二十八・玄桐、初顔合わせ
二十八・玄桐、初顔合わせ
バルルン・・・・・・
バルンバルン・・・・・・ バルルル
「あれ? 紅葉? 家の前に誰かいんぞ?」
スピードを緩め、スクーターを停める玄桐。その後ろで、紅葉が表情を変えた。
「(・・・・・・げ! ・・・・・・ママだよ。・・・・・・めんどーなことになりそうだなー)」
・・・・・・つか つか つか つか つかっ
家の前では、ちょうど小紅が残業を終え、帰ってきたところだった。
紅葉と玄桐の二人と目が合った小紅は、一瞬間を置いてから、早足で近づく。
「・・・・・・紅葉。・・・・・・誰、この子? ・・・・・・あなた、どこのどなた?」
トーンの低い声で、小紅が玄桐と目を合わせる。
「あっ! え、えっとぉ、おいら、水崎玄桐っす! 紅葉のパートナーってゆーか・・・・・・」
「はあぁ? パートナーって、何よ!」
腕組みをした小紅は、眉をぴくりと上げ、玄桐をさらにじっと見据える。
「ママ! 玄桐はアタシの友達。送ってくれてるんだから、文句言うなよ!」
紅葉は、スクーターから降り、小紅と玄桐の間に割って入った。
「文句、って・・・・・・。紅葉? あんたねぇ。毎日毎晩、この子のバイクであっちこっち行ってるんでしょ! 自分の娘が振り回されて、それに文句の一つも無い親がいる?」
「振り回されてない。アタシが好きでやってることだ!」
「非常識なことやってて、あんたはそれに振り回されてるだけでしょうよ!」
「アタシも玄桐も、常識はわきまえてるっての! ママは黙っててよ!」
「常識があるんだったら、毎日夜にほっつき歩くことを、普通は止めるんじゃないの?」
「う・・・・・・。でも、それは玄桐のためで・・・・・・」
「なにそれ? さっきはあんた、自分が好きでやってるって言ったくせに」
「・・・・・・くっ。・・・・・・アタシは、自分のためでも玄桐のためでも・・・・・・」
「さっきから、何よ。・・・・・・玄桐くんって言ったっけ? あんたもね、家まで紅葉を送ってくれるのはありがたいけど、ちょっと自重した方がいいんじゃない? 高校生の男女が、毎日夜遊びして、しかも、危なっかしいことしてるのは、親として黙ってられないわ?」
小紅は、紅葉を言葉でねじ伏せ、腕組みをして仁王立ち。玄桐は、その小紅の母親オーラを前に、ぶるぶると震えていた。
「(あ、あの紅葉が、言い負かされた・・・・・・。す、すげぇ母ちゃんだな・・・・・・)」
「・・・・・・ママ! アタシから、ちょっと説明すっから! 玄桐のことは叱んなっての!」
紅葉は小紅と目を合わせたまま、動かない。
「はぁ。まったくもう、あんたはほんっと、どうしようもないおてんば娘ね・・・・・・。玄桐くん、悪いけど、今日はもう帰って? 紅葉といろいろ話したいので・・・・・・」
「え? あ? はぇ? あ、ああ。そうすか。そうっすよね。へへっ・・・・・・」
しどろもどろの返事を小紅へ返す玄桐。ぎらっと光る小紅の目に、玄桐はただ、びびっていた。
「紅葉、わかった? 優璃も待ってるだろうから、さぁ、中に入るよ! おいで!」
小紅から目を逸らし、口を尖らせ、小声で「はい」と返事する紅葉。
「悪い、玄桐。送ってくれてサンキューな。・・・・・・今日は、これでお終いだ」
「あ、ああ。おいらも、いろいろ助かったぜ。紅葉、またな」
紅葉は、小紅と家の玄関へ足を向ける。
玄桐は、スクーターのエンジンをかけ、一気にアクセルをふかして帰っていった。




