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振り子  作者: 糸東 甚九郎
第六幕  水崎玄桐 対 楢崎翔
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四十九・がんばれ玄桐くん

四十九・がんばれ玄桐くん



   バチイイィンッ!  ドシャアアッ!


 肌を打つ乾いた音が、路地裏に響く。


「い、いってぇーっ! ・・・・・・こ、こいつ、つえー」

「いい加減にしろよ。まともな喧嘩もできない、ポンコツの不良じゃないか」

「うるっせぇー。おいらは、紅葉に助けてもらってんだ! おまえがおいらと紅葉のこと、どうこう言える立場じゃねーだろがーっ!」


   ぶんっ  ぶんっ  ぶんっ  ぶんっ


「ぬぉ! あ、あたんねー。紅葉ならいつも喧嘩で、こうやって当たってるはずなのに」


   ・・・・・・シュンッ  バチイイィィンッ!


 玄桐の拳は、空を切る。楢崎の拳は、高速で玄桐の顔面を捉える。


「いてぇーっ! く、くっそやろぉー」

「諦めろよ。・・・・・・お前じゃ、俺に触れることすらできないんだからな」

「だまれ、ぼっちゃん! おいらはな。・・・・・・おいらは、紅葉じゃなきゃ、だめなんだよ」

「なんだそれ? お前、常盤に惚れてるってことか。・・・・・・ますます気に入らないな」

「うるせーよ。おまえこそ、何なんだよ。紅葉の何がわかるってんだ!」

「常盤は、お前みたいな不良と一緒になんか、いたくないはずだ。今の常盤は、俺の知る常盤じゃない。以前はもっと、真面目で清楚で、学年でも人気のある人だったんだ」


 楢崎は、学生服のポケットに両手を突っ込み、倒れた玄桐を見下ろしている。


「へへっ! なんだよ。おまえこそ、紅葉に惚れてるような言い方じゃねーかよ? 紅葉が、根は真面目なんだろうなんて、おいらだってわかってたぜ? でも、紅葉はそんな自分の殻をぶっ壊してまでも、不良になりきれず、モヤモヤしたまま突っ張ってんだよ。そこまで、おまえ、わかってたか?」

「・・・・・・うるさいな。他校生の不良の分際で。・・・・・・とにかく、学級委員長として、常盤は俺が元に戻させる。お前みたいなやつとの関わりは・・・・・・」

「うるっせぇーっ!」


   ・・・・・・ダダダダダッ  がしいっ  どさあっ!


 玄桐は、起き上がって猛ダッシュし、楢崎の胴体にしがみついて薙ぎ倒した。


「・・・・・・つっ! 何しやがる!」


   ぽこぉ!  ぽこん!  ぽこん!


 楢崎の顔を両手で殴る玄桐。パワーはないが、男の意地を乗せた拳で、叩く。


「おいらにとって、紅葉は、愛だの恋だのじゃねーんだ。安っぽいこと、言うな!」


   ・・・・・・ドガアッ!


 足で玄桐を撥ね飛ばす楢崎。二人は立ち上がり、息を切らせながら睨み合っている。

 そんなことを知る由もない紅葉は、二人の教師と、まだ話を続けていた。


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