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振り子  作者: 糸東 甚九郎
第三幕  姉と妹の、進む道
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二十二・紅葉、ご乱心!

二十二・紅葉、ご乱心!



「なんだぁ、女! 首突っ込んでくんじゃ・・・・・・」


   バキャアッ!  ゴシャアッ!  ベシャアッ!


「「「「「 ぐはあっ! ごへーっ! うげはぁーっ! 」」」」」


 紅葉が拳を、右に左に、斜めに上に、振り回す。その拳が抜けていくと、ばたりばたりと男たちが倒れる。


「ひゃっほぉ! やっぱ、紅葉はつえーぜぃ!」

「・・・・・・ねぇ、玄桐? アタシ、そろそろこのパターン飽きた・・・・・・。つまんねーよー」


 倒した男を蹴っ飛ばし、財布から紙幣を抜き取る紅葉と玄桐。


「そ、そう言うなってー。・・・・・・な? ほら! こいつだけで、二十万円だぜぇ!」


 玄桐は紙幣をずらりと両手で持ち、にかっと笑って紅葉にぐいぐい詰め寄る。


「あー、もぉ! うざったいよ! ・・・・・・まったく。お前はいつも、アタシの力を頼ってばっかでさ? たまには、自分でぶっ飛ばしてみろっての! アタシがやられ役でさー」

「そ、そんなこと言うなよぉー。おいらじゃ、簡単にやられちまうよー」

「なっさけねぇなぁ! 玄桐! お前、男だろう? 女のアタシにばっか喧嘩させてさ! ま・・・・・・しゃーねぇか! 水崎玄桐は、ヘナチョコだもんなー」

「あ、あんまりおいらをバカにすんなよー。・・・・・・ま、おいらも紅葉がいるから、こうして金をたくさん稼げるんだ! 感謝してるぜー、紅葉っ!」


   ・・・・・・ずずずっ  ・・・・・・ばあっ!


 その時、玄桐と話し込んでいる紅葉の後ろから、倒した男の一人がナイフを持って、起き上がってきた。そしてそのまま、刃は紅葉のもとへ一直線に空気を切り裂いて向かってくる。


「え! なんだ、こいつっ・・・・・・」


   ビシュウンッ! ・・・・・・ズバアッ!


「・・・・・・つぅっ!」

「く、紅葉ぁ!」


 男のナイフは、紅葉の左肩を掠め、袖の一部をぱっくりと切り開き、肌に真っ直ぐ赤い線を引いていった。その線から、紅葉の血が滲み出る。


「こ、このやろぉーっ! ふっざけやがってぇーっ! うらぁあああぁーーーーっ!」


   ・・・・・・グイッ  ドゴオンッ!  ドグウンッ!  ドグシャアッ!

   ドガアッ!  ボガアッ!  ドゴシャアァンッ!


 怒った紅葉は、男の手首を掴んでナイフを奪い取り、投げ捨てた。そして、容赦ない三連発の膝蹴りを腹、脇腹、顔面へ叩き込み、左右の拳で顔を殴りつけてから、近くのゴミ捨て場に向かって思い切り蹴り飛ばした。


「・・・・・・いってぇー。・・・・・・アタシ、この服気に入ってたのに! くそやろうがーっ!」


   ・・・・・・ドゴシャ  ドゴシャ  ドゴシャ


 意識を失ってゴミ捨て場で倒れている男を、紅葉は何度も踏みつける。


「や、やめろって紅葉! さ、さすがに死んじまうよぉ!」

「・・・・・・ちっ! アタシの服と肩を切りやがって。・・・・・・あー、いってぇ。しみるー」

「ほ、ほんとだな! ・・・・・・ま、まってろ!」


 玄桐は、傷口を見て顔をしかめる紅葉を見て、バッグからヨレヨレになった鼠色のハンカチを取り出し、紅葉の傷口に当てた。


「・・・・・・? ・・・・・・悪いね、玄桐。アタシがヘマしたんだから、ほっときなよ」

「・・・・・・! ほっとけっかよぉ、バカ! 消毒しねーと、だめだな・・・・・・」


 傷口からどんどん染み出る、紅葉の血。玄桐のハンカチが、赤紫色にじわりじわりと染まってゆく。


「アタシも油断したね。こんな男に切られるなんて・・・・・・」


   ・・・・・・ぎゅっ


 玄桐は、紅葉の傷口にハンカチを一重に巻いて縛った。


「紅葉、乗れよー。・・・・・・おいらんちで、手当しようぜ! はやく!」


 大型スクーターのエンジンをかけ、シートをバンバンと叩く玄桐。紅葉は、乗り気ではない表情で、渋々、シートに跨がった。


「・・・・・・変なことしやがったら、ぶっとばすかんな? 玄桐の家まで、どんくらい?」

「こっからだったら、三十分もありゃあ着くぜぃ! じゃ、いっくぜぇー」

「悪いね・・・・・・。・・・・・・ありがとな、玄桐」

「いーってことよ! 大事なビジネスパートナーがケガしたんだ。当たり前だぜー」


 玄桐はアクセルをふかし、紅葉を乗せて国道を一気に走り抜けていった。


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