人権を薬物に変換する女
「私は人権を気持ちよくなる薬に変換できる」
その女はミタカと名乗った。ミタカもやはり私と同じ紫色のオーラ「人権」を全身に帯びているが、その色はかなり薄い。
ミタカとヒノ、あとエルフのじいさんはタチカワというらしい。そしてわたしは洞窟を出て、焚き火を囲んで話をした。
とりあえず臭い空間からは脱出したが、そのせいで服に染みついたゴブリン臭が気になった。わたしのおくるみも臭い。
「気持ちよくなる薬って何ですか……?」
「キメると気持ちよくなる薬だ、他に仔細なし」
そういうと、ミタカは手を軽く握りしめた。彼女の手に紫色のオーラが集まり、手から白い結晶状の物質が出てくる。
ミタカはそれを集めてスプーンに入れ、火で炙ってその煙を吸引する!
「ん、ん〜。スパイシー……」
「なんだこいつ」
「いったい何をやったの?」
「これは人権のひとつ『所有権』だ……。人権を物質化して望むものに変換して所有することができる……あと自分の持ち物を保護することもできる」
ミタカは先ほどより楽しそうな顔で言う。薬がキマってきたらしい。
「だが……さっきも言ったが『人権は使うと減る』私は人権を薬物に変換しすぎてほとんど残ってない……」
ミタカはわたしに話しかける。
「で、お前は何やった? お前もどうせ『はあとふる異世界転生』でここに来たんだろう?」
「あんたも?」
あたしはそう返答したが、赤ちゃんなので「あー」と声が出ただけだった。
「そうだ。私は『はあとふる異世界転生』第3期生だ。前世はトラックの運転手だった……」
「まともな仕事じゃないの」
「なぜか毎回、人をはねて殺しちまうんだけどな。前世もその前も……その前も……私はかならず人をはねて殺してきた……だから『はあとふる異世界転生』の対象になったのさ」
「ああそうなの」
「それで、この世界では女戦士として諸国を放浪しつつ、薬をキメてるって寸法よ」
「何が寸法なんだか」
「会話が通じてる?」
「エルフのお嬢ちゃん。これは人権のひとつ『知る権利』を使ったんだ……」
「知る権利?」
「望んだことを知る能力だ。これを防げるのは『プライバシーの権利』だけだ……で、さっきも訊いたが、お前は何をやった?」
「泥棒だけど?」
あたしは言った。ひとごろしの前で盗癖なんか隠してもしょうがない。
「あたし泥ママなのよね」
「泥ママ……何を盗んだ?」
「ヘリ」
「ヘリ?!」
「ちょっと操縦したくて」
「……だいたい話はわかった……おい、エルフ。ここのゴブリンは私が片付けてやるから、しばらく世話をしてもらおうか」
「え? いいんですか?」
「ゴブリンに居座られるよりはマシだろ? 臭くはない。それと、この赤ちゃんを育てろ」
こうしてわたしはヒノとタチカワに育てられることになった。ちーん。