恐怖! いきなり盾にされる泥ママ!
気がつくとわたしは、臭い洞窟の中にいた。
「くっさ!」
わたしは叫ぼうとしたが、鳴き声しか出ない。身体を動かそうとして分かったが、わたしは赤ちゃんになっていた。
「なんでこんなゴブリンの巣に子供が?」
声がする、見るとなんか耳の尖った緑色の髪の娘がわたしを見て驚いている。
「こ、この子! 人間ではないか」
遅れて現れた同じく耳のとんがったじじいがわたしを見て、やっぱり驚く。
「人間……? あの伝説の種族……」
「間違いない! 紫のオーラをまとって、変な丸っこい耳をしている……人間じゃ……」
そのとき、くっそうるさい奇声が洞窟の奥から聞こえた。
「キシェエエ!」
弓矢をもった緑色の臭い化け物が洞窟の奥から現れた。臭い洞窟の臭みの秘密はこいつだったらしい。全身から鶏糞のようなオイニーを放っている。
「臭えんだよ!」
そう言おうとするが声にならない。代わりに出るのは赤ちゃんの泣き声だ。
「おっぎゃああ!」
「くそっ、ゴブリンを刺激してしまう!」
ゴブリンと呼ばれた臭い化け物は、顔をぐちょぐちょに軋ませながら弓に矢をつがえる。
「矢が!」
それからゴブリンは「おっと忘れてた」みたいな感じで、矢の先端に臭そうな液体を塗りつける。
「毒矢が!!」
「くそっ、こうなったら……!」
とんがり耳のじじいが言う。
「ヒノ! ワシの言う通りにしろ! この子を盾にするんじゃ!」
「は?!」
「この赤ちゃんを盾にしろーっ!」
ヒノと呼ばれたとんがり耳の娘は驚く。
「で、でも」
「言う通りにしろーっ!」
じじい絶叫。
「でも…………」
「しろーっ!」
「でも……」
「しろーっ!」
「でも」
「しろーっ!」
「……わかった!」
ヒノはわたしを盾にした!
「あたしを盾にすんなあああ!」
出てくるのは赤ちゃんの泣き声。
ゴブリンがわたしに向かって矢を引き絞る!