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振り子  作者: 糸東 甚九郎
第六幕  水崎玄桐 対 楢崎翔
52/211

五十二・副社長は常識人?

五十二・副社長は常識人?



「・・・・・・と、いうことですので。当日は、トチベリー25の警備は、この子に任せます」


 一之瀬が、副社長室でにやりと笑いながら、資料の説明をしている。


「なに? 私は聞いていないよ、一之瀬専務! いったい、これは・・・・・・。しかも、この子はまだ十八歳になっていないではないか! だめだ、こんな雇用は! いかんよ!」


 副社長の四日市晩が、ものすごい剣幕で一之瀬の資料を掌で叩く。しかし、一之瀬は笑ったまま、副社長の顔をじっと見つめる。


「社長直々に、お与えになった仕事です。なぁに、心配要りません。社長のお考えで、きちんと筋は通してありますので」

「社長、って・・・・・・。きみ! 私の決裁もなく、飛び越えて社長に? そういうところが、この会社は組織として破綻しているんだ。これは、早急に改善せねばだね・・・・・・」

「んー。副社長。まぁまぁ。お怒りはごもっともです。しかしですね、アイドルたちの目の前に、重々しい警備員を配置するわけにもいかない。この常盤紅葉という少女は、警備員以上の腕前です。あぁ、確か・・・・・・副社長はあの時、出張でした。緊急を要する人事案件でしたので、仕方なく、こうして事後決裁になられたこと、お許し下さい」


 一之瀬は、ぺこりと頭を下げる。副社長は「ううぬ」と唸っている。


「こんなのは、違法な雇用だとわかっているのかね? 万が一の場合、責任を取りきれんほどのことになったらどうする! それに一之瀬専務、我が社はだね・・・・・・」

「おっと。副社長。もう、いいじゃありませんか? とにかく、社長以下、すべての重役がもうこの決定を良しとしたんです。ご了承いただきたく存じます」


 そう言って、一之瀬は副社長室から、笑みを絶やさないまま出て行った。

 副社長は、その後一人で、テーブルをばんっと叩き、一之瀬が持ってきた資料をばさっと横に放り投げてしまった。



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