観世音菩薩の救済!
「げえっ、観世音菩薩!」
さすがにわたしも菩薩ぐらいは多少わかる。菩薩はフレンドリーな笑顔でわたしに話しかける。
「確かにあなたのカルマはおそろしく深く、人生の重要な時期にあってかならずそれが萌芽し、あなた自身を破滅させてしまう。そのような業を背負っているようです。わかりますか」
「はあ」
「あまねく衆生を苦痛から救うのがわたしの役目……あなたはわたしの『はあとふる異世界転生』に参加し、善行を積むことでカルマを浄化し、盗癖を克服するのです」
「はあ?」
「是非もない。任せたぞ観世音!」
ヘルメスは消えた。
「善行を積みやすいよう、あなたには特別な才能……『ちいとすきる』を授けます。あなた、得意なことはありますか?」
「盗みかな?」
「盗癖を克服するのに盗みをすきるにするのはいただけません……。とはいえ、今生のあなた、本当に得意なことがないようですね」
「ケッ。悪かったわね」
「でも安心してください……そんなあなたにも等しく与えられる『ちいとすきる』がありますよ」
「えっ、なに? ただ?」
「ええ。あなたのようなさもしい者にも、高貴な者にも、富める者にも、苦しむ者にも、それは平等に保証されています。まさに大乗の思想といえます」
「なになに?」
「あなたのちいとすきるは『人権』です」
「げえっ! 人権?!」
こうしてわたしは死に、転生した。
ちーん。