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3話 魔勇者

誰だろう……恐らく記憶を無くす前の知り合いなんだろうけど。それなら記憶を無くしたの言うべきかな。取り敢えず下手に出ておけばなんともないだろう。

「あ……すみません。僕、ちょっと前から記憶喪失になってて、何も覚えてないんです。信じてもらえますか……」


「えっ!? 」

女性と青年は酷く驚いた顔を浮かべた。まぁそりゃいきなり知り合いが記憶喪失だとか言い出したら驚くだろう。当然の反応だよな。


「マジか……まぁでもシオンが俺達に嘘ついた事ないしな……。よし。自己紹介をすると、俺がカミルでこの人がレーナ。俺達3人は元々パーティーだったんだよ」


「え!? そうなんだ!?」

やはり以前の知り合いだったか。自分がアイラ以外にパーティーを組んでいたなんて知らなかったな……。それにしても優しそうな人達で良かった。荷物持ちだからって雑な扱いをされるわけじゃないみたいだ。


「そう! 久しぶりに会えて嬉しいな。それにしても無事みたいで良かったよー」

レーナは嬉しそうな顔をしながら、記憶は無くなってるっぽいけどねと付け加える。


「ホントだよ。2年前急に『魔勇者』とパーティー組むって言った時はびっくりしたよな。アレと一緒にいたんなら

記憶喪失ですんでラッキーってぐらいだよな」


「え……魔勇者って……誰?」

魔勇者。物々しい響だ。誰とは聞いたが、2年前に冒険を始めた人は1人しかいない。恐らく……


「誰って、アイラのことだよ。さっきも一緒にいただろ」

カミルは少し声を小さくしてそう言った。

僕の予感は完全に当たってしまったようだ。

アイラが魔勇者? 勇者っていうのは強いから付けられたんだろうけど、魔の意味が分からない。


「魔勇者って……なんで?」


カミルは記憶を失ってるところ言いづらいんだけどな、と前置きをして語り始めた。

「……アイツ、昔から仲間連れては魔王に挑んでたんだよ。アイラ本人は強いからダメージは少ないけど、他のメンバーはそうじゃない。毎回魔王の配下に返り討ちにあって帰ってくる。仲間の内、何人かは死んだ状態でな。俺達を守るはずの勇者にも関わらず冒険者を死なせてるからってつけられたあだ名がそれだ」


「残念だろうけどこの話はほとんどの冒険者が知ってること。あの人、冒険者の中じゃ有名人なんだよ。悪い意味でね。ていうかアイラと組んで2年も生きてたのシオン君が初めてなんじゃないかな」

皮肉混じりにレーナがそう言う。


「そうなんだ……教えてくれてありがとう」

自分から聞いててなんだけど、正直聞きたくなかったな……僕の知っている優しいアイラとのギャップが僕を悩ませる。きっとアイラは僕以外に仲間を増やさないんじゃなくて、増やせないんだろうな。それに、俺達を守るはずの勇者、と言っていたところを見ると勇者というのは何らかの職業なんだろうか……


「あれ、君達ってシオンの元パーティーメンバーだよね」

声が聞こえた。僕が起きてから1番聞き馴染みのある声だ。その方向を向く。そこにはもちろんアイラがいた。


「とりあえず簡単なダンジョン探索の依頼受けてきたよ。1時間ぐらい歩かなきゃだからもう出たいんだけど2人共、用はもう済んだ?」


「……おいアンタ、もしもシオンを死なせたら俺たちがただじゃおかないからな」

カミルがアイラを睨みつけ、低い声で脅す。レーナも冷たい目をアイラに向けている。まさに一触即発といった空気だ。

「シオンは死なないよ。」

アイラは特に動揺することもなく淡々と答えた。

そして数秒程見つめあった後、


「……じゃあなシオン。絶対に死ぬなよ。俺達も頑張ってるからさ。またな」

「またねシオン君。元気でね」

と言い、2人はもといたであろう席へと戻って行った。


「カミル!! レーナ!! じゃあね!!」

僕は2人の背中に向かって思いっきり手を振った。僕の声に反応して振り向いた2人も笑顔で手を振り返してくれた。

「じゃあシオン、行こっか」

僕はうん、と返事して椅子から立ち上がり、ギルドを出た。太陽は真上にある。夜までは時間がありそうだ。

僕達は依頼を受けたダンジョンまで向かっていった。


それから5分程歩いたが、僕達の間には重い沈黙が流れていた。僕は気まずくてアイラの顔をまともに見れなかった。確か移動に1時間程かかると言っていたっけ。この空気が1時間も続くなら大変なことになるぞ……と思っていたが、アイラの発言でその沈黙は破れることになった。


「……さっき2人と何話してたの?」

アイラは前を向いて歩きながらそう言った。

う……言いづらいぞ……良くない噂が流れてるのはアイラも知っているのだろうけど、それにしても言いづらい。

でも、ここでうやむやにする方がもったいないはずだ。どうせなら今気になっていることを全部アイラに聞いてみよう。


「えーと……2人にアイラの昔のことを聞いたんだ。魔王に何回も挑んでたこと」

「へぇ、聞いたんだ……」

「うん。それで……それほど魔王討伐にこだってる理由が知りたいんだけど……」

「私が魔王討伐にこだわってる理由は……」


読んでくれて感謝

コメントしてくれたらスーパー感謝

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