表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/131

98

「ディオン、おはよう」


「……あぁ」


リディアが食堂に行くと、まだ食べ終えていないであろうディオンは席を立った。皿を見ると明らかに半分以上残されている。


「ねぇ、まだ残って……」


だが、ディオンは早々に食堂から出て行ってしまった。


あの日を境に、ディオンから避けられている。リディアは、朝はディオンが屋敷にいる時間に早起きをして、夜は帰って来るのを遅い時間まで寝ないで待っている。休みの日を調べて、わざわざ休みを被せたりもしていた。


だが先程の様にディオンのリディアへの態度は頗る冷たく、目すら合わせてくれない。呼び止めても無視される事が殆どで、どうする事も出来ない。


ため息を吐き、リディアは兄の座っていた隣の席に腰を下ろした。


「……」


少し前までは一緒に食事を摂って、他愛無い会話をして、たまに喧嘩して……。まだそんな経っていない筈なのに、酷く懐かしく感じた。


ディオンは今、完全に逃げに走っている。兄が一体何に怖気付いているのかは分からない。やはり、血の繋がりがなくとも兄妹である事で引け目を感じているのか、それとも別に何かあるのか……。


何にしても、リディアは譲る気は毛頭ない。


覚悟は決めた。これからディオンとどうしたいかなんて、正直分からない。だが、自分の気持ちから、兄の想いから逃げたくない。絶対にディオンの口から本心を言わせてやる。

そしたら、これからの事を二人で話せば良い。


「それで……いいよね」


兎に角、先ずは逃げ回る兄をどうにかする事が先決だ。これでは話す事もまともに出来ない。さて、どうやって捕まえようか。頭を悩ませる。











「剣術大会?」


その日の昼休み、シルヴィとお茶をしていたリディアは、目を丸くした。


「そうなの。毎年騎士団内で開催してるらしいんだけど、見物する事も出来て……。私これまで全然興味なくて見に行った事はなかったんだけど、兄……フレッドがどうしても見に来て欲しいらしくて……。なんでも彼、友人がいないから応援してくれる人がいないそうなのよ。可哀想よねー。だから、その」


何処か余所余所しいシルヴィに違和感を感じながらも、リディアは二つ返事で了承をした。


「うん、いいよ」


「え、本当に?兄さ、じゃなくてフレッドも喜ぶわ~……」


剣術大会なんて初耳だった。ディオンと真面に話す様になったのも最近だし、噂話に疎いリディアには知る由もなかった。


「剣術大会、か……」


無論ディオンも参加するだろう。

幼い頃はお遊び程度に剣の稽古を一緒にしていた事もあったが、大人になってからはディオンが剣を振るう姿を見た事はない。


思わず喉を鳴らす。


物凄く興味がある。きっと、絶対強くて格好良い……と思う。想像しただけで、顔が熱く感じた。


「聞いた話だと意外と見物人は女性が多いらしいのよね。なんでも団長二人が目当てとか」


瞬間一気に冷めた。確かにディオンは女性に人気がある。何処ぞの令嬢等からの黄色い声が、兄を応援する姿が目に浮かぶ。

想像しただけで苛っとしてきた。


暫し、苛々が収まるまで黙り込んでいるとある事に気が付いた。



「シルヴィちゃん、大丈夫?顔色が悪そうだけど、体調でも悪いんじゃ」


「え、ううん!だ、大丈夫よ。ありがとう、リディアちゃん。ふふふ」


やはり、何時ものシルヴィとは違う様に感じる。風邪でも引いたのではないかと、心配になった。


「明後日の剣術大会愉しみね」


誤魔化す様にシルヴィがそう言って笑った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ