二十三・穂花の母は、保育士なのだ
二十三・穂花の母は、保育士なのだ
「〔えぇ? ほんとなの、それ! ・・・・・・紅葉がねぇ・・・・・・〕」
「だって、うちの子が、さっき電話でそう言ってたよ? 格好良かったー、ってさ!」
「〔マネしないように言ってね? まったくもう、毎日、何やってんだかほんっとに最近、わかんないのよー。・・・・・・進路もどうするんだか、まだわからなくてー・・・・・・〕」
「大変だねーっ。・・・・・・まだ、うちはそこまでの時期になってないのかなー」
「〔あんたんとこも、初の受験だから大変でしょ? あー、もぉ! 紅葉ー・・・・・・〕」
「紅葉ちゃんと、よーく話してみたら? 短気起こして、叱り飛ばしちゃだめだよー?」
「〔わかってる。・・・・・・はぁーっ・・・・・・〕」
「それにしても、話聞いてみたら、やーっぱり親子の血は争えないねー? なんだかさぁ、誰かさんの昔と、すごーく被る部分があるんだけどなぁー」
「〔は? ・・・・・・ちょっとぉ? あたしは、紅葉みたいにいきなりぶっ飛ばしたりはしなかったでしょ? 正当防衛なときだけやったの、あんたも覚えてるでしょ?〕」
「まぁ、そーね。・・・・・・あ! そろそろ、最後のお迎え来る頃だ。じゃ、そんなわけでー」
「〔教えてくれて、ありがとうね! あたしも今日は残業だー。月末の集計だよー〕」
「うひぃー。そりゃ大変だね! 頑張ってー? また今度、三人で飲もう?」
「〔そうだね! あたしも、息抜きしたいな。じゃ、またね!〕」
「はいはーい! まったねぇー」
・・・・・・タンッ ・・・・・・ピッ!
水色のスマートフォンをタップして、細い指の保育士が小紅との電話を切る。それは、穂花の母であり、小紅とは幼馴染みの後輩、渡良瀬水穂。
「水穂先生ー? 麦倉寛人くんのママ、お迎え見えましたよー」
「あ! はぁーい! すみません、園長先生! 今行きまーす!」
廊下をパタパタと早足で歩き、迎え待ちの小さな男の子の手を引いて玄関へ向かう水穂。
「かんとーッ! お迎えに来たよぉーッ! くすっ。さぁ、先生にさようならして、ママと帰ろうねぇーッ? 水穂先生、すみませんでした。こんな遅くまで・・・・・・」
「いえいえ、だーいじょうぶですよー。麦倉さん、お仕事、忙しそうですねー?」
「なかなか高校生も、悩み多い子がたくさんいましてねー。心が揺れ動いてるんで、毎日じっくり話を聞いてあげないとならないのでー。・・・・・・今日なんか、放課後、十人ですよ?」
「ひぇー。それは大変ですね! ・・・・・・あ! かんとくん、今日はお昼寝の時にー・・・・・・」
お迎えに来たのは、学校カウンセラーの麦倉先生だった。子供を抱っこして水穂と二十分ほど話し、にこやかに手を振って、保育園から帰っていった。
「高校生相手かー。私も大変だけど、みーんな大変だよねー・・・・・・。さーて、残りの仕事、終わしちゃおうっと! はやく帰って、ゴハン作らなきゃーっ!」
麦倉先生の車を見送った後、水穂は小さくガッツポーズをして、職員室に戻った。




