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何だか最近、周囲のから視線が痛い。ただ歩いているだけなのに、ひそひそとされている。


少し前に廊下で女性達に絡まれてからは、直接接触される事はないが……気分が良いものではない。


「まあ、仕方ないよね」


貴族社会とはそう言うものだ。リディアは自分が賢くない事は認識しているので、正直知らない事も多い。だが貴族と言う生き物は常に序列を意識し、如何に相手より有利であるかを競っている。


自分よりも立場が上の者には媚びへつらい、自分より立場の下の者には理不尽で横柄な態度を平気で取る。


これまでリディアはグリエット侯爵家という肩書きに守られてきた。陰では知らないが、大ぴらに悪く言う様な人間はいなかった。いや、言いたくとも言えなかったというのが正しい。


だが今回誰が流したかは分からないが、リディアがグリエット侯爵家の血筋ではない事が広まってしまった。始めはリディアは事実だから大した事ではないと認識していたが、時間が経つに連れ事態は不穏になっていく。


これまでリディアが望んでいた訳ではないが、頻繁にお茶会や夜会の誘いは絶えなかった。毎日何処かしらから招待状が届く程だ。だが、噂が広まり出した辺りからパタリと来なくなった。


元々社交の場は苦手で好きではなかった。だが、やはり気にならないと言えば嘘になる。


爪弾きにされるとはこう言う事なのだと実感した。


そんな中、唯一これまで通り接してくれるのは、シルヴィやリュシアン、マリウスだ。後最近会う機会が増えたフレッドもそうだ。彼等の存在に、救われている。リディアは心から感謝した。



「お帰りなさいませ」


屋敷に戻ると、何時もと変わらずシモンが出迎えてくれた。


「ただいま……。ねぇ、ディオ……お兄様は?」


あれからディオンの事は、意識して名前で呼ばなくなった。だが巷では二人は兄妹ではないと噂され、今更なからに自分はディオンを『お兄様』と呼ぶようになり、滑稽だと思った。


ディオンの事は、男性として好きだ。兄妹じゃなければ良かったと思った。なのに周囲から兄妹じゃないと言われ、酷く傷付いた。自分が分からない。ディオンとどう在りたいのかが、分からなくなってしまった……。



「ディオン様でしたら、まだお帰りにはなられておりません」


「今日は休みじゃなかった?」


「はい、ですが朝から何方かにお出掛けになられております」


「そう……」


ずっと顔を合わせなくて安堵していた。意識的に避けていたたのに……今はディオンに会いたくてどうしょうもない。別に何かを言いたい訳でも、何かして欲しい訳でもない。


ただ、顔を見たい。声を聞きたい。きっと兄の顔を見たら安心する。怖いものなんて何もないって思える。だから……。


「ディオンっ……会いたいよ……」



自室に入り扉を閉めると、リディアはその場に泣き崩れた。弱い自分が情けない。


だがどんなに平気なフリをしても、シルヴィ達の前では虚勢を張って笑っても、ずっと不安で不安で堪らない。外に出るのが怖い。人の目が怖くて堪らない。


「ディオンっ……助け、て……」




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