百四・警察ももちろん動いています
百四・警察ももちろん動いています
かっ かっ かっ かっ・・・・・・
栃木県警本部の庁舎内で、清潔感のある御影石製の廊下に革靴の音が響く。
「・・・・・・うむ、わかった。それは、確証のありそうな情報なのだね?」
「〔ええ。そこでアルバイトをしていた子からの情報です。調べてみて下さい〕」
「ありがとう。いつも、良い情報提供、感謝するよ」
「〔いいえ。わたくしも、故郷の治安が悪くなるのは、嫌ですもの〕」
「ところで、できれば、三島さんに情報をくれた方を教えていただきたいんだが・・・・・・」
「〔え?〕」
「心配はいらないよ。ちょっと、詳しく聞いてみたいこともあるものでね」
「〔・・・・・・宇河宮市の西にある分譲地に住む、常盤紅葉ちゃんです〕」
「常盤紅葉さんか。・・・・・・ありがたいね。勇気を持って、情報を出してくれたなんて」
「〔だって、久保警部。その子は・・・・・・〕」
「・・・・・・えっ・・・・・・」
渋い髭をたくわえた凜々しい顔立ちのベテラン刑事が、スマートフォンを耳に当てながら、華蓮と電話をしている。
「〔・・・・・・そういうわけです。ですから、久保警部も、懐かしく思うかもしれませんね〕」
「・・・・・・なんと。まさか、こんなことが。・・・・・・とにかく、情報ありがとう。さっそく、調べてみることにするよ。これで、ガブーンバイパー社の尻尾を掴めれば、あとは芋づる式にわかってくると思う」
「〔わたくしも、この世界にいて、あの芸能プロデュースとうたっている会社の悪い噂を、いくつも聞いています。野放しにしておけば、もっと大変なことになるかもしれませんものね。・・・・・・よろしく、お願いします〕」
「わかった! また、何かありましたら、その時は遠慮無く教えて下さい」
「〔はい。では、久保警部も、お疲れのでませんことを〕」
「ありがとうございます。・・・・・・あ。朝ドラ、楽しみにしていますよ。ははは!」
「〔ぜひ、見て下さいね! では〕」
・・・・・・ピッ!
イタリア製のスーツをさっと翻し、久保警部は方向転換して廊下を戻ってゆく。
その向かう先に、「組織犯罪対策第二課 麻薬・薬物取締班」と書かれた札が掲げられた事務室がある。
久保警部は、艶のある革靴の底をかつりかつりと鳴らし、その部屋に向かっていった。
「・・・・・・しかし、なんということだ。・・・・・・今回の情報源が、あの、デスアダー総帥である毒島仁英を倒した早乙女小紅さんの娘だったとは。これも、何かの縁だな・・・・・・」
ふっと窓の外を見つめる久保警部。その遙か先は、大矢採石場跡のある方角だった。




