三十四・紅葉は、ガブーンバイパー社に
三十四・紅葉は、ガブーンバイパー社に
・・・・・・バルルルルー・・・・・・
・・・・・・キイッ
「こ、ここだぜ? 紅葉・・・・・・。・・・・・・でっけぇオフィスビルじゃんか!」
透明度の高いガラスが一面に張られた、二十階建てのビル。正面の入口ゲートには、青銅製の看板が掲げられ、「芸能・人材プロデュース ガブーンバイパー社」と彫られている。
「宇河宮の、ど真ん中じゃんか。・・・・・・アタシ、こんな会社、気づかなかったな・・・・・・」
「なんか、ちゃんとした会社っぽいな? おいら、ちょっと安心したぜー・・・・・・」
「ばーか! こんなの、外面だけいいって感じだろ! どんな会社かは、今日、話を聞いてみりゃわかるだろーがよ」
「そ、そうかぁ? こんなきれいなビルなのに、やべぇなんて、あんのかな?」
「ビビッてんなよ! アタシが呼ばれたんだ。玄桐は、黙って大人しくついてきな」
そう言って、紅葉は恐れることなく、ガブーンバイパー社の正面入口から中に入っていく。
玄桐はその後ろから、紅葉に隠れるようにして、きょろきょろと周囲を見回しながら、入っていった。
中へ入ると、まるで高級ホテルのエントランスホールのような内装。大きなシャンデリアが天井から下がり、立派な観葉植物がいくつも置かれている。
「・・・・・・なーんか、すげーなこりゃ・・・・・・」
紅葉もさすがに、ぽかんと口を開く。
周囲には、アイドルのような女性や、黒いスーツを着た男性が、何人も行き交っている。
「マネージャーっ! 来週のスケジュールは・・・・・・」
「今度の派遣先を案内します・・・・・・。工期以内に・・・・・・」
「あの現場に十五人派遣しましょう! あちらの橋梁現場には、五人派遣で・・・・・・」
「今年はその人数でご勘弁を。来年の令和六年度には、あと七人送りますので・・・・・・」
制服姿の紅葉と玄桐の回りを行き交う人々。仕事の話なのか、スマートフォンで話しながら、あくせくと動き回っている感じだ。
「聞いてる感じだと、人材派遣っぽいな。アイドルみてーのもいるけどね・・・・・・」
「紅葉ぁ。・・・・・・いったい、どんなバイトになんだよー?」
「知らねーっての! あの十六夜とかいう男がいねーと、わかんねーだろ?」
・・・・・・こっ こっ こっ こっ こっ
大理石の床に響く、革靴の音。二人は、その足音の方へ、ふっと目を向けた。
「これはこれは、学業でお忙しいところ、申し訳ない。私、専務の一之瀬と申します」
紅葉に深々と頭を下げる、一之瀬。紅葉は、それに対し、やや怪訝な表情を見せる。
「ふんふふーん。やぁー、よく来てくれた。待ってたよ!」
一之瀬の横で、十六夜も紅葉に笑顔で近寄る。紅葉は、しれっとした表情のまま。
「ふーん。おっちゃんじゃん。・・・・・・専務って、偉いのぉ? アタシ、わかんねーやー」
紅葉は、一之瀬を前に、腕組みをして飄々とした感じ。十六夜が、やや慌てた表情になる。
「こ、こら! 常盤紅葉! 我が社では、専務はナンバースリーの位置だぞ! そんな礼儀のなってない態度で・・・・・・」
慌てる十六夜を、一之瀬はにこっと笑って、止めた。
「まぁまぁ、十六夜? いいから。・・・・・・それで、常盤紅葉さん。今日来てもらったのは他でもない。我々がキミに、ある仕事をこれからいろいろ頼みたいんだがね?」
にこやかに、一之瀬は話す。紅葉と玄桐は、黙って話を聞いている。
「ここじゃああれだから、向こうの部屋で。十六夜? この方たちを・・・・・・」
「わかりました。じゃ、二人とも、こっちへ」
十六夜が、紅葉たちを応接室へと案内する。その後ろから、一之瀬も笑顔で靴音を響かせながらついていった。




