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「シルヴィ、余計な事を言うなっ」


そう言いながら少し頬を赤らめた青年は、シルヴィの兄のリュシアンだ。彼は公爵家嫡男であると同時に若くして騎士団の団長を務めている。


この国には騎士団が二つ存在する。特別な名称はないが、通称白騎士団と黒騎士団と呼ばれていた。リュシアンは白騎士団の団長だ。そして対する黒騎士団の団長を務めているのは、リディアの兄ディオンだった。



「いや、リュシアン。この機を逃したら次はないぞ。何しろ一度は逃しているんだからな」


リュシアンの隣に立つもう一人の青年がそう言いながら茶化してくる。彼は伯爵令息エクトル・ジョアン。リュシアンの旧友であり同じく白騎士団の副団長を務めている。


話についていけないリディアは、大きな瞳を見開いて三人を見ていた。


「逃したとは……何の話ですか?賊か何かの事ですか?」


リディアの言葉にシルヴィやリュシアン、エクトルは瞬間呆気に取られ顔を見合わすと、その後三人ともに笑い出す。


「リディアちゃんは、やっぱりリディアちゃんだわ!可愛い~!もう、私がお嫁さんに貰いたいくらいだわ」


シルヴィは、立ち上がるとリディアをぎゅっと抱き締める。リディアはというと未だ一人だけ意味が分からず困惑した表情で、なされるがままになっていた。










リディアとエクトルが帰った後、シルヴィは兄のリュシアンと二人でお茶をしていた。


「それで兄さんは、リディアちゃんの事本当はどう考えているの?」


「私は、別に……」


口籠るリュシアンに、シルヴィは苦笑する。


「私はね、兄さんならリディアちゃんを大切にしてくれるって分かってるから……もし兄さんにその気があるのなら大いに賛成だわ。それに兄さんとリディアちゃんが結婚してくれたら……ふふ、私とリディアちゃんは晴れて姉妹となれるし」


頬を両手で包みながら幸せそうに笑い、暫し妄想に更けている。


「はぁ、シルヴィ。そっちが本音だろう」


「あら、バレちゃった?」


「たく、仕方がないな」


「でも、嘘じゃないわ。兄さんならリディアちゃんを幸せにしてくれるでしょう」


シルヴィの言葉に今度はリュシアンが苦笑する番だった。自分の妹はいつもそうだ。兄である自分に絶大な信頼を寄せてくる。いくら兄妹だからと言ってそんな手放しに信じていいものかと、些か心配になってしまう。まあ、そんな妹を持つ事が出来て幸せだとは思うが。


ふとシルヴィを見て思う。妹とリディアは、歳は一歳程しか離れていない。二人共にまだあどけなさが残る少女だ。兄的立場からすれば、恋だの愛だのと、まだまだ早いと思う。


シルヴィが結婚するなど考えられないし……もしそうなれば渋ってしまう自信がある。それなのに、リディアの事は……。


本音で話せばリュシアンはリディアを手に入れられるなら直ぐにでも妻に迎えたい。妹の友人という接点からリディアとは数年来の仲であるし、以前から密かに彼女を愛おしく思っていた。彼女を見ていると温かい気持ちになる。あの笑顔が、好きだ。護りたいと思った。


いつかはリディアと……なんて甘い夢を見ていたのは事実だ。


そんな折り、突如現れたザラールとかいう男に掻っ攫われてしまったのだ。婚約話を聞いた時にはかなり落ち込んだ。そして自分の不甲斐なさを嘆いた。


「無論だよ、シルヴィ。……今度こそ失態はしないさ」





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