十六・紅葉は紅葉を見つめて
十六・紅葉は紅葉を見つめて
じゅじゅじゅわぁーっ
ふわん じゅううううぅー
分厚い霜降りステーキが、紅葉と玄桐の目の前に置かれる。二人とも、それを三枚ずつ注文したようだ。
テーブルの上には、鉄板皿が六枚。ステーキソースがスパイシーで食欲をそそる香りを漂わせる。
「うわ、すっげぇ! あー。おいら、紅葉と組んで本当に幸せだぜーぇ! これでずっと、食っていける気がするー」
「お前、勝手なこと言うなよ。アタシは、いつまでもバカ狩りなんかする気ないからな?」
紅葉はナイフで肉を大きくカットし、次々と口へ運ぶ。
「え? なんだよ、紅葉! どーしたんだよ?」
「・・・・・・別に。アタシだって、いろいろあんだよ・・・・・・」
―――。
「あんたも、九月で十八歳だよ。・・・・・・いつまでもね、遊んでいられないよ?」
―――。
紅葉は、肉を頬張りながら、母の言葉を思い出す。
「(わかってんだよ。そんなことは。・・・・・・でもアタシは、ママもパパも認めたくない)」
「紅葉? 肉、いらねーなら、おいらが・・・・・・」
「え! ・・・・・・ふざけんな。アタシがいつ、食わないって言った? やらねーっての!」
「そ、そっか・・・・・・。でも紅葉、しばらくはまだ、やるだろ?」
「・・・・・・まぁ、な。お前が今日みたいなヘマ続けたら、もうアタシ、その場で終わりな」
「わ、わかったって! あー、でも、おいらも本当に、怖ぇーんだってば!」
目の前の玄桐を睨む紅葉。ポニーテールをふわりと揺らし、また肉を頬張る。
「そういや紅葉さー。その髪留めって、だいぶ古くね? 今日の金で新しいの買えば?」
「え? ・・・・・・お前には関係ないだろ。アタシの髪留めなんか・・・・・・。買わないよ!」
「もっといいの、あるぜぇ? 高級アクセサリーショップにでも行って・・・・・・」
「うるっさい! 黙れよ玄桐! お前には関係ねーっての!」
「わ、わりぃ・・・・・・。何だよ、そんなに怒ることかぁ?」
紅葉は黙って肉を食べ続ける。玄桐は、ちらちらと紅葉の顔色を窺いながら、肉を切る。
「・・・・・・これは、アタシが小さい頃、ママがくれたんだよ・・・・・・」
「え? そーなの? 紅葉、親のこと嫌ってんのに、珍しいなー?」
「優璃も、同じのつけてるよ。・・・・・・ふぅ。ごちそうさまでした・・・・・・」
「え! はっや! もう三枚食ったの? おいら、まだ一枚しか食ってねーのに!」
「お前、喋ってばっかだからだよ! ・・・・・・アタシ、デザートにティラミス頼むからな?」
慌てて肉を頬張る玄桐。紅葉は横のガラス窓に映った自分を見つめながら、ただ静かに座っている。
髪の合間から覗く紅色の丸い球は、ガラスに映った姿でも、きらりと輝いている。




