百六・暗躍する十六夜岳
百六・暗躍する十六夜岳
ガブーンバイパー社の本社ビル。その一室は、夜遅くだが、明かりが煌々と灯っている。
「ふんふふーん。・・・・・・まぁ、そういうわけです。副社長、トチベリー25を存分に、駒として使って下さいよ。あ、野上アンとあと二人ほどは、オレの所へ来させて下さい?」
「ほ、本当に、トチベリー25のメンバーを、そんなことに・・・・・・」
「ええ。いま、あの小娘七人は、一人でプロ野球選手並みの筋力を発揮できます。じゃあ、副社長、あとは、オレとの取引どおり、自由に駒を使って、金を奪って下さい?」
十六夜は、にやりと笑って、椅子に座る四日市を見下ろしている。
「か、仮にだ。・・・・・・トチベリー25に地下の金を運び出させたとして、その後はどうすればいい? 私は、その金や、トチベリーについての件を、どうすればいいのだ!」
「簡単なことです。オレが、『バー・チャン』というベトナム人を二十万円で雇いました。そいつは、大型車の運転から、船舶、ヘリ、小型戦車まで操縦できる人材。・・・・・・あと三十分後に、このビルの裏口へワゴン車を停めるよう指示してあります。金は、そこへ」
「し、しかし十六夜君っ! ・・・・・・本当に今から、決行するというのかね! 社長は確かに今夜は会食の予定があって不在だが・・・・・・。決行後、君はどうするつもりだね・・・・・・」
「オレは、チャンが運転する車に乗って、金と共に去りますよ。ふんふふーん。これが成功すれば、オレはもう、この会社にも、五所ヶ原社長にも、用はないのでね。ふふふーん」
十六夜は、鼻歌を歌いながら、冷や汗を垂らす副社長へ詰め寄る。
「・・・・・・四日市副社長? さぁ、あとはよろしく。このまま、あなたは社長一派によって社会的に抹殺されては困るのでしょう? トチベリーは、地下一階にいますからねー」
「わ、わかった・・・・・・。十六夜君。ただ今より、トチベリー25のメンバーに、作業を頼むとしよう。・・・・・・ふうぅ。地下庫のロックは、どうやって外せばよいのだね?」
四日市は、頭を抱えて机に両肘を置き、溜め息をつく。
「ふんふふーん。ありがとうございます、副社長! あの金が入っている隠し金庫は、ナンバーロックがかかっています。でも、オレが二瓶秘書のパソコンから抜き取ったデータでは、『37564 18782 37564 0005000』が暗証番号のようです」
「そうか。・・・・・・私としては、このようなことは不本意なのだが、致し方あるまい。社長ほか、この会社全体をクリーンにするには、こうするしかないのか・・・・・・」
「ふふーん。副社長は、これが成功すれば、ヒーローになるかもしれませんよ? この会社内にも、不正を見て見ぬフリしながら、苦しんでいる社員はいるはず。知らないフリをしながら、社長の下で働いているのでしょうね? 素晴らしいですね、副社長ー? あなたが、このガブーンバイパー社を、三十五億円できれいにできるかもしれないとはね」
「既に車の手配までしているとは。・・・・・・君は、狡猾な男だな。十六夜君・・・・・・」
「ふふーん。誉め言葉として受け取っておきましょう。・・・・・・じゃあ、副社長。トチベリー25によろしく。・・・・・・オレは、チャンの車で待っていますから。成功を祈りますよ」
「どうして野上さんたちは、別なんだね? 人数が多い方が運びやすいのではないかね?」
「ふんふふーん。まぁ、それもそうですが、野上はいろいろとまだ『売れる』かもしれませんのでね? 金を運ばせたあとのトチベリー25のメンバーは、きっと、一之瀬専務がどうにでも始末してくれますよ。じゃ、よろしく頼みましたよ四日市副社長。ふふふーん」
十六夜は笑いながら、副社長室のドアを開け、出て行った。




