六十三・紅葉のバイト
六十三・紅葉のバイト
がやがやがやがやがやがやがやがや
がやがやがやがやがやがやがやがや
わいわいわいわいわいわいわいわい
わいわいわいわいわいわいわいわい
「あー、もぉ! うるっせぇな。何だよこの人だかりは!」
「しゃーねぇよ。トチベリー25って、人気アイドルだしさぁー。大人気なんだぜぇ?」
「アタシ、興味ねーもん。・・・・・・怪しいオタクみたいのがいっぱい。朝早すぎだろ!」
紅葉と玄桐は朝から、宇河宮市中心部の「トチノキプラザ」というイベントホールにいる。
開館まであと三時間。だが、既に会場周囲には多くのファンが集い、凄まじい賑やかさ。
「(なんだ? アタシとタメくらいの客も来てやがんなー。わけわかんねーな・・・・・・)」
よく見ると、アイドルオタク集団の中には、紅葉と同年代の女子高生の姿も数名見える。
ブウウゥゥン ガチャ! すたっ
その時、黒塗りの車が会場の裏手に停まった。
そこから降りてきたのは、十六夜岳と一之瀬暁。
「・・・・・・常盤紅葉。おぉーい。こっちだこっち!」
「あ! 玄桐、あっちっぽいぞ」
紅葉は玄桐と、十六夜たちの方へ向かった。
「思った以上の客入りのようだな。常盤紅葉さん、まぁ、初仕事で大変だろうが、よろしく頼むよ? これから、トチベリーのリーダーや、ゲストの人とも会ってもらうからね」
一之瀬がダンディな声を響かせ、紅葉をスタッフ通用口へ案内する。
「あ! あなたは、ここから先へは入れないよ。契約してるのは、常盤紅葉さんだけだからね? 悪いが、ここまでで」
一緒についていこうとした玄桐を、一之瀬が止めた。
「え? な、なんすか? おいらは、紅葉のマネージャーとして・・・・・・」
「ふんふふーん。・・・・・・まぁまぁ、遠慮してくれ。お呼びでない、ってことだなー」
「そ、そんなぁー。だめっすか? あ! じゃあ、ガブーンバイパー社に、おいらんち特製のネジを寄付するってのは? それがだめなら、二万円を寄付するんでー・・・・・・」
玄桐は、何を言ってるかよくわからない。そんな内容でごまかすように、十六夜をすり抜けて中へ入ろうとする。だが、当然ながら通さないと言った感じで止められる。
「ふふーん。だめだめー。・・・・・・ネジ? なんだそりゃ。うちの会社が人員を派遣してる先で、そんなものは大量に作ってるよ。言ってる意味も、よくわかんないなぁー?」
「そこを、何とか。おいらも、紅葉と中へ行きたいんでー・・・・・・」
「玄桐、心配すんなって! 送ってくれてありがと! 終わるまでどっかで待っててよ」
一之瀬や十六夜と共に、中へ進む紅葉。玄桐に対して、にこっと笑顔を見せ、ピースサインをして奥へと進んでいった。
バタリと黒いドアが閉められ、「関係者以外立入禁止」の文字が玄桐の目の前に。
「なっ、なんだよぉー。・・・・・・ちぇっ! くそったれぃ! おいら、ヒマだよぉー」
玄桐は、近くにあったベンチにだらしなく座り、タバコの煙をぷかあっと吹き上げる。
「(何事もなく終われば、今日と明日で三百万。すげぇなぁ、紅葉。頼んだぜぃ)」
スズメの群れが、空を飛んでいく。玄桐は、ただひとり、タバコを吸い続けていた。




