四十八・その頃、紅葉は・・・・・・
四十八・その頃、紅葉は・・・・・・
「常盤? ・・・・・・今からなら、検定ギリギリ間に合うが、どうする?」
進路指導室で、教員二人が、紅葉と話し合っていた。一人は担任の笹塚先生。もう一人は、進路指導主任の榎田達也先生だ。
「商業簿記検定、か。・・・・・・アタシ、興味はないけど・・・・・・」
「常盤さん? でも、やっぱり就職を考えてるなら・・・・・・」
「受けるよ。・・・・・・やってみる」
「「 え! 」」
「ほ、本当に? 常盤さんが、やってくれるなんて」
「何だよ? アタシが受けるのが、そんなに意外か?」
笹塚先生は、首を横に振る。その隣で、榎田先生も、頷いている。
「で? 何をどうすればいいの?」
「勉強をちょっとやって、あとは、試験に臨めばいい。笹塚先生は商業科の先生だから、そこんところはよく教えてもらえる。しっかり聞きなさい」
「えぇ? 勉強するぅ? そんな暇、アタシ、今はないよ!」
「でもね、常盤さん。いままで学校も休んだ分、取り戻さないと。まして、検定を受けるとなれば、やっぱり、ぶっつけ本番ってわけにはいかないでしょう?」
「なんだよぉー。受けるなんて言わなきゃ良かった。・・・・・・あー。やっぱり、アタシは、こういうとこがダメだー。・・・・・・玄桐、今ごろ正門で待ってっかな? あー・・・・・・」
机に突っ伏す紅葉。榎田先生は、その横に、どさりどさりと対策ガイドを置いていった。
「(今日は、最後のバカ狩り日なのに。すまないね、玄桐。もーちっと待ってて・・・・・・)」
しばらく、紅葉の口から出るため息は、止まることがなかった。




