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振り子  作者: 糸東 甚九郎
第六幕  水崎玄桐 対 楢崎翔
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四十七・商業科 対 工業科

四十七・商業科 対 工業科



   バルルルルンーッ・・・・・・  バルルルルンーッ・・・・・・


 宇河商業高校の正門横に、玄桐のスクーターが停まった。


「(紅葉・・・・・・まだかな? 今日は最後のバカ狩りだぜぇ? 早く来いよぉー)」


   ・・・・・・カチン  シュボ   ぷかぁー


 タバコに火をつけ、学校の壁に寄りかかって煙をぷかりと吐き出す玄桐。

 そこに、近づいてくる足音がひとつ。


「ん? 紅葉かぁ?」

「残念だったな。常盤じゃなくて」

「ほぇ? なんだぁ、おまえ? なんの用だよぉー・・・・・・」


 そこに現れたのは、紅葉のクラスメイトの楢崎。玄桐は、明らかにがっかりした表情。


「宇河工業のやつが、常盤に何の用だ? お前、この間、常盤を乗せていったやつだろ」


 きつい目つきで玄桐を睨む楢崎。玄桐は、タバコを捨てて足でぐりぐりと踏み消す。


「へへっ! だったら、何なんだよ? 商業科のぼっちゃんよー」

「迷惑なんだ。常盤はいま、進路指導室で先生と話している。お前とどっかに行くことは今日はできないだろうな。だから、帰れよ!」

「なんでおまえに、おいらがそんなこと言われなきゃなんねーんだよぉ! 紅葉は、おいらんちを助けるために、必死なんだぜぇ?」

「なに? ・・・・・・わけのわからないことを。大体、お前は誰なんだ?」

「おいらか? 教えねーよ。てか、まず、自分から名乗るのが礼儀じゃねーのかぁ?」

「宇河商業高三年二組、商業科、学級委員長の楢崎翔。元空手道部の主将だ!」

「おいら、水崎玄桐だ。宇河工業のな。まぁ、紅葉とは、タメだ!」

「水崎っていうのか。・・・・・・お前は、常盤の何なんだ?」

「おまえこそ、何なんだよ?」

「俺は、常盤のクラスメイトだ。常盤とは、三年間同じクラスだ!」

「そんだけか。ははっ! ただのモブじゃんかよぉー。カタブツで、だせぇぜー?」

「やかましいやつだ。気に入らないな。・・・・・・お前、これ以上常盤に関わらないでくれ」

「は? なんでおまえにそんな権限があんだ? おいらの勝手だし、選ぶのは紅葉だぜ?」

「うるさい。常盤は、根は真面目なんだ。お前みたいのが関わってたから、あんな感じにだらけてしまったに違いない! ・・・・・・わかったろ? お前は常盤に悪影響だ。帰れ!」


 楢崎は、腕をばっと横に振り、玄桐を追い返そうとする。

 玄桐は、眉間にシワを寄せて、不機嫌そうに楢崎を睨み返した。


「・・・・・・ふざけんじゃねー。・・・・・・おい、楢崎とか言ったな? おいら、おまえなんかに紅葉がどうこうされるのは、気に入らねーっ! ・・・・・・おい。場所変えようや」


 玄桐は、指でくいっと住宅街の路地を指し、楢崎へ「ついてこい」と言う。


「不良が・・・・・・。どうなっても知らんぞ? 常盤は、俺がしっかり正しい道へ戻してやる」


 楢崎も、玄桐についてゆく。

 閑静な住宅街の一角にある路地で、玄桐と楢崎が向かい合った。


「へへっ! おいらだって、伊達に修羅場はくぐってねーぜ! 紅葉の乱闘を間近で見て、ちったぁ強くなってんだぜぇ! ・・・・・・たぶん」


 拳をぐっと握って、玄桐は両足を開いた。楢崎は、涼しい目をして、立ったままだ。


「おい、こら! いくぞ、商業ぼっちゃん! 鉄工場生まれの、この、水崎玄桐さまの力、とくと思い知りやがれー」


 右腕を大きく振りかぶり、玄桐は楢崎に向かって突っ込んでいった。


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