七十五・不機嫌な紅葉ちゃん
七十五・不機嫌な紅葉ちゃん
バルルルルンー バルルルルンーッ・・・・・・
紅葉を後ろに乗せ、夕暮れ時の幹線道路を進む、玄桐の大型スクーター。
「・・・・・・な、なぁ、紅葉? いったい、どうしたんだよぉー? どうしてそんな、むくれて・・・・・・」
玄桐が苦笑いしながら、紅葉に話しかける。しかし、紅葉はむすっとして、黙ったまま。
目を瞑って腕を組み、口を尖らせている紅葉。
「(まいったなぁ。バイト終わってから、ずーっとこれだよー・・・・・・)」
バルルルルンー バルルルルンーッ ・・・・・・きいっ
交差点で止まり、信号待ちになった玄桐の目の前を、右に左にたくさんの車が行き交う。
「・・・・・・。・・・・・・。ちっ! ・・・・・・あぁーっ、もおぉーっ!」
突然目を開き、玄桐の背中をばしんと叩く紅葉。
「い、いった! な、なんだよぉー。おいら、何かしたかぁ?」
「別に! ごめんよ。・・・・・・あーっ! くっそぉ! ほんっとにアタシ、屈辱的だった!」
「な、何が何だか、おいらには・・・・・・」
トゲトゲしたオーラが、紅葉から滲み出ている。玄桐は、前を向いたままだが、紅葉のその異様な気配を背中でひしひしと感じ取っていた。
「玄桐! ・・・・・・ちょっと、アタシの家に戻るのは待って! どっか寄っていこう!」
「え? ええ? ・・・・・・じゃ、じゃあ・・・・・・ホテルにでも・・・・・・」
・・・・・・ドガアッ!
「いてぇーーーっ!」
紅葉の拳が、玄桐の後頭部を叩いた。
「勘違いすんな、バーカ! そうじゃねーっての。ガッツリ、何か食べようって話だよ!」
「あ、ああ! そういうことね。へへっ・・・・・・」
「なんでアタシが、玄桐とホテルなんか行かなきゃなんねーんだよ。バカ!」
「・・・・・・い、いやぁ。紅葉もお疲れの様子でいらっしゃるようなのでー・・・・・・」
「だから、ガッツリ何か食おうって話だよ! 今日は、ママもパパも夜まで戻らないんだ」
「え? じゃあ、優璃ちゃんひとりじゃんか。だいじなんかよぉ?」
「さっき、優璃からメッセージあったんだよ。友達の家で夕飯食べてから帰るってさ」
「あ、そうなんかー。・・・・・・紅葉、今日、なんか大変だったのかぁ?」
「・・・・・・。・・・・・・あんっのバカ女共ぉーっ! アタシをバカにしやがってーっ!」
玄桐は、紅葉が消そうとして燻っていた火に、また油を注いでしまったようだ。
信号が青になって再び進んでいく中で、ずっと紅葉は玄桐の後ろで怒り狂って騒いでいた。




