・・・会社の人からだ。ごめん、二人とも。・・・・・・ちょっと電話してくるー」


 優太は、スマートフォンを耳に当てながら、店の外へ一旦出ていった。


「小紅サンもよく、祖父の早乙女師範に昔、危ないことには首を突っ込むなよって、言われてましたよね。早乙女師範・・・・・・昨年の百寿のお祝いから、変わらずお元気ですか?」

「元気よ。だいぶ弱ってるけど。施設は先月から、美布の『宝珠(ほうじゅ)(えん)』って特養に移ったの」


 小紅はにこっと笑い、いちごサワーを飲む。澪も「そうなんだ」と言って、ふっと微笑む。


「早乙女師範、今年で百一歳か。長生きですよね! よく毎日、お酒飲んでましたよね」

「ほんと毎日、お酒飲みまくってたもんなぁ、じーちゃん。だから長生きなのかなー?」

「え? ・・・・・・だとしたら・・・・・・」

「なんか、ね? ・・・・・・百歳まで生きたりして・・・・・・」


 澪と小紅は、横で大ジョッキを抱えてビールを飲む、ごきげん模様の水穂へ視線を向けた。


「おにーさぁん! ちゅーもんっ! これと同じヤツ、ちょーだいーっ! あとねぇーっ、冷や奴とー、アジの塩焼きとー、海ぶどうとー・・・・・・。何でもいいから持ってきてっ!」

「頼みすぎだっての、水穂! あたし、もうそんなに食べらんないし」

「そーんなこと言わないでよぉー。まだねー、わたし、飲み足りないー・・・・・・」


   ・・・・・・むぎゅ!


「ふにに! こべにせーんぱぁいー? ・・・・・・むぎゅ。むぐぐー・・・・・・」


 小紅は、水穂の頬をがしっと掴み、飲むのをストップさせた。掴まれてひょっとこ顔になった水穂は、じたばたとしている。そこへ、電話を終えた優太が、笑顔で戻ってきた。


「ごめんごめん。いやー、仕事の話で・・・・・・って、二人とも、何やってるの?」

「・・・・・・飲み過ぎ!」

「・・・・・・ふぁい・・・・・・」

「水穂も四十を過ぎたいい大人なんだから・・・・・・。もう、ストップだかんね?」


 真っ赤な顔でへべれけ状態の水穂だが、小紅はほとんど顔色を変えていない。


「小紅サンも、ずっとこの調子でいきそうですね。百歳過ぎても同じノリな気がしますよ」

「やめてよー。あたし、そんな年齢まで水穂の相手してらんないよ。・・・・・・でも、いつまでも、こうして楽しくお酒を飲み交わしたいね?」

「そうですねー。子供たちがもっと大きくなれば、わたしももっと、都合つきやすくなるので、いつでも飲みに行きますよ」

「いつかここに、ぼくたちの次の世代も交えて、飲み交わすのも楽しいかもしれないね」

「そうね。それはあたし、ちょっと楽しみかも。・・・・・・紅葉は、勝手に家で飲んでたみたいで、それはダメだって言ったけどね?」


 小紅は、左手で水穂の頬をぎゅっと掴んだまま、笑顔で紅色のいちごサワーを飲み干した。


「お待ちどぉさまでしたーっ! こちら、大ジョッキですー。あと、刺身の盛り合わせと、冷や奴と、アジの塩焼きに海ぶどうになりますねー」


 次々と、水穂が頼んでいたものが運ばれる。小紅、優太、澪は、何度も瞬きを繰り返す。


「ねぇ、水穂。いったい、こんなに誰が食べんのよ・・・・・・って、おい! 水穂?」

「・・・・・・zzZ あしたはー・・・・・・おゆうぎしましょー・・・・・・zzZ ふにゃーzzZ」

「あ! 水穂ちゃん、飲むだけ飲んで、騒ぐだけ騒いで寝ちゃった! 最近こうなの?」

「「 ・・・・・・そう! 」」


 その後、酔いつぶれた水穂を抱えて三人は会計を済ませ、店を出た。小紅は水穂のスマートフォンを借り、「迎えに来られますか?」と、水穂の夫である(わた)()瀬良(せりょう)()に頼んでいた。


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