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振り子  作者: 糸東 甚九郎
第六幕  水崎玄桐 対 楢崎翔
48/211

四十八・その頃、紅葉は・・・・・・

四十八・その頃、紅葉は・・・・・・



「常盤? ・・・・・・今からなら、検定ギリギリ間に合うが、どうする?」


 進路指導室で、教員二人が、紅葉と話し合っていた。一人は担任の笹塚先生。もう一人は、進路指導主任の榎田(えのきだ)達也(たつや)先生だ。


「商業簿記検定、か。・・・・・・アタシ、興味はないけど・・・・・・」

「常盤さん? でも、やっぱり就職を考えてるなら・・・・・・」

「受けるよ。・・・・・・やってみる」

「「 え! 」」

「ほ、本当に? 常盤さんが、やってくれるなんて」

「何だよ? アタシが受けるのが、そんなに意外か?」


 笹塚先生は、首を横に振る。その隣で、榎田先生も、頷いている。


「で? 何をどうすればいいの?」

「勉強をちょっとやって、あとは、試験に臨めばいい。笹塚先生は商業科の先生だから、そこんところはよく教えてもらえる。しっかり聞きなさい」

「えぇ? 勉強するぅ? そんな暇、アタシ、今はないよ!」

「でもね、常盤さん。いままで学校も休んだ分、取り戻さないと。まして、検定を受けるとなれば、やっぱり、ぶっつけ本番ってわけにはいかないでしょう?」

「なんだよぉー。受けるなんて言わなきゃ良かった。・・・・・・あー。やっぱり、アタシは、こういうとこがダメだー。・・・・・・玄桐、今ごろ正門で待ってっかな? あー・・・・・・」


 机に突っ伏す紅葉。榎田先生は、その横に、どさりどさりと対策ガイドを置いていった。


「(今日は、最後のバカ狩り日なのに。すまないね、玄桐。もーちっと待ってて・・・・・・)」

 

 しばらく、紅葉の口から出るため息は、止まることがなかった。


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