三十五・謎のバイト、その真意
三十五・謎のバイト、その真意
こち こち こち こち こち ぼおぉーん
部屋に置かれた振り子時計が、大きな音を立てて、時を知らせる。
「はぁ? ボディーガード? そして、警備ぃ? なんだ。芸能じゃねーじゃん・・・・・・」
応接室内に響く、紅葉の声。それに合わせて、玄桐も驚く。
「ふんふふーん。そうだ? 不満かな? まぁ、最初の仕事だからね」
「どうだろう、常盤紅葉さん。再来週末にあるイベントで、我が社に所属するアイドルグループ『トチベリー25』に付いて、警備役をお願いしたいんだがね?」
十六夜と一之瀬が、黒いソファーに座り、紅葉へ説明を続ける。
「でも、警備ぐれーじゃ、アタシなんかじゃなくても、普通の警備会社でも雇えば・・・・・・」
「ふんふふーん。そこが今回、違うんだなぁー。これ、見てみ?」
鼻歌を歌いながら、十六夜が一枚の紙をテーブルの上に出す。紅葉と玄桐は、ソファーから腰を浮かせ、その紙を真上からのぞき込むように見る。
[ トチベリー25 ハ カナラズ イタイメニアッテモラウ ]
「な、なんすか、これ! 脅迫文?」
「わけわかんねーな。そのアイドルを、狙うってこと? 警察に言って中止にしろよー」
「そういうわけにも、いかないんだ。我が社としても、こんな程度のことに毎回大がかりな反応をしていては、利益なんか生み出せないからね。もちろん、警備員も配置はするが」
「だからって、なんで紅葉が・・・・・・」
玄桐が、紅葉の横で一之瀬と十六夜の顔を交互に見ながら問いかける。
「常盤紅葉さんは、見た目、うちのアイドル以上の容姿だ。仰々しい警備員を目の前に置くよりも、同世代の子がスタッフとしていた方が、彼女たちも気が楽だからね?」
「ふーん。まぁ、要するに、アタシはそのアイドルらに万が一のことが起きないように、変な奴が現れたら、とっ捕まえるか、ぶっ倒す役ってことね?」
「ふんふふーん。そういうこと! もちろん、報酬は、はずむよー?」
「いくらよ?」
「一日、百五十万。これで、どうかな?」
一之瀬が、どかんと札束を目の前に出し、紅葉と玄桐に見せた。二人は、目を丸くして驚く。
「こっ、こんな金額! う、嘘でしょ? 警備一回ぐらいで! 荒唐無稽な額じゃんか!」
「いいや? 嘘じゃないですよ? きちんと、このとおり、お支払いしますよ」
一之瀬は、笑って紅葉の顔をじっと見る。紅葉は、札束に目を奪われたまま。
「バ、バイトの金額ってレベルじゃねーぜ! す、すっげぇな紅葉・・・・・・」
「ただし、これは上からのお達しだ。常盤紅葉さん、あなたの腕前を試せとのことでね? 今日は、何か、運動着はお持ちかな? これから、腕前を見せていただけないか?」
「は? 腕前を? そういうことかよ。・・・・・・アタシは、何の服装だって構わないよ」
「ふんふふーん。なら、話が早いや。・・・・・・地下に、備品保管用のホールがある。そこへ一緒に、来てくれないか? 常盤紅葉のテストをしてみたいんでねー? ふふふーん」
十六夜と一之瀬が立ち上がる。紅葉は玄桐と顔を見合わせ、二人についていった。




