十三・黒服たち、猛攻撃
十三・黒服たち、猛攻撃
「ちょろい、ちょろい! へへっ! 捕まえてみろよ、くそやろうどもーっ!」
「なんだあのガキ。足が速ぇ! おい、店の仲間呼べ! アプリで場所知らせろ!」
「へい!」
玄桐は、夜の繁華街を歩く人たちを避けながら、路地を走って逃げる。
小柄な男は走りながらスマートフォンを使い、玄桐を捕まえるようにと、無料通話アプリで一斉に仲間へ指示を送った。
「・・・・・・いたぞ! あいつだ! てめぇ!」
「おいおい、兄ちゃん。ふざけたマネはいけねぇな?」
続々と、玄桐を追って、男たちの仲間が現れる。合流した仲間は、全部で八人。最初の男たちと合わせて、十人。
「いたぜ! コラァ、クソガキ!」
「うわわわ。やっべ! おーい、紅葉? どこだよぉ! そろそろやべーって!」
・・・・・・かつっ かつっ かつっ かつっ
コンビニの横から、ブーツの音を響かせ、紅葉があくびをしながらゆっくりと現れる。
「よ、よかった! 紅葉。はい、今夜の収穫ーぅ! あとは、あいつらを・・・・・・」
「ふわぁ。眠いー。・・・・・・えー? 何人? キャバクラの客引きみたいな連中じゃんかぁ」
紅葉は、男たち十人を前にして、ボトルコーヒー片手にあくびを繰り返す。
「なんなんだぁ、おめー?」
「おいおい、姉ちゃんよぉ。そのガキのツレか?」
「悪ぃのは、そのガキだぜ? アニキのバッグ盗みやがって!」
男たちは、低い声で紅葉と玄桐に詰め寄ってくる。
「・・・・・・ねぇ、玄桐? お前、こいつらに殴られたりしてないの?」
冷ややかな目で、コーヒーを飲みながら、紅葉は玄桐へ問う。
「おいらだって、痛いの嫌だよ? でも、バカそうで悪そうなやつらだぜ?」
「じゃあ、ダメじゃん。・・・・・・アタシ、あくまでも、お前が傷めつけられてるところを助けたって設定にしなきゃ。これでぶっ飛ばしたら、めんどくせーことになるぞ?」
「だ、だってよぉー・・・・・・」
「ダーメ。失敗だ。・・・・・・玄桐。こいつらにバッグ返せ。何やってんだお前。次行こう!」
紅葉はコンビニのゴミ箱に飲みかけのボトルコーヒーを捨て、さっと手を振って、玄桐と男たちに背を向け、歩いていってしまった。
「え? え? ちょ、ちょっとぉ? 紅葉ぁー・・・・・・」
「「「「「 ・・・・・・。 」」」」」
男たちは全員、じろっと玄桐を睨んでいる。
「・・・・・・えっと。・・・・・・はい、これ。・・・・・・ま、間違っちゃったかなー、って感じっす」
「「「「「 あ? 」」」」」
「じゃっ! そーゆーことっすからね? おいら、返したかんね? 終わりっ!」
玄桐は男へ奪ったバッグを返すと、宵闇の奥へ歩いてゆく紅葉を、慌てて追いかける。
「「「「「 ・・・・・・。 」」」」」
「終わり・・・・・・じゃ、ねぇだろーがぁーっ!」
男たちは、再び怒って玄桐を追いかけてくる。走りながら振り向く玄桐は、それを見て、目を丸くして紅葉に向かって叫ぶ。
「いいっ? や、やっぱりだめじゃねーかぁ! うわぁー、紅葉ぁ! やべーよ!」
紅葉は空の月を見上げながら、紅色の髪留めを輝かせ、闇夜の路地をつまらなそうに歩く。
「あーぁ。何か、おもしれーことねーのかなぁ? アタシ、今後どうすりゃいいんだろう」
「はぁ? く、紅葉? あのー、すいませんが・・・・・・面白そうな方々が追ってきてるぜ?」
・・・・・・がしいっ ずずずるっ!
「うお! うわーっ! た、助けてくれぇ! すんません、すんません!」
男たちが、玄桐を後ろから掴んで引っ張り、道路へ引きずり倒した。
ぼかぼか! ばきばきばきっ! ぼかぼかぼか!
「「「「「 こんのクソガキが! この野郎! 」」」」」
「わー。く、紅葉! おいら、やられちゃった! おーい、紅葉?」
「・・・・・・ちっ! ・・・・・・はぁーっ・・・・・・。やれやれ・・・・・・」
紅葉は足を止め、玄桐を見て溜め息をつく。くるりと男たちへ向きを変え、寄っていった。




