四十六・母の過去に驚く紅葉
四十六・母の過去に驚く紅葉
チッ チッ チッ チッ チッ チッ チッ・・・・・・
壁の電波時計が、針を小刻みに動かし、音を出している。
小紅は、紅葉に昔話をし終えたところだった。
「・・・・・・と、とんでもねーこと、してたんだな・・・・・・ママ・・・・・・」
「・・・・・・遙か、昔の記憶よ。・・・・・・命の危機を体験したからこそ、娘たちには、そんな目に遭って欲しくないってこと、わかるよね?」
紅葉は、小紅の潤んだ目を見て、ただ黙ることしかできなかった。
「・・・・・・暴力組織『デスアダー』・・・・・・。その親玉、毒島仁英? ・・・・・・穂花ちゃんのママが、そいつに殺されかけた? ・・・・・・ママの友達やパパも、そいつに痛めつけられたぁ? そして、炎の中で一千人とママが大乱闘? ・・・・・・話がヤバすぎて、アタシいま、頭ん中がしっちゃかめっちゃかなんだけど・・・・・・」
「もう、毒島はこの世にいないけどね。罪を償うこともせず、痛めつけた人や殺めた人への謝罪もせず、炎に巻かれて笑いながら消えていった・・・・・・。あれ以上の悔しい経験は、あたし、ないな・・・・・・」
「ママ・・・・・・。ひとつ、聞いていいか?」
「なに?」
「その、ブスジマだとか、デスアダーだとかっていうやつの、関係者や残党は?」
「知らない。でも、久保さん・・・・・・。あ、いま、県警本部の刑事やってる久保哲也警部ね。その人が言うには、残党や関係者は、もういないだろうって話だったけどさ・・・・・・」
「・・・・・・そうか。なら、いいんだけど・・・・・・」
紅葉は、ソファーに座って、ハーブティーをまた一気に飲み干した。
「紅葉。あんたの短気っぷりや喧嘩っ早さ、おそらくあたしに似たんだろうね? でも、一番驚いてるのは、あんたの喧嘩の強さよ。あたしはじーちゃんに小さい頃から空手を習ってたからにしても、あんたは、そういう稽古もしてないでしょう? そういうものまで、遺伝ってするのかな?」
「・・・・・・んなこと、アタシが知るかよ。でも、アタシ、夢で高校生のママにめっちゃくちゃにやられたんだよ。すっげー強かった。・・・・・・アタシはいま、ママの一部分の強さだけで喧嘩してるって感じかもしんない。・・・・・・バカ狩りも、明日で終わりにするんだ・・・・・・」
「バカ狩りなんて、本当にもうやめな。・・・・・・あと、なに? 夢にあたしが出てきたの?」
「『ろくでなしーっ』って叫ばれて、目にも留まらぬ速さでボコボコにされたんだよ!」
「・・・・・・あたしは、娘をそこまでボコボコになんかしないっての! 虐待じゃない!」
「だからー、夢の話だっての! ・・・・・・なんか、ママと喧嘩せずに話したの、いつ以来?」
「さぁね。・・・・・・あたしも、あんたとじっくり話したかったからね。いま、いい感じだよ」
それから優璃が帰ってくる夕暮れ時まで、紅葉は小紅と二人きりで話し込んでいた。




