百二・黒光りのモデルガン
百二・黒光りのモデルガン
ぎしりっ・・・・・・ ぎしりっ・・・・・・
「あー、二瓶君? 今夜は確か、誰かと会食が入っていたよねぇ? んぬっふっふ」
五所ヶ原は漆黒のモデルガンを丁寧に拭きながら、足を組み、椅子にもたれかかっている。
「はい。今夜は、竹本総業株式会社の社長以下三名との、接待が・・・・・・」
「そうかそうかぁ。ぬっふっふ。フグの店だったかな?」
「いえ。京懐石の料亭ですね。フグは来週水曜の夜に、太平洋商事の藤堂慎太郎社長と、ビジネス誌の対談取材の場として・・・・・・」
「あぁ、そうだったね。こりゃ失敬。ぬっふっふっふ。美味しい店だといいねぇ、二瓶君」
「そうですね、社長。・・・・・・ところで・・・・・・今日のイベントの件ですが・・・・・・」
「鳥嶋安男が、襲ったんだろう? それを、常盤紅葉が止めた・・・・・・」
「いえ。それが・・・・・・。確かに、鳥嶋は現場で暴れて捕り押さえられましたが、止めたのは常盤紅葉だけではなく、その母親も・・・・・・」
「うぅーん? 母親? ・・・・・・あぁー・・・・・・母親かぁ。それはそれは・・・・・・」
「ですが、あとは予定どおりでしたね。トチベリー25は、今ごろ、『海外公演』の準備を一之瀬専務と十六夜部長と一緒に行っているでしょう。ふふふっ!」
「・・・・・・ぬっふっふ。目障りな小娘どもも、これで一気に消えるねぇ。なぁに、また、適当に補充すれば良いのさ。・・・・・・ところで、あの金を、副社長が気づいただとぉ?」
「・・・・・・今朝、唐突に十六夜部長から言われました。いったい何を考えてるのでしょう?」
「ぬっふっふ。わからんねぇ? 二瓶君、今宵はワシが不在となる。その間、あの部屋にある金を狙って、動きがありそうだよねぇ? ぬふふっふっふっふ!」
五所ヶ原は、ぎしりと椅子を揺らせて立ち上がる。
「ご安心下さい、社長。・・・・・・すでに、今夜あの部屋に誰かが近づいた際の対策は、整っておりますので・・・・・・。強力な護衛を頼んでおきましたわ。ふふふぅ!」
「強力な護衛だと? ・・・・・・まさか、用心棒の百目鬼を動かしたのかね? ぬっふっふぅ」
「はぁい。それはもちろん。・・・・・・五百万円で、快く引き受けてくれましたわ」
「ぬかりないねぇ、二瓶君は。・・・・・・んぬっふっふっふぅー」
「社長が大事になさっている、財産のためですから。お守りいたしますわ。ふふっ!」
「そろそろあの金も、海外の銀行にでも預けてしまおうかね、二瓶君? ぬっふふぅ!」
怪しい笑い声を響かせ、五所ヶ原は二瓶を従えて、社長室を出て行った。




