三十三・紅葉はとにかく逃げまくる
三十三・紅葉はとにかく逃げまくる
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「あー・・・・・・。やっと終わった。久々にサボらず授業受けたけど、疲れるな・・・・・・」
紅葉は、六時限目まで授業を終え、バッグへ乱雑にノートを突っ込んで、帰り支度をする。
「あ、常盤さん? さっき、笹塚先生と麦倉先生が、呼んでたよ?」
「珍しいね、紅葉さん? 今日は、最後までずっといたね!」
クラスメイトの女子たちが、紅葉に次々と声をかける。
「めんどくせーなぁ! 笹塚に、麦倉? どーせ、進路の話だろうなー。アタシ、疲れたからもう帰るわ。久々に六限までいると、だるいよー」
・・・・・・ぐいっ!
「うぁ! な、何すんだよ!」
その時、帰ろうとする紅葉の腕を、同じクラスの男子生徒が引っ張った。それは学級委員長の、楢崎翔だ。
「だめだ! 常盤! 今日は俺、笹塚先生にお前を逃がさないよう頼まれてんだよ!」
紅葉の腕を引っ張りながら、楢崎はどんどん進路指導室に向かっていく。きりっとした眉と端整な顔立ちで、いかにも学級委員長と言った感じの男子だ。
「うるっせぇよ、楢崎! 邪魔すんなって! アタシは今夜、用があるんだ! 帰る!」
「だめだ、常盤! 俺は、お前を逃がさない! 俺と一緒に、来い!」
「お前ー・・・・・・。そのセリフ、勘違いされんぞ! ふざけんじゃねーっての!」
紅葉の手首を引っ張り、突き進む楢崎。廊下の向こうには、笹塚先生と麦倉先生が、並んで立って待っている。
「ごめんなさいね、楢崎君。頼んじゃって。・・・・・・常盤さん。今日は、先生たちと、よく話し合いましょう」
「さすが、学級委員長ねッ! 常盤さんを簡単に引っ張ってきちゃうなんてさッ!」
「すみません、笹塚先生に麦倉先生。このとおり、連れてきましたから・・・・・・」
「ふっざけんな! アタシ、今日はこの後、本当に忙しいんだよ! だいたい、頼んでもいねーのに、勝手に面談の予定なんか入れんなよ! 先生らは、勝手だ! アタシは、ちゃんと就職で考えてる。あとできちんと話す。だから、今日はムリ!」
・・・・・・パアァンッ バシイッ!
「うおあっ! と、常盤ーっ? 痛いじゃないか!」
紅葉は、掴まれていた手を捻って解き、楢崎の足を蹴っ飛ばして、そのまま昇降口へ走っていった。三人はすぐ、紅葉の後を追う。
「ついてくんなって! 楢崎! お前、何でそこまでして、アタシに構うんだよ!」
「うるさい! 俺は学級委員長だ。常盤は、クラスメイトだろ。学校に来たり来なかったりされると、気持ちが落ち着かないんでな!」
廊下を走りながら、紅葉は舌打ちする。そして、大慌てで靴箱から革靴を出し、下足に履き替えて正門に猛ダッシュ。
「常盤さん、足が速いのねーッ! 笹塚先生、ワタシたちは職員玄関から回りましょう!」
「そ、そうですね! ・・・・・・常盤さん、運動部でもないのに、なんて逃げ足の速さなのかしら・・・・・・」
教員二人は、別方向から紅葉を追った。楢崎は、そのまま紅葉を追い続けている。
・・・・・・バロロロロロ・・・・・・
ブォンブォンブォン・・・・・・
「おっ!? おーい、紅葉ぁ! こっちだぁ! 早くしろよぉ!」
「悪ぃ、玄桐! ・・・・・・よっ、と! さぁ、早く行こう!」
紅葉は、正門前に止まっていた玄桐のスクーターに飛び乗り、制服のスカーフを緩めた。
「あ! と、常盤さぁん!?」
「あれは! 宇河工業の生徒!? 待ってよ、常盤さんッ!」
笹塚先生と麦倉先生が気づいた時には、紅葉は玄桐の後ろにいた。
「むっ! あいつ、宇河工業のやつか? おーい、常盤! 待てよぉ!」
「だからぁーっ、今度きちんと話してやるってんだ! 今日は、もう、バイバーイだね!」
楢崎は、アクセルをふかす玄桐と、目が合った。玄桐は、楢崎に対し、にやっと笑う。
「さぁ、行け! 玄桐! ガブーンバイパー社まで、レッツゴーッ!」
「あいよぉっ! まっかせとけい! いっくぜぇ、紅葉ぁ!」
紅色の髪留めを光らせ、紅葉は三人に手を振りながら、玄桐と走り去っていった。




