百一・とんでもない隠し金だ
百一・とんでもない隠し金だ
―――。
「さっ、さんじゅう・・・・・・ごおくっ? マジかよ・・・・・・っ!」
「ふんふーん。そうだ。その百分の一、つまりは一パーセントをあげてもいいんだよ?」
「(あ、ありえねーっ! 三十五億の一パーセントって、三千五百万だぞ! 嘘だろ!)」
「信じてないね? まぁ、やらないんだから、どーでもいい話だよね。ふんふふーん」
「信じるわけねーじゃん。だいたい、ガブーンバイパー社っちゃ、そうやって怪しいことばっかり裏でやってるんだろ! 麻薬とかで得た、裏金とかかよ?」
「ふんふふーん。まぁ、裏金というより、五所ヶ原社長の隠し金、かなぁ? 今はね?」
「今は?」
「もとは、違ったのさ。・・・・・・キミとも、全く無関係とは言えない金だよ?」
「は? 言ってる意味がわかんねーよ。アタシ、三十五万円はバカ狩りで得たことはあっても、三十五億円なんかには、まったく関わりは無いよ!」
「ふんふーん。・・・・・・まぁ、キミは直接は知らないだろうけど、あれは、ある集団の親玉が持っていたものだ」
「集団の親玉? なんだよ、他人様の金をぶんどって隠してんのかよ!」
「違うね。ガブーンバイパー社が、発掘したんだ。大矢採石場跡地からねー。オレが、五所ヶ原社長へ、こっそり匿名で報せてね。それで見つかった金だよ」
「大矢採石場? なんでそんなところに、そんな超大金があったんだよ?」
「ふんふふーん。キミは、母親から、あの場所の昔話を聞いてないのかな?」
「え? ・・・・・・待てよ? 大矢採石場の話・・・・・・。ママが言ってた・・・・・・?」
「キミの母親は、あの場所に金があったことは知らないにしても、忘れられない場所だろうからねー。・・・・・・今日、二十数年ぶりに、あの目を見たよ・・・・・・」
「まさか! 三十五億円って、デスアダーってやつらの金かよ! 何でそんなものを!」
「ふふふーん! ご名答! 厳密には、毒島仁英の持ってた金だがね。それを今、ガブーンバイパー社の地下庫に保管してるんだ。そいつを運び出す仕事ってことだよ、さっきの話はね。・・・・・・早乙女小紅がかつて潰したデスアダーの金。無関係じゃないだろ?」
「バ、バカ言ってんじゃねぇよ! デスアダーって、ママたちをひでぇ目に遭わせたやつらだ! しかも、アタシや優璃のじーちゃんやばーちゃんも、殺したってやつらだ! そんなやつらの金に、アタシが関わるわけねーだろうが! ふっざけんなよ!」
「ふんふふーん。良い返事を期待したんだけどね。仕方ない。トチベリー25のメンバーにでも、やらせてみるかな? 『海外公演』直前の、大きな荷物運びだ。ふふふーん」
「は? なんでトチベリー25のメンバーを、それに巻き込むんだよ?」
「ふふんふふーん。・・・・・・あの子たちは、捨て駒だからね?」
「す、捨て駒? 何言ってんだお前! てか、やっぱり変なこと企んでやがったな!」
「あんなの、適当に探せばいくらでもいるしね。大麻で判断力も弛み、良い頃合いさ」
「・・・・・・お、お前。野上アンは気にくわねーけど、そりゃ、いくら何でもひでぇよ!」
「ふふーん。怒るのかい、常盤紅葉? あんなに、野上に嫌がらせを受けたのに?」
「それとこれとは、話が別だ! あいつら、お前や一之瀬暁とかを、信じ切ってんぞ! なのに、実際は捨て駒なんて・・・・・・」
「知ったこっちゃないね。・・・・・・副社長がその金を社長から奪うためには、捨て駒じゃなきゃダメだからね? それが終われば、東南アジアに売り飛ばすかもしれないねー?」
「う、売り飛ばす? その副社長ってのも、とんでもねー野郎だな!」
「実際、指示するのは副社長ではないけどね? ただ、運ぶだけ。簡単な仕事だろ?」
「アタシは、そんな裏仕事やらないから! 十六夜岳! 社長の五所ヶ原に言っとけ! ガブーンバイパー社の正体、アタシが曝してやるからってな! 覚悟しとけよな!」
「ふんふふふーん。いいぜ? でも、社長はおっかないよー? それでもいいのかな?」
「うるっせぇよ! こんな会社がのさばってたら、ヤバいことだらけになっちまうよ! じゃあな! もう、ガブーンバイパー社でなんか、働かねーよ!」
「ふふーん。そうかい。・・・・・・お気をつけて、常盤紅葉。くれぐれも、ねー・・・・・・」
―――。
「・・・・・・ってわけ! ・・・・・・そうだ! この話を、華蓮さんにも教えねーと・・・・・・って、なんだ? 玄桐から着信とメッセージ? ・・・・・・いいや! そんなのあとだ!」
紅葉が話し終えると、優太と小紅は表情が険しくなり、奥歯をぎゅっと噛み締めていた。
「あれから二十年以上経ってるのに・・・・・・。今更デスアダー絡みのことに、娘が・・・・・・」
「と、とりあえずさ、紅葉のバイトがこの二日間だけで終わって良かったね!」
「・・・・・・そうね。・・・・・・ガブーンバイパー社の、十六夜岳? いったい誰よ。あたしの目を二十三年ぶりに見た? ・・・・・・そんなやつ知らない。裏で何が動いてるっていうのよ!?」
紅葉は、後部座席で親指を高速で動かし、華蓮にメッセージを打っている。
「頼むーっ! 華蓮さん・・・・・・見てくれるといいんだけどな・・・・・・」
――― くれは 《 華蓮さん、ガブーンバイパー社の裏面、ほんとヤバい! 》
タップしてメッセージを送り終えると、しばらくして、華蓮から返事が来た。
・・・・・・ピロンッ♪
「あ! き、来た!」
――― 華蓮さん 《 何か、危ないことや、怪しいことがあったのね? 》
――― くれは 《 トチベリー25は、大麻やってます!》
――― 華蓮さん 《 やっぱり! そんな噂があったのよ! ありがと! 》
――― くれは 《 あと、トチベリー25を東南アジアに売り飛ばすって 》
――― 華蓮さん 《 え! 何それ! 人身売買ってこと? 》
――― くれは 《 よくわかりませんが、三十五億円を運び出すのを・・・・・・ 》
華蓮とメッセージを続ける紅葉。必死に、スマートフォンを見ながら、文字を打ち込む。
「・・・・・・あたしの娘を、ひどいことに巻き込もうとして! まったくもう、許せないね!」
「ママ、落ち着いて? とりあえず今日は、家でゆっくり休もうよ」
優太は、ピリピリと緊張感を漂わせた小紅と紅葉を乗せ、家に向かってアクセルを踏んだ。




